やはり「ツアカリ」は「若手の登竜門」だった。
最終総合表彰台の平均年齢は21.7歳。
期待されていたポガチャルの期待されていた通りの勝利のほか、5/1にワールドツアー入りを果たしたばかりのセルジオ・イギータの期待以上の活躍。
さらに全く予想外だったのが、ロンドでクラシックハンターとして覚醒したと思っていた、カスパー・アスグリーンの大爆発だ。
ステージ勝利でもカヴァニャ、ガルシア、ボルと、若手の新鋭有力選手たちが次々と勝利を獲得。
かつてアラフィリップやフィリプセンの活躍を生んだカリフォルニア。
今年もまた今後のロードレースシーズンで注目すべき新鋭を多く輩出した北米最大のステージレースの、1週間を振り返っていこう。
↓各ステージの詳細についてはこちらから↓
- 第1ステージ サクラメント~サクラメント 143km(平坦)
- 第2ステージ ランチョ・コルドバ~サウスレイクタホ 194.5km(山岳)
- 第3ステージ ストックトン~モーガンヒル 207km(丘陵)
- 第4ステージ ラグナ・セカ~モロ・ベイ 212.5km(丘陵)
- 第5ステージ ピズモ・ビーチ~ベンチュラ 218.5km(丘陵)
- 第6ステージ オンタリオ~マウント・バルディ 127.5km(山岳)
- 第7ステージ サンタ・クラリタ~パサデナ 141km(平坦)
- 総合成績
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第1ステージ サクラメント~サクラメント 143km(平坦)
カリフォルニア州州都サクラメントを舞台にした定番のオールフラットステージ。最後も実に北米らしい幅の広い走りやすい道路での大集団スプリントとなり、チームとして良い形でリードアウトトレインを作れたのはドゥクーニンク・クイックステップだった。残り1kmを切ってミケル・モルコフ含めアシストは3名。
しかし、肝心のエースがいない。最強のリードアウター・モルコフは何度も後ろを振り返りながらもエースを探すも、その影は見当たらない。後ろにいるのは、ハルヴォルセンを従えるイネオスのトレイン。その後ろの集団は中切れをおこし、はるか後方に取り残されていた。
もはやヤコブセンは引き上げるのは不可避と判断したモルコフは、自らが勝負せざるを得ないと悟る。すでに、オウェイン・ドゥールが最後のリードアウトのためにスプリントを開始。その番手につけていたサガンが加速し、モルコフはその後に喰らいついていく。しかし本職スプリンターには、さすがの最強リードアウターであっても敵わなかった。
引き離されるモルコフ。突き抜けるサガン。
そこに勝負を挑んだのは、ランカウイでも1勝を挙げているアメリカ人スプリンター、マケイブ。鋭い加速でサガンに並びかけたものの、わずかに届かなかった。
キング・オブ・カリフォルニアの大会17勝目にしてサクラメントでの初勝利。
そして、不調だった今年のサガンにとっては待望の2勝目。
これが復活の兆しとなるか。
そしてマケイブはあとわずかであった。昨年まではユナイテッドヘルスケアのエーススプリンターとして走り、ツアー・オブ・ユタやコロラド・クラシックなど、アメリカのHCクラスでのレースで勝利を挙げている。
今年はフロイド・ランディスが創設したチームで走り、先日のツール・ド・ランカウイでも勝利を挙げていたが、 アメリカナショナルチームの一員として選ばれて出場した今回、全アメリカ人スプリンターにとっての憧れの極致であるカリフォルニア勝利まで、あともう少しだった。
すでに30歳と良い年齢の選手ではあるが、これからの走りにも注目していきたい。
第2ステージ ランチョ・コルドバ~サウスレイクタホ 194.5km(山岳)
昨年のクイーンステージとして選ばれたサウスレイクタホが、今年は早速の登場。ただし登坂ルートが昨年と違っており、終盤の難易度は低下。
とはいっても獲得標高自体は大きく、スプリンターたちが残れるようなレイアウトではないことは確か。最終的にはポガチャルやヴァンガーデレン、モスコンといった有力勢を含む10名の小集団が先行し、17年覇者ジョージ・ベネットやリッチー・ポートといった優勝候補たちは30秒以上のタイム差をつけられたまま最後まで追い付くことはなかった。
イギータもウランと共にこの後続グループに。ヴァンガーデレンが前にいるために積極的に牽くことはないが、しっかりとセカンドエースのウランを守る役目を担っていた。
ラスト1.7kmの平均勾配は5.9%。パンチャー向けのレイアウトにおいて有利なのは今年大躍進中のシャフマン。しかしヴァンガーデレンがここでペースアップを図り、シャフマンはこれについていくことができなかった。
生き残ったのはヴァンガーデレンとポガチャル、モスコン、そしてアスグリーンの4名だった。
ラストの左カーブで加速したヴァンガーデレンに喰らいつき、これを抜き去って先頭に出たのがアスグリーン。
一気に差を開き、追いすがるヴァンガーデレンもモスコンもついていけない。
これまでにない爆発力を見せ、プロ初勝利を成し遂げた。
2017年ヨーロッパ選手権U23王者であり、その年のツール・ド・ラヴニールでも初日のスプリントステージで終盤に抜け出して逃げ切り勝利。
独走力に定評のあるアタッカーであり、ベルナル、ホッジ、ヤコブセン、ハルヴォルセン、ローレスなどと並ぶ「17年ラヴニール組」の1人である。
クイックステップには昨年の4月に加入。初年度はイマイチ目立つことのなかった彼が、今年春のクラシックで大ブレイク。
とくにロンド・ファン・フラーンデレンでは、不調のジルベールの代わりを十二分に果たし、セップ・ファンマルクやディラン・ファンバーレと共に終盤の逃げを形成し、かつ最後も得意の「終盤抜け出し」で単独2位に入る働きを成し遂げた。
つまり彼はTTスペシャリストであり、そこからの繋がりで北のクラシックやスプリントが強いところまでは納得がいく。しかしまさか、登りまでこなせるとは。
もちろんカリフォルニアの登りは、出場選手の相対的なものもあり、決して純粋なクライマーでなければ残れないというものではない。
しかしそれでも、パンチャーというには体重もありすぎるこのデンマーク人が、これだけ軽やかなクライミングを見せた上でスプリントで勝利を手に入れるとは。
驚きと共に、この選手のさらなる進化が楽しみになるステージだった。
第3ステージ ストックトン~モーガンヒル 207km(丘陵)
カリフォルニアではお馴染みの超級山岳マウント・ハミルトンを越えるステージ。よって、スプリンターチームも追走には力を使わない結果となり、アメリカナショナルチーム所属のアレックス・ヘーンとレミ・カヴァニャのたった2人の逃げは、最大で10分近いタイム差が作られた。
まだ21歳のヘーンは前半の山岳ポイントを積極的に収集し、山岳賞トップに立つ。しかしマウント・ハミルトンを越えることはできず、そこからカヴァニャの単独エスケープが始まる。
途中、グランツール逃げ切り勝利経験者のキングとゲシュケが集団から抜け出して追走をかけるも、結局は追い付くことなく、2日連続となるドゥクーニンク・クイックステップによる勝利が演出された。
2015年の世界選手権個人タイムトライアルU23王者であり、育成チームを経て2017年にクイックステップ入り。ネオプロのときからTTのほかにもベルギーツアー総合2位など、クラシック系のレースで活躍。昨年はドワースドール・ウェストフラーンデレン(ヨハン・ムセーウ・クラシック)でプロ初勝利。
今年も春のクラシックを中心にレースを走っていたが、今回のこの山岳逃げの成功により、今後は昨年のシャフマンのような、より大きなレースでの逃げ切り勝利でも活躍できそうな気がしてくる。
今年はブエルタ・ア・エスパーニャ出場予定とのことで、楽しみにすることにしよう。
第4ステージ ラグナ・セカ~モロ・ベイ 212.5km(丘陵)
小刻みなアップダウンが続くステージではあったが、前日の大逃げ切りもあり、この日はスプリンターチームが全力の牽引。きっちりと残り8.4kmで逃げ集団を全て捕まえることに成功した。
あとは集団スプリント・・・と思っていたその直後、衝撃的なシーンが。総合リーダージャージを着るティージェイ・ヴァンガーデレンが単独落車。
すぐさまその場にいたラクラン・モートンのバイクに交換したものの、そのブレーキの仕様が左右逆だったために、その先のカーブでオーバーラン。さらに遅れを喫してしまう。
チームメート総出で救出に下りてきて復帰を試みるが、残り3km手前で道を塞ぐ形で集団落車が発生。これで復帰は不可能となった。
その一方、集団先頭では今大会2回目の集団スプリント。
ミケル・モルコフらドゥクーニンク・クイックステップのトレインが先頭を支配し、わずかな登りスプリントの入り口に到達する。
最終発射台の役目を担うのはマキシミリアーノ・リケーゼ。
その背後にサガンがついて、昨年の同じレイアウトを征したスプリントを見せるも、その後輪からフィリプセンが抜け出す。
これをしっかりと捉えていたヤコブセンが、最後にきっちりと抜け出して差し切った。
ブアニも千切れてしまう登りスプリント。
同じ登り勾配のノケレ・コールスでも勝利しているヤコブセンが、初日ステージでトレインからはぐれてしまった借りを返す勝利をチームにもたらした。
3連勝。29勝目。圧倒的なドゥクーニンク祭りである。
なお、トラブルに巻き込まれ大きくタイムを失ったヴァンガーデレンだが、レース後に異例の救済措置によって総合リーダーは維持されることに。
総合争いの行方は、クイーンステージとなる第6ステージに託されることとなりそうだ。
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第5ステージ ピズモ・ビーチ~ベンチュラ 218.5km(丘陵)
サンタバーバラの美しい海岸線沿いを走るステージ。
とはいえ平坦というわけでもなく、とくにゴール前7kmに用意された登坂距離900m・平均勾配9%の激坂は曲者。
単独で逃げていたティム・デクレルクもこの登りで捕らえられ、カウンターで飛び出したスティバルを追う中で、サガンなどスプリンター勢が次々と脱落していった。
スティバルを捕まえた集団の中からはイギータとジョージ・ベネットが抜け出して頂上通過。
そのまま2人だけでゴールを狙うが、さすがにこれは最後まで続かなかった。
26名に絞り込まれた小集団でのスプリント。
軒並みスプリンターの姿が失われた中で、ほぼ唯一のピュアスプリンターと言っても良いリケーゼが先行して抜け出すが、この番手からきっちりと飛び出してきたのが、近年スプリンター/パンチャーとして着実に成長しつつあるイバン・ガルシアだった。
雄叫びと共に、見事なプロ初勝利を成し遂げた。
いつかブエルタ・ア・エスパーニャでも勝つだろうと予想していた若きスプリンター/パンチャー。
しかし、バウハウスもいる今大会で、とは予想していなかった。
個人的に好きな選手なので嬉しいが、今年はきっとブエルタで魅せてくれるはずなので、ここではまだ、満足しないでおく。
また、シクロクロスで今や5本の指に入ると言っても過言ではない選手に成長しつつあるオランダの若手、ニューエンハイスも、このステージで4位に入る大活躍。
今年からサンウェブに所属した彼の北のクラシックでの活躍に期待していたものの、怪我?病気?ですべてパスすることになっていた。
ドーフィネからの復帰の予定だったが一足早くこのカリフォルニアに出場した彼が、勝てはしなかったものの、しっかりとその才覚を示してくれた。
そして、この日も5位に入るアスグリーン。決してスプリンター的な脚質の選手ではなかったはずだが・・・シャフマンの上というのも驚きだ。
一度覚醒した選手は、それまでの限界を超えた力を出し続けるというが、アスグリーンはまさにそういう存在となったのだろう。
今後もパンチャー向きステージでは、彼の活躍に期待していきたい。
第6ステージ オンタリオ~マウント・バルディ 127.5km(山岳)
いよいよツアー・オブ・カリフォルニアも最終決戦の舞台へ。
超級山岳マウント・バルディ。過去にも数多くの「頂上決戦」が行われたこの舞台で、今年のカリフォルニア王を決める最後の戦いが巻き起こった。
残り14km。先頭を逃げる4名とのタイム差が30秒近くにまで縮まったところで、メイン集団から22秒差の総合5位マキシミリアン・シャフマンが抜け出した。
ポイント賞ジャージを着る元チームメートで総合2位のアスグリーンに、何か声をかけてからのアタックだった。
すぐさま先頭に追い付いたシャフマン。
しかし逃げの残党はすでに体力が尽きかけており、最後に残ったホフステッドも残り8kmで切り離した。
イツリア・バスクカントリーで4日間にわたり総合リーダージャージを着用した次世代オールラウンダー候補。
メイン集団とのタイム差は一気に45秒ほどにまで開いていく。
さすがにこれを逃がすわけにはいかない。
EFエデュケーション・ファーストが数を揃えるメイン集団は少しずつペースアップを図り、この煽りを受けて総合3位のジャンニ・モスコンが早くも脱落する。
だが、EFも実は状況は厳しかった。
それを悟ったのか、アスグリーンが突如として先頭に躍り出てさらなるペースアップ。
EFはこれに悠々とついていく・・・はずだったのだが、まさかのここでヴァンガーデレンの脱落。
残ったアシストは彼の救出に向かい、総合6位のイギータのみが、メイン集団に残ることに。
そしてアスグリーンはさすがにこのクライマーたちの決戦場で生きのこることはできなかった。
残り4kmでジョージ・ベネットが先頭に出て牽引を始め、これについていけたのはイギータ、ポガチャル、リッチー・ポートの3名だけ。
残り3kmでシャフマンをかわしたこの4名が、いよいよ今大会の最終決戦を開始する。
まず強さを見せつけたのがセルジオ・イギータ。
鋭い加速で3人を突き放し、先行。
ポガチャルとの12秒差をなんとかひっくり返すべく、21歳のコロンビア人 "オールラウンダー" は超級山岳を突き進んでいく。
元々はマンサナ・ポストボンに所属していた彼は、今年EFエデュケーション・ファーストとの契約を勝ち取ったものの、その成長のためにまずは半年間はバスクのコンチネンタルチーム、フンダシオン・エウスカディ(エキップ・エウスカディ)に所属して修行することに決めた。
その中でも彼は才能を示した。2月頭のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでは新人賞を獲得。
その後に出場したブエルタ・ア・アンダルシアでは総合7位。第4ステージではクライスヴァイクやアダム・イェーツらトップ選手に怯むことなくスプリントで集団内先頭を取った。
ときにスプリンターのごとき爆発力を見せ、そのうえで軽々と山岳も乗り越えていく。
まるでアラフィリップやバルベルデのような、TT型とはまた違った才能豊かな「オールラウンダー」。それが彼を形容するうえで最も相応しい呼び名である。
しかし、才能ある若手は彼も同じである。
もはやネオプロとは思えない貫禄を持ちつつあるタデイ・ポガチャルは、冷静にイギータを追走していく。
彼の淡々としたペースアップにジョージ・ベネットはついていけずに遅れ、ポートもまた、メカトラによって脱落してしまう。
残り1kmでイギータに追い付いたポガチャル。
イギータにとっては総合逆転の芽をほぼ失うこととなったが、それでも彼は諦めず、残り200mで猛烈な加速を見せる。
ポガチャルもついていくのが精いっぱい。それを追い抜くことはできず、このままイギータの優勝か・・・と思っていたところで、最後の左カーブで大きく膨らんでしまうイギータ。
これを見逃すはずもなく、冷静にインを捉えたポガチャル。
そのまま、総合優勝に王手をかける、ワールドツアー初勝利を飾った。
悔しそうにハンドルを叩きつけるイギータ。最後の瞬間までほぼ勝ちを手に入れかけていただけに、この結果は彼にとっても受け入れがたいものであっただろう。
しかし、この5月にワールドツアーデビューしたばかりの若きオールラウンダーにとって、今回のカリフォルニアは間違いなく、手応えを感じられるものであった。
今大会、最強はポガチャルだった。そしてそれは、ある意味では予想通りの結末だった。
しかし、その予想を超える実力をこそ示したのがイギータ。彼もまた、これからの「2020年代」で大きな存在感を示す選手となることだろう。
第7ステージ サンタ・クラリタ~パサデナ 141km(平坦)
ゴールまで残り62.5㎞地点に3級山岳、残り37.5㎞地点に2級山岳が用意された最終ステージは、集団スプリントが見込まれつつも、総合逆転を狙う選手たちの動きも見逃せないレイアウトとなっていた。
3級山岳の登りで積極的な動きを見せたのがEFエデュケーション・ファースト。
総合首位ポガチャルとの間の16秒をひっくり返すべく、ラクラン・モートンの猛牽引で集団は一気に絞り込まれていき、山頂付近では集団は6名ほどに。
この中にEFの選手はイギータを含めて3名。
山頂の直前では総合4位ジョージ・ベネットがアタックを仕掛け、イギータがこれに追随する場面も見られてアガ、結局は下りで集団は再び1つになった。
2級山岳を越えたあとの下りで第2の攻撃が繰り広げられる。
先陣を切ったのは総合11位のマキシミリアン・シャフマン、第3ステージ優勝のレミ・カヴァニャ。そしてユンボ・ヴィズマのレナード・ホフステッドの3名だ。
のちに山岳賞のダヴィデ・バッレリーニも合流する。
さらに残り23㎞を切って、メイン集団からは総合3位のカスパー・アスグリーンが抜け出しに成功。
先頭にいたカヴァニャも下りてきて、アスグリーンを牽いて先頭に舞い戻った。
そして残り15kmのスプリントポイント。
カヴァニャのリードアウトを受けて発射したアスグリーンは見事先頭通過を果たし、ボーナスタイム3秒を獲得。
総合2位イギータまで1秒差にまで迫った。
メイン集団はすでに20秒差にまで迫っていた。
逃げ切りの可能性はほぼ消えかけた中で、最後に再びカヴァニャとバッレリーニがアタックする。最後の最後までアグレッシブな走りを続けるこの2人の若手もまた、カリフォルニアにおいて才能を大きく広げた逸材たちであった。
そんな2人も最後には捕まえられ、いよいよ集団スプリントに。
この中で圧倒的な強さを見せつけたのが、サンウェブのこれまた若き新鋭、ボルだった。
彼が以下に強かったかというと、最終盤、残り200mの時点で、先行するアシストの背後からディメンションデータのアシストに導かれてレイナルト・ヤンセファンレンズバーグが発射。
その番手につけていたモルコフがマキシミリアーノ・リケーゼを発射させて、そのさらに背後からサガンが抜け出すという「4段発射」を見せる中、ボルはその横のラインから、誰の力も借りることなく、たった一人でゴールまで突き抜けて、それでいてサガンを寄せ付けなかったのだ。
ある意味では、位置取りが全くできていないという、未熟さを示す例なのかもしれない。
しかしそんな戦術的な差をすべてパワーと才能だけで押し切る、まさに若さ爆発なスプリントだったというわけだ。
すでに今年のノケレ・コールスで、アッカーマンを押しのけて勝利しているボル。
数多くの有力若手スプリンターたちの活躍の中で埋もれ、まだその存在感を示し切れていない彼だが、今回のカリフォルニアで一皮むけ、いよいよトップスプリンター候補の1人となっていくかもしれない。
とにかく今回の勝ち方は本当に強すぎた。このあと、位置取りのテクニックなども身につけていけば、意外にも2020年代で最も爆発しうるのは、この男なのかも・・・しれない。
総合成績
と、いうことで、2018年ツール・ド・ラヴニール覇者ポガチャルが、昨年のベルナルに続き今年のキング・オブ・カリフォルニアとして戴冠した。
ワールドツアー最年少総合優勝記録だという。ある意味でベルナル超え。なぜこれほどの才能が、立て続けに生まれてくるのか。
そしてそれに負けないイギータ、アスグリーン、グロスチャートナー、シャフマンといった才能たち。
「若手の登竜門」とされるカリフォルニアだが、今年は例年以上だった。
総合成績以外でも若手が活躍し続けていた。
山岳賞のダヴィデ・バッレリーニは最終日にも、山岳賞が確定している中でも常に前へ前への姿勢を忘れなかったし、そのバッレリーニから一度は山岳賞を奪いながらも再び奪い返されてしまったアメリカナショナルチームのアレックス・ヘーンも、21歳とこれからが楽しみな選手だ。
勝てなかったけれどフィリプセンはもはや上位に入るのが当たり前になっているし、イネオスのハルヴォルセンはもちろん、そのリードアウト役を務めたオウェイン・ドゥールもまだ26歳と若い。ときおりハルヴォルセンを置いていってしまうくらいに前の方で展開するその走りは、アシストとしての役割から解き放たれたときの爆発力にも期待したくなる。今年既に逃げ切り勝利を果たしているけれども。
その中で、リッチー・ポートはおそらくは期待されていたほどの走りはできなかった、という結論だったとは思うが、3月や4月の走りと比べれば、随分回復してきたな、というのが正直な感想。第6ステージの勝負所でメカトラに襲われなければ、もうちょっと違っていたのだろうか。あるいはTTがあれば。
ヴァンガーデレンも救済までされたのにクイーンステージで面白いほどにするすると落ちていく姿はさすがヴァンガーデレンだったが、この人、そして最終日に見せたチームとしての強さは、今年のEFを象徴する姿だったようにも思う。
ツールではウラン、ウッズ、ヴァンガーデレン、そしてマルティネスとチームのトップクライマーたちが集結するとのこと。
期待していいよね?
丁寧に眺めれば眺めるほど、今後を占ううえで注目すべきポイントに溢れていた今年のカリフォルニア。
Jsportsではまだまだ見逃し配信が可能なので、毎日の早朝でなかなかしっかりと見られていない人も、改めて時間を見つけて見直してみることをお勧めする。
とりあえずポガチャルおめでとう! いつかツールでベルナルと激突し鎬を削り合う姿を、めちゃくちゃ楽しみにしている。
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