りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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【ツール・ド・フランス2019】チーム・ユンボ=ヴィズマ出場全選手プレビュー

略号:TJV

国籍:オランダ

GM:リチャード・ブルッヘ

創設年:1984年

使用機材:ビアンキ

 

クライスヴァイクによる総合狙い、そしてフルーネウェーヘンによるスプリント勝利狙いの二兎を追う体制。しかしそれでも十分にこなせてしまうのがこのチームだ。

さらに今年は、そこにワウト・ファンアールトという天才が加わる。直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも観る者に衝撃を与えた彼が、初のツールでどんな走りを見せてくれるのか、実に楽しみだ。

ジロでは悔しい思いをしたこのチームが、いかに挽回をしてみせるのか。

 

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。

 

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81.ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、32歳)

オールラウンダー  178cm、66kg  出場日数:26日

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昨年ツール総合5位、ブエルタ総合4位。登坂力とTT能力とのバランスが取れたオールラウンダー。かつて、ジロ・デ・イタリアではマリア・ローザ獲得まであと一歩というところにまで迫った男だ。

シーズン開幕前に彼は次のように話していた。

「ツールのコースは僕にとても向いている気がする。今僕は、グランツール表彰台の獲得に向けてあと一歩というところまで来ている。僕にとってそれは、究極の目標なんだ」

総合優勝ではなく、あくまでも表彰台が目標。それは控えめのように思えるし、彼のこれまでの実績を考えれば決して不可能出ないように思える。

しかし今年の彼の調子は決して良いわけではない。ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合5位、ツール・ド・ロマンディ総合6位。安定はしているが、それは「落とさない」走りをしているだけだった。そして直近のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ。クイーンステージの第7ステージでは、抜け出したプールス、フルサング、ブッフマンだけでなく、それを追走したライバルたちからも大きく遅れ、キンタナやポートよりも後ろの58秒差ゴール。もちろん、大雨に体調を崩したがゆえだったのだろうし、事実翌日はレース途中でリタイアしてしまったが、それでも直前レースでのこれは不安要素でしかない。

「究極の目標」は本当にもう目の前にまで来ている。それを決して掴み損ねないような走りを見せてくれるか。

 

 

82.ジョージ・ベネット(ニュージーランド、29歳)

クライマー  180cm、58kg  出場日数:30日

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2017年のツアー・オブ・カリフォルニア覇者。最近は「若手の登竜門」の1つとして、アラフィリップやベルナル、ポガチャルなどの総合優勝者を輩出しているこのレースの覇者として、彼もまた期待される存在であった。

事実、ヘーシンクとのダブルエースのような形で出場したその年のツールは、悪くない走りを見せていた。クリス・フルームですら大きく遅れた激坂ペイラギュードでは積極的なアタックも見せ、そのステージ終了時点で総合9位にまで登りつめた。しかしこの年のツールは途中リタイア。結果を残すことはできなかった。翌年のジロ・デ・イタリアでは総合8位。

今年はここまで、完璧とは言えない。ダウンアンダーではコークスクリューでプールスやポートのアタックについていけていたものの、ウィランガ・ヒルでは大きく遅れ最終的には総合12位。ツアー・オブ・カリフォルニアでも総合4位と、決して満足できる結果ではなかった。

今大会はあくまでもクライスヴァイクのアシストとして走ることになるだろう。総合成績を気にすることなく伸び伸びと走ってほしい。ただ不安定なクライスヴァイクが一度崩れれば、次にチャンスが回ってくるのはこの男だ。

 

 

83.ローレンス・デプルス(ベルギー、24歳)

クライマー  189cm、67kg  出場日数:24日

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誰もが驚いたに違いない。クイックステップからやってきた、この長身の若きベルギー人が、まさかこんなにも登れ、そして完璧なアシストを見せるなんて。今年のUAEツアーはログリッチェ劇場でもバルベルデ劇場でもなく、このデプルス劇場だったといっても過言ではない。

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だからこそ、ジロの早期リタイアは悔しくて仕方がない。最終的にはアシストの不足が目立ったログリッチェだったが、デプルスがいればそれでも少しは変わっていたのかもしれない・・・。

そんなデプルスが、ツールにはしっかりと復活し挑むことに。再び強烈なアシストを見ることができるのか。それとも彼自身がプロ初勝利を手に入れる瞬間を見られるのか。いずれにしても楽しみである。

 

 

84.ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、26歳)

スプリンター  177cm、70kg  出場日数:32日

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何だかんだ言って、昨年のツールで最強だったのはこの男だったと思っている。そしてツールで最強であることは、その年で最強のスプリンターであることを示すのに等しい。

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だからこそ今回、もう1人の最強であるところのエリア・ヴィヴィアーニとの激突がついに見られるのは嬉しい。最強vs最強。今年のツールはこの2人による一騎打ちとなるのか、それとも割って入る者が現れるのか。

弱点は、きょうび珍しいピュアッピュアなスプリンターであること。ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナの第2ステージでは、ミッチェルトン・スコットとアスタナ・プロチームの作戦にまんまとやられ、最終的に集団には戻れたものの、もはや対等なスプリントを行えるほどの体力が残っていなかった。

そもそも昨年のツールも、キッテルやガビリアらと共に、アルプスでタイムアウトに遭う悲劇を味わってもいる。

さすがに今回同じことが起きるとは思えないが、たとえ4勝程度できたとしても、この登りの適性のなさがゆえに、マイヨ・ヴェールを持ち帰ることは厳しいかもしれない。5勝もすれば、いけなくはないだろうが。

 

 

85.アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、25歳)

ルーラー  187cm、83kg  出場日数:36日

ノルウェーロード王者

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石畳・未舗装路・アップダウンへの適性が高い典型的なクラシックハンター。ゆえに今年のダンケルク4日間レース、ZLMツアーともに総合2位。いずれも、チーム随一のクラシックハンター、テウニッセンとのワンツーである。

その豊かな肉体で総合エースとスプリンターのためにひたすら平坦を牽き続けるのが彼の役目だ。あらゆる目標を同時に追い求めるユンボにとって、彼の存在は限りなく重要なものとなるだろう。

 

 

86.トニー・マルティン(ドイツ、34歳)

TTスペシャリスト  185cm、75kg  出場日数:43日

ドイツTT王者

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過去4度の世界王者を経験しているトップクラスのTTスペシャリスト。ドイツ国内選手権では8年連続9回目の王者に輝いた。

ただし純粋なTTでの能力は最近下降気味。その高い能力を勝利以外で活かすためにはチームTTでの貢献やエーススプリンターのためのアシストという側面が欠かせないが、総合でもスプリントでも低迷していたカチューシャではその真価が発揮できなかった。

しかし今回、強力な総合エースと最強クラスのスプリンターを抱えるこのチームに移籍してきたことで、その存在感が再び増してくることに。UAEツアーではチームTTでの勝利に大きく貢献し、クラシカルなコースや山岳すらも越えていく牽引力は、バレンシアナなどでもしっかりとフルーネウェーヘンを守っていた。

今回もクライスヴァイクとフルーネウェーヘンのために全力で仕事をこなす。また、ツール・ド・フランスでも過去2回、逃げ切り勝利を果たしている(山岳大逃げと、ゴール前3kmからの抜け出し)ので、そんな可能性にも期待したい。

 

 

87.マイク・テウニッセン(オランダ、27歳)

スプリンター  184cm、73kg  出場日数:41日

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サンウェブから今年移籍してきたばかりだが、早速フルーネウェーヘンの右腕となり、今年のフルーネウェーヘンの勝ちを支え続けている。 

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彼自身もクラシックライダーとしては一流で、今年はパリ〜ルーベ7位のほか、ダンケルク4日間レース及びZLMツアーで総合優勝。ピュアッピュアなフルーネウェーヘンに対し、多少のアップダウンを乗り越えられる彼の存在はチームにとっても第2の選択肢として重宝されうる。

 

 

88.ワウト・ファンアールト(ベルギー、25歳)

パンチャー  187cm、78kg  出場日数:18日

ベルギーTT王者

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シクロクロスで3回の世界王者を経験した男。昨年から本格的にロードに参戦し、いきなりのストラーデビアンケ3位。今年も引き続き3位を取ったほか、不運にも見舞われて最後は失速するも、パリ〜ルーベでも圧倒的な強さを見せつけていた。

そして、直近のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで見せた、個人TT能力の高さとスプリント力の高さ。個人TTに関しては国内王者にも輝いたことから本物であることを証明してみせた。

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今大会も、独走力とスプリント力を活かしたフルーネウェーヘンの準発車台としての役割、および第3ステージのような登りスプリントでの勝利を狙っていけそうな逸材だ。

 

 

総評

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クライスヴァイクの調子は決して良いとは言えないとは思う。その中で、ベネットとデプルスがどれだけアシストとしての力を発揮できるか。

スプリントではエースの実力だけでいえばヴィヴィアーニに匹敵する。テウニッセンとファンアールト、そしてマルティンとの連携はその発射台としてもかなりのレベルを期待できる。それでもドゥクーニンクの完璧すぎるアシスト体制にはまだ敵わないだろう。

そこを埋めるのはエースの役割である。果たしてユンボvsドゥクーニンクの戦いの行方は?

 

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