りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツール・ド・スイス2019 注目選手プレビュー

コースプレビューに引き続き、「第4のグランツール」の注目選手たちを紹介していく。

筆頭は、フルーム戦線離脱により、正真正銘今回のツールの総合優勝筆頭候補に躍り出ることとなったトーマス。そして、その側近にしてもう1人の総合優勝候補ベルナル、あるいは昨年のブエルタで飛躍したマスや、復活を期するアルなど。

スプリンターにも豪華な面子が揃うものの、今回は上記のような総合優勝候補たちを中心にプレビュウ。「ツール前哨戦」として、それに向けての調子の具合を確かめておきたい選手たちを並べてみた。

いずれも怪我明けが多かったりと、調子の好悪が読めないところがあるだけに。

 

もちろん、マーダーや、今回取り上げなかったヒルシなど、地元スイスの若手注目株たちの動向にも要注意である。

 

↓コースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

 

 

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ゲラント・トーマス(イギリス、33歳)

チーム・イネオス(INS)所属

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昨年ツール・ド・フランス覇者。今年はツール・ド・フランス5勝を狙うクリス・フルームと共に真のダブルエースとしてツールに臨む・・・はずだったのだが、まさかのフルームが、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネにて大腿骨骨折。ツール・ド・フランスの出場は不可能となり、イネオスはトーマスの単独エースでツールに挑むことに。

となれば、今回のスイスは、その状態を測るうえで非常に重要になる。今年ここまでのステージレースの成績は、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ(2月)総合44位、ティレーノ〜アドリアティコ(3月)途中リタイア、イツリア・バスクカントリー(4月)総合40位、ツール・ド・ロマンディ(5月)総合3位とイマイチ。

だが、そこは、フルームと同じスロースタート戦略を取っていると考えることもでき、やはり今回のスイス次第と言えるだろう。フルームも長い間このドーフィネで総合優勝を経たうえでツールでも総合優勝を果たしている。昨年のトーマスもそうだ。

であれば、今回のスイスでトーマスが総合優勝することは、ツール連覇に向けての必須事項とも言えるだろう。

 

 

エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)

チーム・イネオス(INS)所属

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本来であればジロ・デ・イタリアにエースとして出場予定であった。しかし直前のトレーニング中の事故により骨折し、ジロをパス。このスイスで復帰し、調子を整えてツール・ド・フランスに参戦することに。

昨年はツールに初出場ながら、調子の上がりきらないフルームを献身的に支え、トーマスと並び表彰台に乗せる大いなる役割を担った。今回も、メインはトーマスのアシストとなるだろうが、本来であればグランツールでのエースを約束されていた男。今年もツアー・コロンビア(2月)総合4位、パリ〜ニース(3月)総合優勝、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(3月)総合3位など、ここまでの調子は非常に良い。

あとは、怪我明けでどこまでの実力を発揮できるか。アシストに留まるか、ダブルエースの一角を担うか。今回の走りを見ながら、そのあたりの可能性を探っていきたいところ。

 

 

エンリク・マス(スペイン、24歳)

ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)所属

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昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで大ブレイクした若きスペイン人オールラウンダー。アルベルト・コンタドールの後継者?  当然今年も期待されていて、ツール・ド・フランスではユンゲルスなどを差し置いて総合エースとして抜擢された。

しかし、今期はここまでヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2月)総合4位、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(3月)総合9位、イツリア・バスクカントリー(4月)総合11位と、正直期待されていたほどの成績は残せていない。今回のスイスで、そこをどれだけ立て直していけるか。

なお、年初のチームの話などでは、今年のツールはマスのための体制を作り、このチームとしては珍しく総合成績を狙っていく的な話をしていたように感じていたが、蓋を開けてみればヴィヴィアーニ体制も用意され、結局はいつものクイックステップ。マスを支える山岳アシストはどれくらいいるのか、という点は不安に感じる。

それはこのスイスも同様で、ヴィヴィアーニ・リケーゼ・モルコフの完全ヴィヴィアーニ体制に、平坦・ステージ要員のランパールト。山岳アシストと言えそうなのはデヴェナインスとかろうじてツアー・オブ・カリフォルニア総合3位のアスグリーンくらいか。

このスイスでも独力でなんとかしなければならない場面も目立つであろうマス。昨年のようなアグレッシブな走りを、継続することはできるか。

 

 

ファビオ・アル(イタリア、29歳)

UAEチーム・エミレーツ(UAD)所属

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2015年にはジロ・デ・イタリア総合2位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を果たし、一躍トップライダーの仲間入りを果たしていたアル。2017年のツールでは一時マイヨ・ジョーヌも着用した。

しかし、満足のいく結果は出せない日々が続いた。それは2018年にUAEに移籍してからも。2018年にはその原因がグルテン不耐性であることが判明するが、その後も不調は回復せず、今年もパリ〜ニースを途中リタイア。改めて検査をした結果、その最大の原因が、「腸骨動脈の狭窄」であることが判明した。

これは、普段はそこまで影響が出ないものの、全力を出したときに十分な血液供給ができないという症状。普段は症状が出ない分発見も遅れ、単なる不調でしかないと思われていた時期が長かったのである。

自らの不調にはしっかりと原因があったことを知ったアルは涙を流したという。その後手術を行ったアルな、再び実力を100%発揮できるようになるためのリハビリに全力で取り組んだという。

近年同じ手術を受けた有名選手にはジョセフロイド・ドンブロウスキーやアンネミエク・ファンフルーテンなどがおり、いずれも今は問題なく第一線で活躍できている。

アルもまた、かつてのような輝きを取り戻せるはず。先日のGPルガーノで復帰戦を走り、22位でゴールしている彼が、今回のスイスでどれだけの走りをしてくれるか、楽しみだ。

 

 

ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、28歳)

チーム・サンウェブ(SUN)所属

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2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合4位。紛れもなく、トム・デュムランに次ぐチームの総合セカンドエース。

しかし、年初の予定では、今年はジロもツールもあくまでもデュムランのアシストとして走る予定だったケルデルマン。そのことに彼も不満が隠しきれない様子は見せていた。

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しかしここにきて、チャンスが。デュムランがジロで落車し、リタイア。その膝の具合が現時点でも万全ではなく、ツール・ド・フランスでも十分な実力は発揮できないかもしれないと話していた。

www.cyclingnews.com

ケルデルマン自身もボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで落車して骨折し、今回のスイスが復帰戦となる点は不安要素ではあるが、ドーフィネでも本気で走れていないデュムランに対し、今回の走り次第ではケルデルマンの役割が変わる可能性がある。

彼自身にとっても絶対に捨てられない戦い。昨年は総合5位。今回は、最低でも表彰台を狙っていきたい。

 

 

マルク・ソレル(スペイン、26歳)

モビスター・チーム(MOV)所属

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2015年ツール・ド・ラヴニール覇者。そして昨年のパリ〜ニース覇者。いわばベルナルの先輩である。

昨年はトリプルエースのアシストとして終盤まで活躍。期待通りの走りを見せてくれた。今年もなんだかんだでトリプルエースで臨むことになりそうなツールのモビスターだが、この男もまた、4番目のエースに十分なりうる男である。何せ、同じような立場だった(というよりは昨年のパリ〜ニースではソレルのアシストだった)リチャル・カラパスが、今年のジロでまさかの総合優勝を果たしているのだから。

そのためにもスイスでの彼の走りは注目に値する。彼もまたパリ〜ニースで横風の犠牲になったり、カタルーニャの「魔のカーブ」の犠牲になったりと実力を発揮しきれないシーズンを過ごし、骨折からの復帰戦となった5月のブエルタ・ア・アラゴンでも、(ややパンチャー向けのレースではあるものの)25秒遅れの総合8位とここまではイマイチだが、今回のスイスに向けて、どこまで仕上げてきているか。

 

 

ヒュー・カーシー(イギリス、25歳)

EFエデュケーション・ファースト(EF1)所属

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ツール・ド・ロマンディでの積極的な動きから始まり、それはジロ・デ・イタリアでも止まらなかった。最終的には総合11位と、これまでずっと期待されていたその才能がついに開花しつつある。

もちろん今回も期待したいものの、さすがにジロの疲れは取れ切っているとは思い難い。無理に総合は狙わないかもしれないが、その分、ステージ優勝をきっちりと取りに来るかもしれない。昨年のドーフィネのペリョ・ビルバオのように。

そしてその勢いのままブエルタ・ア・エスパーニャに挑み、そこで大きな成果を出してもらいたい。今回のスイスはその序章だ。

 

 

ピエール・ラトゥール(フランス、26歳)

AG2Rラモンディアル(ALM)所属

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フランス版マルク・ソレル。あるいはAG2R版ダヴィ・ゴデュ。昨年のツール新人賞。昨年ほどの山岳アシストの層が期待できない中、強力にバルデをサポートする役割を担う男。そんか彼が、今年は大人しい。何かと思えば、2月のトレーニング中に左手首を骨折し、つい最近まで療養中だったのだ。今回の注目選手そんなのばかりだな。

本来であればソレルのようにステージレースを総合優勝してもおかしくない男だとは思っている。国内選手権個人TTを連覇している独走力は、個人TTが2回ある今大会では有利に働くこと間違いなし。

バルデも不安が残る中、下克上もありうるぞ。

 

 

ジノ・マーダー(スイス、22歳)

チーム・ディメンションデータ(TDD)所属

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昨年のツール・ド・ラヴニールで2勝。総合3位。インスブルック世界戦ロードでも4位。その実力は間違いない。しかし今期はここまで、目立った活躍はできていない。

だからこそ、母国を走る今大会での覚醒に期待したい。ラヴニール最終日のあのアグレッシブさに期待して、せめてステージ優勝はもぎ取ってもらいたい。

何よりも、ディメンションデータが渾身の強化を図ったと考えていたアルデンヌ・クラシックで大爆死してしまった中、マーダーが活躍すれば、昨年の獲得戦略が決して間違いだけでなかったことを証明できるので・・・。

 

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