りんぐすらいど

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獲得UCIポイントで見る ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 全チームランキング&レビュー(11位~1位)

前回に引き続き、今年のブエルタ・ア・エスパーニャで獲得したUCIポイントの合計で全22チームをランキング。簡単なレビューも付した。 

 

基本的にこの11チームは、総合上位の選手を含むチームとはなる。総合上位にもたらされるUCIポイントの比重が大きいためだ。

その唯一の例外とも言えるチームがドゥクーニンク・クイックステップ。ステージ5勝。今年も最多勝利チームの座をひた走る彼らは、今年も各グランツールで存在感を示し続けた。

 

記事の最後に、今年の3大グランツールの総合計獲得UCIポイントでのワールドツアーチームランキングも掲載した。

今年のグランツールで最も強かったチームはどこか。参考にしてもらえれば幸い。

 

↓第22位~12位はこちら↓

www.ringsride.work

 

 

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第11位 ミッチェルトン・スコット 244pt.

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逃げ一覧

  • スガブ・グルマイ(第6・12・13・15・19ステージ)
  • ダミアン・ホーゾン(第11・13・16・17・20ステージ)
  • ミケル・ニエベ(第9ステージ) 
  • ディオン・スミス(第17ステージ)
  • サム・ビューリー(第17ステージ)
  • ニック・シュルツ(第18ステージ)

 

チャベスの久方ぶりのグランツール単独エース。期待はあったが、結果は残念。ニエベの方がむしろ好調だったというのは、ゲームでのシミュレーションと同じ結果に終わった。

最も結果を出せたのはメスゲッツ。ツアー・オブ・スロベニア、ツール・ド・ポローニュでの絶好調ぶりを引き継ぐようにして、今回のブエルタも序盤の平坦ステージで3位、4位。後半のより起伏の厳しいスプリントステージではさらなる成績を期待できそうだった。

それだけに、まさにその結果を出せそうな第14ステージでの落車即時リタイアは残念の極み。ただ、彼もまた、今年のスロベニアン旋風の一角を担っているのは間違いない。

今後も楽しみだ。

 

 

第10位 EFエデュケーション・ファースト 248pt.

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逃げ一覧

  • ローソン・クラドック(第9・11・15・17・19ステージ)
  • セルヒオ・イギータ(第9・13・18ステージ)
  • ダニエル・マルティネス(第17・21ステージ)
  • ティージェイ・ヴァンガーデレン(第6ステージ)

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第1週目からウラン、カーシー、ヴァンガーデレンと主力級の選手を失い、イギータも落車する散々な事態に陥った。

それでも、クラドックの連日の逃げや、イギータのグランツール初出場でのステージ優勝と、出し得る限りの成果を出した。やはり今年のEFは間違いなく強くなっている。

ただ、パリ〜ニースでも1勝し、次代のEFを引っ張っていく存在と思われていたマルティネスが今回ややイマイチだったのが残念。怪我で長期離脱を余儀なくされたうえでのほぼほぼ復帰戦なので仕方ないけれど。

 

 

第9位 バーレーン・メリダ 252pt.

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逃げ一覧

  • ディラン・トゥーンス(第6・8・17ステージ)
  • ヘルマン・ペルンシュタイナー(第9・18ステージ)
  • ハインリッヒ・ハウッスラー(第12・17ステージ)
  • ドメン・ノヴァク(第13・19ステージ)
  • マーク・パドゥン(第15・16ステージ)
  • ルカ・ピベルニク(第14ステージ)

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2017年に大ブレイクし、2018年にステージレーサーとしての成長を見せつつも結果は出せなかった中、今年再び、ドーフィネ、ツールと勝利を重ね、そして今回、マイヨ・ロホを着用したディラン・トゥーンス。この男は本当、勢いに乗るとめちゃくちゃ強い。最終的な総合成績も12位と、当然これまでのグランツールでの最高成績。直前に事故で不出場となったポッツォヴィーヴォの代わりを見事に果たした。

そしてもう1人、ペルンシュタイナーの躍進も喜ばしい。昨年のツアー・オブ・ジャパンとオーストリア1周の総合2位。彼もまた、ステージレーサーとしてのさらなる成長を期待したい。

 

 

第8位 ロット・スーダル 268pt.

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逃げ一覧

  • トーマス・デヘント(第9・13・16・17ステージ)
  • トッシュ・ファンデルサンド(第8・12・17ステージ)
  • サンデル・アルメ(第2・15ステージ)
  • イェレ・ワライス(第4・7ステージ)
  • カールフレドリク・ハーゲン(第8・9ステージ)
  • トマシュ・マルチンスキー(第7ステージ)
  • ハーム・ファンフック(第14ステージ)

 

元チーム・ジョーカー所属。今年28歳にしてプロデビュー。ジェフリー・ブシャール(あるいはログリッチェ)と同じ「遅れてきた新人」カールフレドリク・ハーゲン。

その足の強さを最初に見せつけたのは今年のツール・ド・ロマンディ。登りスプリントで連日上位に入り込む姿を見せた。

その意味で、彼は間違いない今後を嘱望される存在であった。ただし、それはノルウェー人らしい、パンチャーとして。まさか、今回のブエルタのように、グランツールの総合上位に入れるようなタイプとは思っていなかった。

今後はどのように進化していくのか。予想のつかない男である。

 

もう1人、注目すべきはスプリンターのトッシュ・ファンデルサンドである。2012年のプロデビュー以来、現チーム一筋。その武器は純粋なスプリントというよりは、やや起伏の混じったレイアウトでの走り。終盤の小さな登りでの抜け出しによる上位入賞も多く、2015年のパリ〜ツールでの2位、今年のツール・ド・ワロニー最終日での優勝、そして今回のブエルタの第14ステージでの3位も、すべてそのような展開によって得たものである。

 

彼らと比較して、トーマス・デヘントは今回、振るわなかった。今年挑戦した3大グランツール全出場。彼の元々の目的である「2つ目のグランツールの方が調子が良い」ジンクスはその通り実現し、ツールでは勝利を得た。しかし、さすがにこのブエルタではへとへと・・・逃げに乗れど、普段のキレはまったくなかった。本人も「2度とやらない」と宣言したという。

そりゃ、ただ単に3大グランツール走るだけじゃなく、シーズン序盤から飛ばしすぎていたのだ。パリ~ニースとボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで連続して山岳賞を獲得しておいて、さらにはダウンアンダーとロマンディも出て、それで3つのグランツールである。やりすぎだ。

今年の出場日数はまさかの90日越え。100日も目の前。それでブエルタ完走するのだから、やはり鉄人である。 

 

 

第7位 チーム・サンウェブ 512pt.

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逃げ一覧

  • ニキアス・アルント(第8・12・16・17・19ステージ)
  • マーティン・トゥスフェルト(第8・9・13ステージ)
  • ロバート・パワー(第9・13・17ステージ)
  • マイケル・ストーラー(第7・9ステージ)
  • ウィルコ・ケルデルマン(第9・17ステージ)
  • カスパー・ペダースン(第17ステージ)
  • マックス・ヴァルシャイド(第17ステージ)

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トム・デュムランの離脱を始めとし、かつてこのチームがジロを制したときのような勢いが、いまや感じられない。かつてはマルセル・キッテルやジョン・デゲンコルブなどを抱えていた世界最高峰のスプリンターズチームが、総合系チームへと転身を遂げる中で、何かの歯車が狂っていったのだろうか。

デュムラン不在の中、このチームを牽引する総合系ライダーがケルデルマンである。彼自身も今年、春先の落車により歯車が噛み合わないシーズンを過ごすこととなった。その影響はこのブエルタでも消えず、総合7位は決して満足のいくものではないだろう。

来期に向けて、少しでも何か、手掛かりみたいなものを手に入れられていればよいのだが。

 

来期はベノートの獲得やデンツの獲得など、少しクラシックやスプリントへの回帰が予期されるようなチーム構成になりそう。そんな中、純粋なスプリントとはまた違ったアルントの今回の勝利は、チームの新しい形への一つのヒントになるのかもしれない。

 

 

第6位 ボーラ・ハンスグローエ 768pt.

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逃げ一覧

  • フェリックス・グロスチャートナー(第9・12・13ステージ)
  • パウェル・ポリャンスキ―(第6・15ステージ)
  • サム・ベネット(第17ステージ)
  • シェーン・アーチボルド(第19ステージ)

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2つのステージ優勝と4つのステージ2位。

サム・ベネットは、これがブエルタでさえなければ、まず間違いなくポイント賞を獲得していた。

その意味で、ボーラ・ハンスグローエは、今年3大グランツール全てで別々の選手によりポイント賞相当の活躍をしてみせたことになる。本当、サガンだけのように思えたチームのWT化初年度のことを思えばよくぞここまで、という思いである。しかもベネットは、プロコンチネンタルチーム時代からの叩き上げなのだから尚更の思いである。

スプリントだけではない。今回のブエルタ、ボーラはスプリントと総合の二兎を追う体制であった。

総合を担うエース、ラファル・マイカもまた、かつて大きな成績(2015年ブエルタ総合3位)を挙げながらも、その後は低迷する苦しい時期を過ごしてきた男だ。しかし今回の彼の走りは、「5強」からは水を開けられる形にはなったが、彼らの次に間違いなく走ることのできていた男だ。ステージ単体を見ればキンタナやポガチャルより走れていたステージもあった。

さらに、後半になればなるほど調子を上げていき、マイカの筆頭山岳アシストとして見事な働きをしてみせたグロスチャートナー。第3週には山岳ステージの最終盤まで集団に残り、バルベルデらのアタックを自ら牽いて反応するほどの実力を見せつけた。今大会、ソレルやクスの次に強い山岳アシストだったと言えるかもしれない。

今年はツアー・オブ・ターキーも総合優勝しており、今後はエースとしても実に楽しみな男だ。

 

 

第5位 ドゥクーニンク・クイックステップ 828pt.

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逃げ一覧

  • フィリップ・ジルベール(第7・12・13・16・17ステージ)
  • レミ・カヴァニャ(第11・16・17・19ステージ) 
  • ゼネク・スティバル(第8・17ステージ)
  • ティム・デクレルク(第12・17ステージ)
  • ジェームス・ノックス(第16・17ステージ)
  • マキシミリアーノ・リケーゼ(第16ステージ)
  • エロス・カペッキ(第17ステージ)
  • ファビオ・ヤコブセン(第17ステージ)

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ヤコブセンは何とか2勝。グランツールで安定して勝利を狙える器にまではまだあと一歩届かない

かもという不安もあったが、しっかりと結果を残した。とくに、トレインの強さ際立った&ライバルのサム・ベネットの失敗に助けられた第4ステージと違い、最終日マドリードでは、自らの力で勝利を掴み取ったように思う。最後のあのタイミング、ベネットに追いつかれてもまったくおかしくなかったが、最後まで伸び続けた。一皮剥けたようだ。

あとは、この最強リードアウターたちがいなくなる中で、来期チームがどれだけの勝ち星を稼げるか。

もちろん、スプリントだけでないところもしっかり見せてくれた。ウルフパックの実にウルフパックらしい勝ち方をしてみせた第17ステージや、同じく「後ろにエースがいるから」と自由に走れたがゆえの勝利となった第19ステージ。さすがのクラシック最強軍団である。

その勝ち星を稼いだジルベールは来期移籍。カヴァニャも進退は現時点では不明。それでも、(これまでの多くの場合同様に)勝ってはいないが勝ちに貢献し続けている男スティバルも残っていたりと、まだまだこの最強軍団が衰える気配はない。

 

 

第4位 アスタナ・プロチーム 880pt.

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逃げ一覧

  • ゴルカ・イサギレ(第9・11・15・17ステージ)
  • ルイスレオン・サンチェス(第8・16・17ステージ)
  • ヤコブ・フルサング(第9・16ステージ)
  • マヌエーレ・ボアーロ(第12ステージ)
  • オマール・フライレ(第18ステージ) 

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マドリードの表彰台で、ミゲルアンヘル・ロペスはスーパー敢闘賞を獲得した。

今大会最もアグレッシブで、最も盛り上がりをもたらした男の証。私は彼がその賞に十分値する走りをしてみせたと思っている。

とくに第20ステージ。今大会最後の山岳ステージ。ここで、彼は、チームメートたちと共に、最後の攻撃に出た。残り48km。少し早すぎるタイミングだったが、それは彼が4分17秒という総合首位ログリッチェとのタイム差の挽回を諦めていないがゆえの攻撃だった。

だが、今大会のライバルたちは強すぎた。ロペスの攻撃に、ライバルたちは皆、すぐさま反応した。すかさず、2度目の攻撃をロペスは繰り出す。これもまた、すぐに捕まえられた。

それでも諦めないロペスは、3度目の攻撃を繰り出した。これもまた、抜け出すには至らなかった。第18ステージで失速し、新人賞ジャージをロペスに明け渡したばかりのポガチャルですら、このときはしっかりと喰らいついていた。

それどころか、ポガチャルはこの3度目のロペスのアタックに対し、鋭いカウンターアタックを仕掛けた。そして、ロペスにはこれを追いかける体力はもう、残っていなかった。

結果として、ロペスは総合5位に終わる。新人賞も失った。

もしもこの第20ステージで守備的な走りを徹底していれば、この喪失はなかっただろう。

それでも彼は最後まで戦うことを諦めなかった。今大会の総合争いを盛り上げたのは間違いなくこのロペスの姿勢と、それを支えるアスタナの最強の布陣だった。とくにフライレ、ヨン・イサギレ、フルサングの3名は常に終盤まで残り、集団の先頭を牽引し、ペースアップし、集団の数を絞り込み、ロペスを発射させる重要な役割を果たしていた。

そのチーム力は今大会随一だったのは間違いない。あとは、他チームのエースたちが強すぎただけだった。

 

そんな最強軍団だったからこそ、何も持ち帰らないわけにはいかなかった。

第16ステージ。チーム随一のベテラン、ルイスレオン・サンチェスとともに逃げたフルサング。

そしてゴールまで残り9kmでサンチェスがアタック。レース終盤のアタックが非常に怖いのがこの男。ツール・ド・スイスでもそれで驚きの勝利を手に入れている。

だからライバルチームたちもこの抜け出しを認めるわけにはいかない。ノックス、ゲオゲガンハート、ブランビッラといった今大会とくにアグレッシブな選手たちがこれに喰らいついていく。

そしてフルサングが、この絞り込まれた集団にきっちりと入り込んだ。

 

この後、サンチェスはフルサングのためにこの小集団の前を牽き続け、後続の追走集団に追い付かせないための重要な役割を果たした。

そして残り7.3km。サンチェスの牽引が終了すると同時にフルサングがアタック。ブランビッラのみがこれについていけたが、そのブランビッラも残り4kmで引き千切った。

 

今年、アルデンヌ・クラシックを中心に絶好調。リエージュ~バストーニュ~リエージュも制し、2度目のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝を果たして意気揚々とツールに臨んだフルサング。

しかし初日から落車に見舞われ、さらに第16ステージ、第3週の初日にも落車し、そのままリタイア。

悔しい思いを味わったフルサングはこのブエルタでロペスのアシストとして最高の活躍を演じながら、こうして、勝利自体もチームに持ち帰った。

チーム離脱の噂も立っていた彼が、新たに2年の契約延長も結んだ。

また来年以降も、チームのエースの1人であり、頼れるアシストでもあり、そしてステージを狙うアタッカーでもある器用な男として、チームの根幹を支え続けてくれるだろう。

 

 

第3位 UAEチーム・エミレーツ 955pt.

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逃げ一覧

  • セルヒオ・エナオ(第7・8・13ステージ)
  • ヴァレリオ・コンティ(第12・16ステージ)
  • マルコ・マルカート(第12・17ステージ)
  • フアン・モラノ(第17ステージ)
  • オリヴィエロ・トロイア(第17ステージ) 

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大いなる覚醒。今年の新人は皆、ありえないと思った段階からさらにもう一段を上げ続けてくる。

わずか4ヶ月前に最年少ワールドツアー総合優勝で世界を驚かせた男が、さらなる衝撃をもたらした。想像を超えるとは陳腐な言葉だが、その言葉以上に、彼やエヴェネプールを形容する言葉は思いつかない。

 

とくに第20ステージの独走劇は神がかっていた。

初のグランツール。第13ステージでステージ2勝目を記録してから、誰もが飛ばしすぎていると感じていた。まるで昨年のジロのサイモン・イェーツのように。必ずやガス欠がやってくると。彼自身もそう思っていた。

実際に、第3週の最初の山岳ステージで彼は新人賞を失った。それは必然であるように思えた。

それなのに、第20ステージ。ミゲルアンヘル・ロペスの3度にわたるアタックにもアシスト不在の中たった一人で耐え続け、そして残り40km。カウンターアタックで飛び出した。

このポガチャルの攻撃に、誰も反応しなかった。最も追走の責任を負うはずのロペスは、すでに体力の限界だった。バルベルデも一度は踏み込むが、グロスチャートナーが集団を牽いて追いかけてきたのを見て足を緩めた。

一度は遅れかけていたアシストたちも戻ってくるくらいにペースを落としたメイン集団。その間にポガチャルは、先頭に逃げていたゲオゲガンハートとゲレイロを一気に抜き去り、残り38kmを単独で駆け抜けた。

 

結果としてもたらされたのは、ロペスから新人賞ジャージを奪い返しただけに留まらず、ナイロ・キンタナも追い抜いて、総合2位バルベルデにすら22秒にまで迫る走りを見せつけて、総合表彰台を獲得したこと。

初のグランツール。それどころか、プロ初年度。わずか20歳。

そして、3度のステージ優勝。いずれも山頂フィニッシュで。

エガン・ベルナルと共に、2020年代のグランツールで存在感を放ち続ける男であることは、間違いなさそうだ。

 

 

第2位 チーム・ユンボ・ヴィズマ 1654pt.

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逃げ一覧

  • ニールソン・パウレス(第9・17・18ステージ)
  • ロベルト・ヘーシンク(第6・9ステージ)
  • セップ・クス(第9・15ステージ)

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見事。隙のない戦いだった。ジロでは山岳の終盤に常に一人だったログリッチェは、自身の体調不良も重なり、後半ステージでは常にタイムを失うような状態だった。

それに対して今回のブエルタは、きっちりとジョージ・ベネットやセップ・クスらの山岳アシストに守られ、彼自身も一度たりとも山岳で遅れることはなかった。それどころか自ら前を牽き、ライバルたちとのタイムを突き放していく、山岳で最も強い走りを見せてすらいた。

それはまるで、全盛期のクリス・フルームのような走りだった。ログリッチェは、なるべくしてなった王者であった。

 

そして、それを支えたクスの覚醒。昨年はブエルタの第1週は非常に強かったなか、2週目以降はその存在感を失ってしまった彼。今年のジロも、急遽怪我で参戦できなくなったヘーシンクの代わりとしてのいきなりの参戦もあり、やはり力を出し切れなかった。

今回は、しっかりと休息を挟んだうえで、今度こそログリッチェを守る最強のアシストを演じることを使命としてやってきた。しかもそれだけでなく、あまりにも絶好調だった彼は、ステージ優勝すら手に入れた。アシストとしてだけでなく、1人のライダーとしても大きく成長したブエルタであった。

 

もちろん、彼らが体力を残して山岳に挑むうえで重要な役割を果たしたのがトニー・マルティンであった。初日のチームタイムトライアルでの落車アクシデントを、わずか40秒のビハインドで留めたのも彼のおかげであった。自らのTTでの成績をツールに続き犠牲にしつつ、ステージの平坦路はほぼ彼が前を牽き続けた。彼の献身的なアシストがなければ、ジロのときのように山岳の終盤でログリッチェがただ一人という事態はもっと増えていたかもしれない。

そして、そのマルティンと並んで集団の先頭を牽く姿が目立っていたのがレナード・ホフステーデであった。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも、ワウト・ファンアールトの活躍を支えたプロフェッショナルな運び屋。ある程度の山岳であればこなせる脚質も相まって、マルティンとはまた違った切り口で、チームを目立たないところから支え続けた。

 

チームの層はアスタナやモビスターと比べればまだまだ劣るかもしれない。だが、今回のブエルタの勝利は、確かにこのメンバーで掴み取った。その結束力の高さで、新たなる「銀河系軍団」は2020年も旋風を巻き起こせるか。

 

 

第1位 モビスター・チーム 1764pt.

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逃げ一覧

  • ネルソン・オリヴェイラ(第6・17・18ステージ)
  • ホルヘ・アルカス(第8・11ステージ)
  • アントニオ・ペドレロ(第9・13ステージ)
  • マルク・ソレル(第9・15ステージ)
  • ホセホアキン・ロハス(第12・17ステージ)
  • イマノル・エルビティ(第16・17ステージ)
  • ナイロ・キンタナ(第17ステージ)

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ということで、総合優勝は逃したものの、獲得UCIポイントの合計という観点においては、ユンボを抜いてトップに躍り出たのがこのチームであった。

まずは39歳バルベルデの総合2位が脅威。20歳の総合3位もたしかに驚きだが、バルベルデもその2世代は上でアルカンシェルも来てステージ優勝も取って総合2位をキープするのだから、相変わらずアンビリーバブルな存在である。

そしてもう1人。難関山岳の終盤に常に残り続け、結果的に総合9位。今大会最強の「アシスト」であると共に、今回のモビスターの「トリプルエースの一角」と呼んでも差し支えないだけの走りを、この男、マルク・ソレルは見せてくれた。

来年はキンタナもランダもカラパスもいなくなるモビスターにおいて、新たにやってくるエンリク・マスと共に、チームの揺るぎないエースとしての責任を負わされることになる。

だがその素質は、しっかりと示すことのできたブエルタだったのではないだろうか。

 

 

全グランツール総獲得UCIポイントランキング

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ということで、ジロでは2位以下を2倍近くのポイントで突き放して圧勝し、かつブエルタでもユンボを抜いて1位に躍り出たモビスターが、今年のグランツール最強チームであることが証明された。

さすがトリプルエース。いや、カラパスとソレルも含めればクインタプルエースと言うべき布陣のモビスター。

その実力が遺憾なく発揮された形だ。

 

とはいえ、モビスターは来期、そのうちの3名を失う。

新たにマスが加わるためそこは期待できるが、バルベルデもさすがにもういい年なので、エースの一角を担うのはさすがに厳しいと思っている(いや、でもバルベルデだしな・・・)。

 

代わりに、トリプルエースを発足しそうなのがユンボ・ヴィズマ。今年のジロ総合3位、ブエルタ総合優勝のログリッチェ、ツール総合3位のクライスヴァイクに加えて、トム・デュムランまでもが入ってくる。

そこでクス、ベネット、あるいはローレンス・デプルスあたりがエース級にまで成長してくれば、来年のグランツール最強チームはこのユンボになるかもしれない。

 

もちろん、イネオスも忘れてはいけない。今年は怪我の続出という不運に見舞われてしまったがゆえのこの位置にいる彼らだが、フルームも来期のツールへの復帰へのモチベーションを高めており、トーマス、ベルナルに加えて、今年のジロ覇者カラパスも新加入する。やはりこのチームが最強なんだということを示してくれるかもしれない。

 

 

そして、総合上位に入る選手は多くないながら、上記のUCIポイント獲得総合系で3位に登りつめたボーラ・ハンスグローエが、隠れたグランツール最強チーム候補の一角である。ジロではアッカーマン、ツールではサガン、ブエルタではサム・ベネットが、それぞれ別々の選手が活躍してポイントを獲得していくその姿は、2017年のドゥクーニンク・クイックステップ(ガビリア、キッテル、トレンティン)を彷彿とさせる。

それでいて、マイカも復調しつつあり、グロスチャートナーの成長も楽しみなブエルタ。来年はサム・ベネットがチームを去りそうではあるものの、その存在感は決して消えることはないだろう。

サガンがまた、もうちょっと復調してくれたら文句なしである。

 

あとはアスタナとディメンションデータがどう復活していくか。

かつての最強候補だったはずのサンウェブの行方も気になる。

 

これからもグランツールについては、このUCIポイントという客観的な指標でもって確認していきたいと思う。

今後も応援して頂けると幸いだ。  

 

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