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【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2019 第1週(後半)

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「長い1週目」の後半戦をレビューしていく。

序盤の山場ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユと、中央山塊の激しいアップダウンステージで、総合争いは少しずつ動き出していく。マイヨ・ジョーヌを巡る攻防戦も白熱する。

また、スプリンターたちによる頂上決戦も混沌とした様相に。

 

現時点ではまずは第6~第8ステージをレビューしていく。

(のちに第9~第10ステージも加える予定) 

 

↓第1週の前半戦レビューはこちらから↓ 

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 ↓各ステージの詳細についてはこちら↓

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第6ステージ  ミュルーズ〜ラ・プロンシュ・デ・ベルフィーユ  160.5㎞(山岳)

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今大会最初の山頂フィニッシュ。それも、これまで数多くの伝説を作り上げてきた「王の山」ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユが、その破壊力をさらに増した状態で登場してきた。

しかも、最後のラ・プランシュだけではない。それまでにも2つの1級山岳を含むひたすら登っては下りての激しいアップダウン。総獲得標高は4,000m弱にも及ぶ。

 

逃げ切りも十分に狙える最初の本格山岳ステージとだけあって、スタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられ、スタートから14kmの地点で、以下の14名の逃げが確定した。

 

  • ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
  • トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
  • ディラン・トゥーンス(バーレーン・メリダ)
  • ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)
  • ジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード)
  • ファビアン・グルリエ(トタル・ディレクトエネルジー)
  • クサンドロ・ムーリッセ(ワンティ・グループゴベール)
  • アンドレア・パスクアロン(ワンティ・グループゴベール)
  • ニルス・ポリッツ(カチューシャ・アルペシン)
  • ブノワ・コズネフロワ(AG2Rラモンディアル)
  • ニキアス・アルント(チーム・サンウェブ)
  • セルジュ・パウェルス(CCCチーム)
  • アンドレ・グライペル(アルケア・サムシック)
  • ナトナエル・ベルハネ(コフィディス・ソルシオンクレディ)

 

山岳賞ジャージを着るティム・ウェレンスが積極的に山岳ポイントの収集に努める。

もう1人、山岳賞に興味を示してきたのが、ジロの山岳賞獲得者チッコーネである。3級山岳であっても積極的に狙ってこようとする彼に対して、ウェレンスのチームメートであるデヘントが代わりに山岳ポイントを奪いに行くなど、アシストを行った。

最終的にこの日を終えてウェレンスの山岳ポイント合計は43。しかしチッコーネもここに迫る30ポイント。初日から強さを見せるツール初出場ムーリッセも27ポイントと、諦めずに食い下がろうとする姿勢を見せている。

 

逃げ集団で動きが巻き起こったのが「ボーナスクライム」も設定された2級コル・デ・シュヴレール(登坂距離3.5km、平均勾配9.5%)。終盤にかけて勾配が増していき、最大で11%近い勾配を有するこの強烈な登りで、一時独走状態にあったトーマス・デヘントも捕まえられ、先頭はウェレンス、トゥーンス、チッコーネ、ムーリッセの4名だけに。

そして最後のラ・プランシュ・デ・ベルフィーユに挑む。

 

まず遅れたのはウェレンス。純粋なクライマーとは言えない彼にとって、この最後の本格的な登りは厳しすぎた。次にムーリッセが崩れ落ちそうになるが、しばらくの間は執念で喰らいつき続けていた。初日のカペルミュールのときもそうだったが、初出場のツールで、彼は誰の想像をも超えた走りを見せ続けている。今回のツールで覚醒した選手の1人と言えそうだ。

 

だが結局はムーリッセも脱落。トゥーンスとチッコーネの2人だけで、かつてのラ・プランシュ・デ・ベルフィーユのゴールを越えた先にある未舗装路の激坂区間へと突入していく。

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勾配20%を超える区間が連続する中、トゥーンスは決して前を譲らなかった。

チッコーネも離れない。今年ワールドツアーに昇格したばかりの24歳の若き天才。ジロでの鮮烈な走りの勢いを保ったままトゥーンスに喰らいつくが、しかし「激坂ハンター」として2年前台頭してきた男、先日のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで2年ぶりの勝利を果たしたばかりの勢いに乗っているこの男の前には、一歩届かなかった。

ディラン・トゥーンス、ツール・ド・フランス初勝利。昨年は目立てなかった彼が、今年再度の躍進の時を迎えるか。

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そして当然、総合争いも白熱する。

最後のラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ登坂開始の直前、モビスター・チームがマルク・ソレルを先頭に一気にペースアップ。そして登坂開始と同時に先頭はアレハンドロ・バルベルデに切り替わり、さらなるペースアップでもって集団の絞り込みにかかった。AG2Rラモンディアルのミカエル・シェレルやチーム・イネオスのディラン・ファンバーレなどがここで脱落する。

 

1kmほど登坂を終えたあと、集団を支配したのはイネオスだった。最強アシストのミカル・クウィアトコウスキーが先頭を牽引し始める。途中、ワレン・バルギルやミケル・ランダなどがアタックするも、クウィアトコウスキーは決して慌てず淡々と牽き続け、バルギルを吸収し、ランダとのタイム差も15秒以上には開かせずに追いかけ続けた。

 

そして、残り3kmからはさらに驚くべき動きが。

グルパマFDJのセカンドエース、そして今回はピノの最も信頼するアシストとして参戦している2016年ラヴニール覇者ダヴィ・ゴデュ。

強烈なペースアップで集団からバルギルやアルがふるい落とされ、集団は20名弱にまで縮小。

エースのピノのための完璧なアシストを果たして見せた。

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そして、残り1kmの未舗装路区間。

ここで、激坂を得意とするジュリアン・アラフィリップがアタック。一気にミケル・ランダを飲み込んで、3番手の位置でゴールに向かって加速していく。

 

だが、ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユはやはり「王の山」だった。

今年、そこまで多くのレースを走らず、ツール・ド・スイスも落車により早々にリタイアしたことによって、その実力のほどが未知数のままツールに突入していたゲラント・トーマス。

彼が、この20%超の激坂をシッティングのまま淡々と踏み続け、そして、勢いに乗っていたアラフィリップを軽々と抜き去ってしまった。

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それこそ、昨年のアルプスで見せた彼の圧倒的な強さを思い起こさせるような勝ち方だった。

やっぱり昨年総合優勝者の彼が、今年も最強なのか。

道中のクウィアトコウスキーの走りと合わせ、最強チームの最強たるゆえんをまざまざと見せつけられる日となった。

 

↓各チームの走りに対する評価は以下を参照↓

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第7ステージ  ベルフォール〜シャロン=シュル=ソーヌ  230㎞(平坦)

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3ステージぶりの平坦ステージ。前半戦はそれなりのアップダウンがあるものの基本的にはスプリンターたちの足を止めるものはなく、ほぼ間違いなく集団スプリントとなることが予想されたステージだ。

結果、逃げに対するモチベーションも低く、以下、捕まえられること前提の2名が延々と逃げ続けた。

 

  • ヨアン・オフルド(ワンティ・グループゴベール)
  • ステファヌ・ロセット(コフィディス・ソルシオンクレディ)

 

メイン集団の牽引役を担ったのはカスパー・アスグリーンとトーマス・デヘント、そしてトニー・マルティン。とくにマルティンの姿は常に映像に映り、この機関車役が、総合狙いとスプリント狙いとを共に高いレベルで追い求めるチームにとっての大きな柱となっている。

 

そして、勝負は予想通りの集団スプリントに。それに至る道中においても、チーム・ユンボ・ヴィズマはチームワークの高さを見せつけた。

まず、ベルギーTT王者に輝いたばかりのワウト・ファンアールトが、残り5.5kmに先頭に躍り出ると、そのまま残り2.2kmまで全力で牽き続けた。まさにトニー・マルティンかと見紛うばかりの働きであった。

そして、残り2.2kmからの1km。縦に長く伸びた集団を牽引する役目を担ったのがノルウェーチャンピオンジャージのアムントグレンダール・ヤンセンである。

第1ステージでは残り1.5kmで、彼の不用意な動きが原因となったエースのフルーネウェーヘンを落車させてしまった。

まるでその借りを返すかのような、必死の形相でハンドルを大きく左右に振ったリードアウト。これにより、ライバルたちの足は確実に削られていった。フルーネウェーヘン自体は、マイク・テウニッセンによってがっちりとガードされながら、前から5番目という、かなり完璧に近いポジションを確保することができていた。

そこから完璧なリードアウトを見せたのはドゥクーニンク・クイックステップ。モルコフ→リケーゼ→ヴィヴィアーニという、最強の多段発射をこの日も見せる。ただ、前輪パンクにより、ヴィヴィアーニはこのあと、勝負を仕掛けることができず。

一方、ヴィヴィアーニの後ろのサガンの後ろのユアンの後ろのクリストフの後ろ、というちょっと離れたポジションに追いやられてしまっていたフルーネウェーヘン。直前までのチームメートたちの尽力に関わらずこの位置取りは、かなり危機的な状況だ、と見ていて感じてしまった。

が、そのあと、残り350mで彼は巧みにクリストフの背中から飛び出し、その前のユアンの背中に飛び乗る見事な動きを見せる。それでもまだ、先頭からは遠い。

ここで、残り250m。フルーネウェーヘンは、早くもユアンの背中から抜け出した。

これは、昨年のツール・ド・フランスでも見られた光景だ。

フェルナンド・ガビリアが、「残り200m」からの勝負で勝利を掻っ攫って行ったのに対し、フルーネウェーヘンはそれよりもわずかに遠い「残り250m」から勝負を仕掛け、そして同じ距離から発射したガビリアをいとも簡単に下して見せていた。

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この日も一緒だった。残り200m以内の距離からスプリントを仕掛けようとしたライバルたちに対し、彼は一歩早く、スプリントを開始した。

当然、目の前には250m分の空気の壁が立ちふさがっている。しかし、童顔に似合わぬ筋肉質なその身体から生まれる圧倒的なパワーは、そんな空気の塊をものともせず。

むしろ、「人の壁」がなければ、誰よりも強いのがフルーネウェーヘンだった。

最後が若干の登りスプリントだったために、それを得意とするカレブ・ユアンが最後の最後で差し切りかけたものの、最終的にはきっちりとフルーネウェーヘンが逃げ切った。

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昨年、圧倒的なパワーでもって余裕な様子で立て続けに2勝したフルーネウェーヘン。しかし今年はここまで、苦戦が続いていた。今回の勝利の表情はそれを物語っているかのようだった。

だが、何とか勝利。蓋を開けてみれば、昨年と同じく第1週の後半戦での勝利。次のスプリントステージは第10ステージ。昨年同様、第1週の終盤を2度目の勝利で飾れるか。

 

そしてこの日の結果を踏まえて、やはり単体でのスプリント能力の高さはこの男が最強なのかもしれない。ライバルたちも悟ったに違いない。この男を、ゴール前300m以内でフリーにしてはいけない、と。

彼を倒すための唯一の方法は、そこまでの間に彼をずっと後方に引き離すこと。そして、ユンボ・ヴィズマもそれを分かっているがゆえに、ファンアールト、ヤンセン、テウニッセンは、彼を残り300mまでしっかりと守護することに全力をかけようとする。

 

第10ステージ、そして第11ステージ。今年のツールの「最強スプリンター」を決めるうえで重要なこの2つのステージで、ユンボが勝つか、他チームが勝つか。 

 

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第8ステージ  マコン〜サンテティエンヌ  200㎞(丘陵)

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総獲得標高が第6ステージのラ・プランシュ・デ・ベルフィーユに匹敵する4,000m弱。逃げ切りの可能性も濃厚なこの激しいステージで、以下の4名が逃げに乗った(デマルキは26km地点で合流)。

 

  • トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
  • ベンジャミン・キング(ディメンションデータ)
  • ニキ・テルプストラ(トタル・ディレクトエネルジー)
  • アレッサンドロ・デマルキ(CCCチーム)

 

そして、7つあるすべての山岳ポイントの先頭を、トーマス・デヘントが獲得する。合計で29ポイントも積み上げた彼は、チームメートのティム・ウェレンス(43ポイント)に次ぐ山岳賞ランキング2番手(37ポイント)につけ、よりパンチャー的でピレネー・アルプスでジャージを着続けることに不安の残るウェレンスに代わって、チームに山岳賞をもたらす候補の1人として台頭してきた。

予習のゲームと同様に残り72kmから2級山岳クロワ・ド・パル(登坂距離4.9km、平均勾配7%)および残り55kmからの2級山岳コート・ダヴェーズ(登坂距離5.2km、平均勾配6.4%)で逃げ集団・メイン集団ともに動きが起こる。

逃げ集団ではテルプストラとキングが切り離され、デマルキとデヘントの2人旅に。メイン集団ではビルバオ→ウル→フライレと次々に先頭牽引を変えながらアスタナ・プロチームがペースアップ。フルーネウェーヘンやユアン、ボアッソンハーゲンなどのスプリンターたちが脱落する。サガンも一時遅れかけるが、これはのちに復帰している。

そして、ゲームでも総合争いの巻き起こった残り15kmからの3級山岳ラ・ジェイレール(登坂距離1.9km、平均勾配7.6%)に入ると、すぐさまデヘントがデマルキを切り離してアタック。メイン集団とのタイム差は1分弱。

メイン集団では登りの直前にゲラント・トーマスが落車に巻き込まれて遅れを見せるなどのアクシデントを経つつ、先頭はアレクセイ・ルツェンコが牽引。総合は狙わないと元々宣言していたヴィンツェンツォ・ニバリも、ここでぴったりと足を止めてしまった。

そして、頂上まで残り数百メートル、勾配17%超えの激坂区間で、ジュリアン・アラフィリップが一気にスパートをかけた。これに喰らいつくことができたのはティボー・ピノだけ。

3級山岳の頂上のボーナスクライムを2位・3位通過した2人はそれぞれ5秒・3秒のボーナスタイムも獲得。そのまま2人で下りを駆け抜け、ゴールに向かって突き進んだ。

 

しかし「エスケープ王」トーマス・デヘントはやはり強かった。

残り距離、集団の状況をすべて読み切った巧みなパワー配分の結果、猛烈な勢いで追走を仕掛けてきた2名のフランス人を、わずか6秒で振り切って3年ぶりのツール優勝を果たした。

彼にとってはもはや「当たり前」となったかのような見事な逃げ切り勝利。しかし、感情を爆発させたような絶叫と、信じられないといった様子の頭を抱えたジェスチャーから、彼ほどの選手にとっても、やはりツールでの勝利というのは格別な思いを感じさせるものだということをはっきりと示して見せた。

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アラフィリップは自らの力でもってマイヨ・ジョーヌを取り戻した。そして、ピノもまた、トーマスたち総合優勝争いにおけるライバルたちに30秒近いタイム差をつけることに成功し、現時点での総合成績は3位に。

フランス革命記念日を前にして、フランス人2人にとっては十分に成功したと言えるステージとなった。

 

 

第9ステージ  サンテティエンヌ〜ブリウド  170.5㎞(丘陵)

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「魔の第9ステージ」。今年はパリ革命記念日と重なり、フランス人の活躍が大いに期待されるステージとなった。

そして、総合勢にとっては連日の厳しいステージを終え、早めの休息日にしたいという意志が働き――総勢15名もの大規模逃げ集団が、最大で12分近いタイム差をつけて逃げ切りを確実なものとした。

  • イバン・ガルシア(バーレーン・メリダ)
  • ヤン・トラトニク(バーレーン・メリダ)
  • ルーカス・ペストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)
  • マルク・ソレル(モビスター・チーム)
  • オリバー・ナーセン(AG2Rラモンディアル)
  • トニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)
  • サイモン・クラーク(EFエデュケーションファースト)
  • ダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット)
  • ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
  • ニコラス・ロッシュ(チーム・サンウェブ)
  • ティシュ・ベノート(ロット・スーダル)
  • エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)
  • ロメン・シカール(トタル・ディレクトエネルジー)
  • アントニー・ドゥラプラス(アルケア・サムシック)
  • ヘスス・エラダ(コフィディス)

フランス人はシカールとドゥラプラスのみ・・・残念ながら、この面子で逃げ切り勝利を狙える選手とは言えなさそう。

逆に最後のスプリント勝負を考えるとスペイン人のガルシア、ベルギー人のナーセンとストゥイヴェン、南アフリカ人のインピー、ノルウェー人のボアッソンハーゲンあたりが有力と見られた。

 

ゲームでの予習と同様に、ラスト15kmから登り始める3級山岳コート・ド・サンジュスト(登坂距離3.6km、平均勾配7.2%)で動きが巻き起こる。

スプリント争いに持ち込みたくないロッシュ、ベノートがここでアタック。しかし追走集団からのタイム差は10秒程度から広がらず、追走からダリル・インピーが登りの途中でブリッジを仕掛けてきた。

先頭2名に追いついたインピーはそのあとも積極的に牽引。ゴール前でもギリギリのところまで、ひたすらインピーが前を牽き続けた。ラスト200mでベノートは挑戦するも、やはりインピーのスプリント力には到底、敵わなかった。

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メイン集団でもこのコート・ド・サンジュストで、アシストに牽かれてロマン・バルデがアタック。フランス革命記念日、そして自身の故郷を舞台としたこのステージで、少しでも動きを見せようと賭けに出た。ここに、ジョージ・ベネットとリッチー・ポートもついていく。

しかし、集団をコントロールするイネオスは冷静に対処。クウィアトコウスキーを先頭にして淡々と距離を詰め、頂上に至る前にこれを吸収した。

 

その後、動きは起こらず。インピーから16分遅れで大集団がゴールすることとなった。
 

 

第10ステージ  サン=フルール〜アルビ  217.5㎞(平坦)

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 「長い1週目」の最終日は集団スプリントが予想されたステージ。とはいえ、前日も大逃げが決まり、この日も序盤のアップダウンはそれなりにあるため、たとえばカルメジャーヌのファーストアタックなどがあったものの、彼含め危険な選手の逃げは許されることがなかった。

10kmを過ぎて最終的に形成されたのは以下の6名。

 

  • トニー・ガロパン(AG2Rラモンディアル)
  • ミヒャエル・シェアー(CCCチーム)
  • ナトナエル・ベルハネ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
  • アントニー・テュルジス(トタル・ディレクトエネルジー)
  • マッズウルス・シュミット(カチューシャ・アルペシン)
  • オドクリスティアン・エイキング(ワンティ・グループゴベール)

 

ベルハネ、シュミットは今大会3回目、シェアーは2回目の逃げとなる。

 

逃げ集団に許すタイム差も小さく、この日は何事もなく平穏無事に集団スプリントで終わる――と思いきや、残り35km地点あたりから、集団前方でドゥクーニンク・クイックステップやチーム・イネオスの面々が猛烈な勢いで牽引し始める。

横風分断の発生である。

残り31.5km地点に到達する頃にはメイン集団は40名ほどにまで縮小し、遅れた集団の中には総合争いにおいて重要な存在も。

 

メイン集団に残っている総合系の選手

  • 総合1位ジュリアン・アラフィリップ
  • 総合5位ゲラント・トーマス
  • 総合6位エガン・ベルナル
  • 総合7位ステフェン・クライスヴァイク
  • 総合10位エマヌエル・ブッフマン
  • 総合11位エンリク・マス
  • 総合12位アダム・イェーツ
  • 総合14位ナイロ・キンタナ
  • 総合16位ダニエル・マーティン

 

追走集団に取り残された総合系の選手

  • 総合2位ジュリオ・チッコーネ
  • 総合3位ティボー・ピノ
  • 総合4位ジョージ・ベネット
  • 総合8位リゴベルト・ウラン
  • 総合9位ヤコブ・フルサング
  • 総合13位クサンドロ・ムーリッセ
  • 総合15位ミケル・ランダ

 

最終的にこの2つの集団は1分40秒差がついてゴールし、上記青字で記載した9名全員が総合TOP9に入り込んだのに対し、赤字で示した7名は総合10位以下に沈み込んでしまった。 

前日にアグレッシブな動きを見せて総合3位にジャンプアップしたピノは、一夜にして大きく順位を落とすことに。

とはいえ、それでもまだ、ピノはゲラント・トーマスとのタイム差だけで言えば、1分21秒差でしかない。

もしも彼が今大会「最も強い選手」なのであれば、このあとのピレネー、そしてアルプスで十分に挽回可能なタイム差ではある。

もちろん、同じように平坦ステージでの横風分断により1分以上のタイム差をつけられ、その後挽回敵わずに総合2位で終わった2015年ツールのナイロ・キンタナという男を、我々は知っているわけだが・・・。

 

さて、ステージ優勝をめぐる争いについては、こちらは意外にも有力スプリンターたちは軒並み先頭集団に残っている様子だった。

ほぼ唯一、優勝候補で脱落してしまったのはディラン・フルーネウェーヘン。やはり、登りだとかこういった混沌とした状況には弱い選手である。

となれば、メイン集団で残った選手の中で有力なのはカレブ・ユアンやペテル・サガン、エリア・ヴィヴィアーニといったところ。

しかしヴィヴィアーニは先ほどの横風分断の際にも先頭牽引にかなり足を使い果たしており、ギリギリのところで届かず。

わずかな登りスプリントということもあり、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも1勝しているシクロクロス元世界王者、ワウト・ファンアールトが先頭でゴールラインを通過した。

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ドーフィネで3位、2位、そして個人TTと合わせ2勝したとき、ツールで勝つ日もそう遠くないとは思っていた。今大会勝つことすらも、十分にありうると。

しかしまさかこんな形で、とは思わなかった。いくら混戦の中とはいえ、ヴィヴィアーニやユアン、サガンといった世界トップクラスのスプリンターたちに混じっての勝利。

この男、そしてマチュー・ファンデルポールには、常識というものが通用しないのか。

 

 

 

さて、長く、そして、事前に発表されたコースプロフィールから想像できる以上に怒涛の展開が続いた第1週目を終えて、総合成績は現時点では以下の通りとなっている。

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いかにもな面子が揃っているようにも思えつつ、しかし総合11位以下も合わせ、いずれも2分台のタイム差。そしてトーマスから数えれば1分とちょっとのタイム差の中でせめぎ合う形となっており、2週目に控える個人TTも含めたピレネー4連戦を経たあとに、この順位が大きくシャッフルされていることは簡単に予想できるだろう。

だが、いずれにせよ、チーム・イネオスが有利なのは間違いない。先日のラ・プランシュ・デ・ベルフィーユでのトーマスの調子を見ても、また、ポーでの個人TTでもタイムを「稼げる方」であることを考えても。

これを「刺せる」可能性がありそうだったフルサングとピノはともにこの第10ステージでビハインドを抱え、状況はイネオスの2人にとってかなり良い方向に進みつつある。

 

ただ、総合首位のアラフィリップも決して無視して良い存在ではない。ピレネー、そしてアルプスでその位置を守り切れるとは普通は考えられない。しかし、勢いに乗る男というのは、何が起こるかわからないものである。

 

第2週の終了時点で、大きく入れ替わったこの総合順位表の中に、なおもサプライズが残っていることを、楽しみに思う。

混迷の中、ツールはいよいよ運命のピレネーへと突入していく。 

 

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