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ツール・ド・スイス2019  コースプレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:スイス

Region:-

First edition:1933年

Editions:83回

Date:6/15(土)~6/23(日) 

 

その歴史の古さ、ヨーロッパのステージレースの中でも長めの日数、バランスの取れたコースレイアウトといった要素で、「第4のグランツール」と呼ばれることも多い格式高いステージレース。

アルプスの厳しい山岳地帯を活用したコースの厳しさは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並び「ツール前哨戦」として多くのトップライダーを集め、それは今年も同様である。ドーフィネのフルーム、バルデ、キンタナ、アダム・イェーツらに対し、こちらはトーマス、ベルナル、アル、マス、ケルデルマンといった面々が並ぶ。

スプリンターにとってはドーフィネよりも強豪選手が集まりやすい、ヴィヴィアーニ、クリストフ、デゲンコルブ、マシューズなどこちらもツールに出場するトップスプリンターたちが名を連ねる。とくにペテル・サガンはツール・ド・スイス16勝しており、初出場の2011年以来、8年連続で欠かさず勝利しているまさにスイス・マイスターである。

 

そんな、名選手たちが集うスイスは、2つの個人TTと強烈過ぎる山岳ステージの連続を用意し、オールラウンダーとピュアクライマーとが秒差を争う展開を生みかねないワクワクするコース群を用意した。

最後の瞬間まで見逃せない。9日間の長丁場の末に、どんなドラマが待ち受けているか。

 

↓注目選手プレビュウはこちらから↓

www.ringsride.work

 

 

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第1ステージ  ラングナウ I.E.〜ラングナウ I.E  9.5㎞(個人TT)

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スイスを代表する穴開きチーズ「エメンタールチーズ」の産地として有名なラングナウ・イム・エメンタール。

その谷を流れるエンメ川沿いに北上し、ラウパースヴィルの集落で折り返して同じ道を往復するレイアウトは、カーブも少なく、ハイスピードなバトルが予想される。

短さも相まって、上位に並ぶ選手にはスプリンターの姿も多くなるだろう。

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この短い距離でのTTで実績がある選手といえば、2017年のツール・ド・フランス初日TT(14km)で優勝しているゲラント・トーマスや2015年のツール・ド・フランス初日TT(13.8km)で優勝しているローハン・デニス、2016年のパリ~ニースのプロローグ(6.1km)優勝のマイケル・マシューズといったところがすぐに思い浮かぶ。パトリック・ベヴィンもまた、この16パリ~ニースのプロローグで2秒差の3位につけている。また、スイス人としては昨年の最終日TTで優勝しているシュテファン・キュングやトム・ボーリあたりが上位には来てくれるだろう。

そのほか、距離がほぼ等しい今年のティレーノ~アドリアティコ第7ステージ(10km)で5位だったイヴ・ランパールトにも注目すべきかもしれない。

昨年最終日TT2位のソーレンクラーク・アンデルセンやマチェイ・ボドナール、ジョナタン・カストロビエホなどもTT能力の非常に高い選手たちではあるが、今回の距離にどこまで対応できるかは未知数だ。

総合勢では上記のトーマスのほか、エンリク・マスやアレハンドロ・バルベルデ、マルク・ソレル、ウィルコ・ケルデルマン、ピエール・ラトゥール、そしてエガン・ベルナルのあたりがタイムを稼ぎ出すことができそうだ。

一方、ファビオ・アルやヒュー・カーシー、ルイ・メインチェス、シモン・スピラックあたりは総合争いにおいてどこまで耐えきれるかが重要。とはいえアルやカーシーは決してTTが苦手というわけではないし、そもそも距離も短いため、致命的な差が生まれることはないだろう。

 

 

第2ステージ  ラングナウI.E.〜ラングナウ I.E.  159.6㎞(丘陵)

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ラングナウ I.E.南部の、2つの山を含んだ53.2㎞の周回コースを3周するタフなコースレイアウト。用意されているのは登坂距離8.2㎞、平均勾配4.9%の2級山岳シャレンベルクと、登坂距離2.8㎞、平均勾配9.75%の2級山岳チュデルシ・パスの2つ。

最後のチュデルシ・パスの頂上からゴールまでは18〜19㎞。総獲得標高も2532mに達することから、ピュアスプリンターたちが生き残るようなステージではないと思われる。となれば、やはり注目が集まるのは過去16勝、8年間欠かさず勝利を重ねてきているスイス・マイスターのペテル・サガンの勝利。今年は例年と比べ不調が目立つが、そんな中でも、同じく勝ち星を積み重ねているカリフォルニアではしっかり勝利をもぎ取っている。このスイスでも、「いつものサガン」が見られるか?

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あるいはもちろん、そのサガンの永遠のライバルとも言える「キラキラ」マイケル・マシューズや、シーズン序盤は立て続けに勝利を重ねていたマッテオ・トレンティン、あるいは「北のクラシック最強男」アレクサンドル・クリストフなどが優勝候補として名前が挙がる。もちろんグレッグ・ファンアーフェルマートも黙ってはいないだろうし、若手パンチャー系スプリンターの売り出し中イバン・ガルシアも、カリフォルニアに続く勝利を期待されていることだろう。

あるいはもちろん、逃げ切りや、上記スプリンターたちを引きちぎってのクライマー系選手たちによるスプリントの可能性も十分あるステージだ。

 

 

第3ステージ  フラマット〜ムルテン  162.3㎞(平坦)

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レースの大半はアップダウンが続く丘陵ステージ。途中、いずれも短くも急峻な3級山岳が2つ用意されるが、ゴールを一度通過した後のムルテンの街の象徴たるモラ湖をぐるりと回る周回コース(約30㎞)に関してはほぼフラットなレイアウト。

ただし、最後は登り気味のスプリントとなりそうで、前日に引き続き、パンチャータイプの選手たちに有利と言えるかもしれない。

とはいえ、エリア・ヴィヴィアーニも、フラストレーションの溜まるジロを経てわざわざ寄り道のようなこのスイスにやってきている。昨年は登りへの適性も見せていた彼が、しゃらくさいとばかりに最強スプリンターの足を見せてくれことを期待したい。 

 

なお、モラ(Morat)とはムルテンのフランス語読み。ここモラ湖はドイツ語地域とフランス語地域の境界線に位置するという。


The secret sand beaches - Lake Murten (Switzerland)

 

 

第4ステージ  ムルテン〜アルレスハイム  163.9㎞(丘陵)

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最初の80㎞は平坦、そして後半は一気にアップダウンが激しくなる。この後半の80㎞だけで、獲得標高が2000m近くあるという。

最初に訪れる2級山岳パスヴァングは、登坂距離3.5㎞、平均勾配8.6%の短くも厳しい登り。

そのあとにバーゼルの南に位置するアルレスハイムの街に入り、ホーホヴァルドの登りを一度通過したあとにゴールラインを越え、8の字を描くようにして南下。

その先の3級山岳(登坂距離3㎞、平均勾配7.4%)と2回目のホーホヴァルドを通過して、ゴールに至る。

2回目のホーホヴァルドの頂上からゴールまでは14㎞。最後も小刻みなアップダウンが用意され、ここもまた、ピュアスプリンターが残るには厳しそうなレイアウトだ。少しでもタイムを稼ぎたいクライマーたちによるプッシュか、もしくは逃げ切りが決まる可能性もあるだろう。

 

 

第5ステージ  ミュンヘンシュタイン〜アインジーデルン  177㎞(丘陵)

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公式サイトは次のように述べる。「このステージはスプリンターたちにとって、最後の輝くチャンスが与えられることだろう」。たしかにその通りだ。遠くから細目で眺めれば終盤は平坦。紛れもなくスプリンターステージだろう。

ただしその「平坦」は2級山岳を一気に駆け上がった先にある。ステージ全体の総獲得標高も2750m。そもそも終盤もよくよく見ると平坦じゃなくない? 今回のスイスはドーフィネ並みにピュアスプリンターに厳しくて、ヴィヴィアーニは何のためにわざわざ寄り道してきたんだ感が強い。いつもこんなだっけ?

 

 

しかしまあ、中盤までの丘陵地帯と最後の2級山岳さえ乗り越えれれば、実際に第3ステージ並みのスプリンター向けステージであることは間違いない。しかし本当にすべてのスプリンターが生き残れるのか・・・? 予想の難しいステージだ。

 

ゴールの近くには934年に建てられたベネディクト派の修道院がある。話によると、サンティアゴ・デ・コンポステーラの中継地ともなっているという。

 

 

第6ステージ  アインジーデルン〜フルームスベルグ  120.2㎞(山岳)

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短めのステージで、総獲得標高は2000mに満たない。途中の登りも緩やかで、プロトンは難なく乗り越えることだろう。

しかし、最後の登りでは確実に総合優勝争いが巻き起こる。登坂距離8.5㎞、平均勾配は9%!  ゴール直前には10%を超える部分もあるということで、本格的なクライマー同士の激突が見られることだろう。

ツール・ド・スイスがこの登りを訪れた最後の記憶は1995年に遡る。この年、マルコ・パンターニが独走で駆け上がり、勝利を掴んだという。

今年、この「パンターニの山」を先頭でゴールする選手は誰だ? それはきっと、今年のツールでも存在感を示すクライマーの1人となるだろう。

 

 

第7ステージ  ウンターターツェン〜ゴッタルド峠  216.6㎞(山岳)

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今大会最長ステージ。そして、16.5㎞にも及ぶ長い長い1級山岳を越えた後、最後に超級山岳山頂フィニッシュが待ち構える。しかも、最後の登りのラスト8㎞は石畳だという。

総獲得標高は4,000m超。

紛れも無いクイーンステージ・・・ではないからこそ、スイスは恐ろしいのだが。

 

ヴァレン湖沿いにスタートしたプロトンは、65㎞地点で2級山岳を1つ越え、やがて残り110.3㎞地点から、1級ルコマニョ峠(登坂距離16.5㎞、平均勾配5.3%、最大勾配10%超)を登る。

ここで大きな攻撃に出るチームはそう多くはないだろう。逃げグループが縮小され、メイン集団からもバラバラとアシスト選手たちが落ちていくかもしれないが、このあとの長い登りを経て彼らも復帰することになりそうだ。

大事なのは、ここで復帰したとしても、彼らは一度遅れたという事実。メイン集団内部でも、この最初の一撃で互いの状態を把握し合ったうえで、最後の登りで本格的な攻撃が行われることとなる。

万が一バッドデイのものがいれば、この最初の登りでそれを気付かれないようにしないといけない。

 

そしていよいよ、今大会最標高地点へと至る超級ゴッタルド峠(登坂距離12.4㎞、平均勾配7.1%)に突入する。

その最大の勝負所は、ゴール直前に登場する美しき九十九折「トレモラ」。19世紀にアルプスの南北を結ぶために作られたこの道路には石畳が設置され、それはよく手入れが行き届いてはいるものの、最後の戦いに挑む総合有力勢たちの足を確実に削り、予想のできない展開を生むことになりそうだ。

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今大会最高に美しい空撮が見られそうだ。走る側にとってみれば、溜まったもんじゃないが。 

 

 

第8ステージ  ウルリヘン〜ウルリヘン  19.2㎞(個人TT)

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標高1,300m超えの高地を舞台にして行われる中距離個人TT。コース自体はフラットで、直線基調が多く、TTスペシャリストが純粋に力を発揮しやすいレイアウトとなっている。

ただし登場するコーナー自体は鋭角なものが多く速度は一気に絞り込まれる。ゴール前1㎞からも直角カーブが2連続で登場し、力の使い方が試される。

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昨年の個人TTは最終日に用意され、34㎞とやや長く、より起伏に富んでいた。その際はスイス最強のTTスペシャリスト、シュテファン・キュングが優勝。今年も有力候補ではあるが、昨年2位のクラークアンデルセンやスイスの実力者ボーリ、あるいはボドナールやベヴィンなども、上位に名を連ねることになるだろう。

もちろん、チーム・イネオスのカストロビエホや、世界王者のローハン・デニスなどの「大本命」も忘れてはいけない。

 

 

第9ステージ ウルリヘン~ウルリヘン 144.4km(山岳)

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第7ステージも大概だったが、このステージこそが今年のツール・ド・スイスの最難関ステージ。なにせ、144kmと比較的短いコースの中に超級山岳がどーん、どーん、どーんと3連発。最初と最後の僅か10km程度以外はすべて登ってるか下ってるかだ。総獲得標高は4000m。むしろそれしかないのか本当にといったところ。

最初の超級フルカ峠(登坂距離16.5km、平均勾配6.3%)は標高2436mと、今大会最標高地点となっている。気温の低さと空気の薄さがライダーたちを苦しめるが、これがまだ最初の20km程度だという事実こそが彼らの精神を蝕むのかもしれない。『007 ゴールドフィンガー』でジェームズ・ボンドがカーチェイスを繰り広げた峠道ということで、一度は車で行ってみたくはある。自転車では絶対嫌だ。

2つ目の超級サスティン峠(登坂距離17.4km、平均勾配7.5%)を越えて、25kmの長い下りのあと、最後の超級グリムゼル峠も26kmに及ぶ長い登り。平均勾配は5.9%で、最大勾配は11%に達する。

 

この頂上からゴールまでは18kmの下りと平坦。総合大逆転を狙って攻撃を仕掛けたアグレッシブクライマーと、総合リーダージャージを着る選手との間で壮絶な追いかけっこが繰り広げられればきっと歴史に残る面白さが生まれることだろう。

なお、終盤は前日の個人TTの後半とまったく同じレイアウトを使用する。

すなわち、ラスト1kmに連続する直角コーナー。集団スプリントになることはないだろうが、気を付けたいポイントである。

 

次回は注目選手をプレビュー。

 

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