りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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【ツール・ド・フランス2019】ミッチェルトン・スコット出場全選手プレビュー

略号:MTS

国籍:オーストラリア

GM:シェイン・バナン

創設年:2011年

使用機材:スコット

 

ジロでは悔しい思いをしたこのチームも、今年はアダムが借りを返してくれそうだ。しかも、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで完璧なコンビネーションを見せてくれた、サイモン・イェーツとのセットで。昨年サイモンのブエルタ制覇を強力にアシストしたアダムへのお返しとばかりに。

山岳アシストがやや不足ではないかとの声も漏れ聞こえる。しかしユールイェンセンやインピーやトレンティンも、山岳や前待ちを含め十分に活躍可能。なによりもどこよりもチームワークの厚いこのチームが巻き起こす奇跡を、我々は楽しみにするべきだろう。

 

www.ringsride.work

 

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。

 

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101.アダム・イェーツ(イギリス、27歳)

クライマー 173cm、58kg 出場日数:40日

Embed from Getty Images

昨年もエースとして出場。しかし山岳では思い通りの走りができず、逃げ切りのチャンスとなった第16ステージでは、独走をしていた中で落車。結局、アラフィリップに勝利を奪われてしまう。

だが、今年はここまで絶好調。ティレーノ〜アドリアティコとボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでは総合2位、イツリア・バスクカントリーでは序盤に落車があって早々に総合争いから脱落したにも関わらず、総合5位。落車がなければどうなってたかわからない。

www.ringsride.work

今回のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではクイーンステージの大雨にやられて最終日リタイアとなったが、そのクイーンステージでは抜け出したフルサング、プールス、ブッフマンたちを追う10秒遅れの追走集団の中にピノ、マーティンと共に入り込む。他の総合優勝候補たちと比べても、決して悪くない仕上がりとなっていることは間違いない。

今大会はヘイグ、そしてサイモン・イェーツという強力なアシストの存在も。今年彼が総合表彰台の頂点に立ったとしても、何ら不思議ではないように思える。

 

 

102.ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、28歳)

ルーラー 187cm、78kg 出場日数:41日

オーストラリアTT王者

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今年の国内選手権でローハン・デニスを打ち破ってTT王者に。本人はクラシックのトレーニングばかり積んでいたから驚きの結果だったと語っていたが、その本命北のクラシックは落車によって棒に振ることに。その悔しさを、ツールでは晴らしてほしい。

ヘップバーンと並び、第2ステージの貴重な機関車役であると共に、強力な平坦アシストに。

 

 

103.ジャック・ヘイグ(オーストラリア、26歳)

クライマー 190cm、67kg 出場日数:26日

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オーストラリア若手育成プログラム出身。かつてはユアンなどスプリンター中心だったこのプログラムの、クライマー側での成功者の1人である。後輩はルーカス・ハミルトンで、今年のジロの彼の強さを見ても、その成果はしっかりと引き継がれているようだ。

2016年ブエルタのチャベス総合3位の際も傍らにいた。昨年のジロ、ブエルタでサイモンをサポートしたのもこの男だ。今年はアダムのためにサポートに徹すると決めたスケジュールを組み、直前のドーフィネでは先輩のホーゾン以上の走りを見せたことで、これを差し置いてのメンバー入りを果たした。決め手は、最終日のステージ2位だろう。勝てはしなかったが、十分に走れるコンディションなんだということをきっちりと示してみせた。

今回のミッチェルトン・スコットの布陣は山岳アシストが豊富とは言えない状況なので、ヘイグの存在、働きの重要性は非常に高まることだろう。

 

 

104.マイケル・ヘップバーン(オーストラリア、28歳)

TTスペシャリスト 186cm、77kg 出場日数:32日

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TTスペシャリスト大国のオーストラリアで2014年に国内王者に。以後出場回数は少ないが、出場すると必ず上位に入る。オセアニアTT王者となったことも。

今年のティレーノ〜アドリアティコでのチームTTにも参加して勝利に貢献した。今回も、第2ステージでアダムが他のライバルたちに差をつけるうえで重要な役割を果たすだろう。もちろん、その他の平坦アシストにおいても。

 

 

105.ダリル・インピー(南アフリカ、35歳)

スプリンター 181cm、70kg 出場日数:29日

南アフリカロード、TT王者

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ツアー・ダウンアンダー2連覇を成し遂げた、今なお進化し続ける一流パンチャー。だが、昨年は1勝していたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、今年は良いポジションからスプリントを開始していながら伸びを見せられずに敗北するという結果に。今大会の第1目標はトレンティンの発射台。もしくは、ダウンアンダーでも見せている登りの力を活かした山岳アシストにも使える可能性が。

TT能力の高さは、チームTTや平坦アシストにも活用できるだろう。

 

 

106.クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、30歳)

パンチャー 183cm、73kg 出場日数:46日

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なかなか判定しづらい脚質をもつ。山岳ステージで終盤までアシストする姿はあまり見かけないが、ジャパンカップやストラーデビアンケやツール・ド・ワロニーでの好成績を見るに、重めではあるがパンチャータイプと言えそうだ。一方で昨年のツール・ド・スイスの山を越えての逃げ切り勝利や、国内選手権ITT王者の経験などから、独走力の高いルーラーとしての役割も十分に期待できる。登れるルーラー。

故に画面に映って目立つ場面は少ないが、昨年のジロ、そして今年のジロもサイモンのために尽くしていた。登りだけでなく平坦もこなせるため、目立たなくともエースとしては非常に助かる存在だろう。今年のアダムにとっても貴重な勝利のためのピース。彼の走りにもしっかり注目しておきたい。 

 

 

107.マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)

スプリンター 179cm、74kg 出場日数:38日

ヨーロッパロード王者

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ジロ1勝、ツール2勝、そして2年前にはブエルタで4勝している男。ツールではサガンを打ち破っての勝利も。多少の登りも気にせずこなせるパンチャータイプのスプリンターだ。

今年の序盤も絶好調だった。ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ第2ステージではチーム一丸となってフルーネウェーヘンの振い落としを成功させ、最後のブアニとの一騎打ちを制した。

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続くアンダルシアでは2勝。絶好調だったが、その後はやや沈みがち。スイスでも、得意の登りスプリントでもサガンとヴィヴィアーニの2強に太刀打ちできていない様子を見せていた。

ただ、この男の魅力はスプリントだけではない。むしろ、そのスプリンターとは形容しづらいほどの登坂力を活かした、山岳ステージでの前待ち作戦などにも十分期待できる。アスタナのコルトニールセンや、モビスターのホセホアキン・ロハスのような。

今大会のミッチェルトン・スコットのロースターは、登りアシストがやや不足しているのではないか?という疑念があちらこちらで漏れていた。ただ、このトレンティンやインピーが、それを覆すほどの働きを見せてくれれば、その疑念をしっかりと払拭できるはずだ。

チーム・「ワンフォアオール」の真骨頂を見せてみよ!  その鍵を握る存在がこのトレンティンだ。

 

 

108.サイモン・イェーツ(イギリス、27歳)

クライマー 172cm、58kg 出場日数:41日

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昨年ブエルタ総合優勝者。しかし今年はシーズン序盤からイマイチ上りきらない調子を抱え、結果としてジロは散々な形で終わった。

が、その借りは、今年はアダムが返してくれるはず。昨年、ツールの悔しさを、サイモンのブエルタ総合優勝を強力にアシストするという形で晴らしてみせたアダムのように。

今度はその恩返しをサイモンが果たす番だ。今年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでの、最終日兄弟タンデム走行は非常に強力だった。今年もそれを見せつけて、1人1人では調子にムラがあるかもしれないけれど、兄弟揃ったら最強なんだ、というところを見せてやれ!

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総評

 

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山岳アシストへの不安の声が漏れるが、しかしサイモンとヘイグの存在は十分期待ができるレベル。そこにトレンティンやユールイェンセンが効果的に機能すれば問題ないだろう。

トレンティン、インピーのコンビはスプリントでも期待できるポテンシャルを備えてはいるが、しかし強豪揃いのツールで勝てるかといえば不安も。それよりはまず、アダムの総合優勝に全力を傾けてほしいというのが正直な思いだ。

 

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