りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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【ツール・ド・フランス2019】モビスター・チーム出場全選手プレビュー

略号:MOV

国籍:スペイン

GM:エウゼビト・ウンスエ

創設年:1980年

使用機材:キャニオン

 

今年はキンタナとランダのダブルエースで・・・という予定が、バルベルデがジロを回避したため、再びトリプルエースに。キンタナは相変わらず調子上がらずで、果たして一体誰がエースになるのか。

タレントの揃い方はイネオスやアスタナにも匹敵する。あとはエースたちのボタンの掛け違えがないようにしてもらうだけ。ジロでは大きな成果を出しただけに、続く結果を求めたいところ。

 

www.ringsride.work

 

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。

 

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61.ナイロ・キンタナ(コロンビア、29歳)

クライマー  167cm、59kg  出場日数:37日

Embed from Getty Images

2010年にツール・ド・ラヴニール総合優勝。2012年からモビスターで走り、2013年に初出場のツールで区間1勝・総合2位・山岳賞を獲得。わずか23歳でのこの実績に、誰もが彼の近い未来でのツール総合優勝を確信していた。

翌年はジロ・デ・イタリアで総合優勝。満を持してエースとして臨んだ2015年のツールでは、個人タイムトライアルの距離が非常に短かったことも味方して、クリス・フルームに1分12秒差にまで迫っての総合2位。最終山岳のラルプ・デュエズではバルベルデやアナコナとのコンビネーションを発揮し、チーム・スカイを苦しめた。

2016年にはブエルタ・ア・エスパーニャも制覇。ヨーロッパ外で初めての3大グランツール制覇者への期待もかけられたが、その後は急速に調子を落とす。

勝負所では常に遅れる姿を見せ、個人タイムトライアルでは致命的にタイムを失う。2018年は2012年以来となるグランツール総合表彰台のない年となり、もはやツール総合優勝候補者として名前が挙がることも当たり前ではなくなってきてしまった。

今年は年初のブエルタ・ア・サンフアンにて盟友アナコナの総合優勝を支えるべく巧みなアシストをしてみせた。パリ〜ニースでは苦手なはずの横風を克服して総合2位にまで登りつめた。しかし直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、クイーンステージで積極的な走りを見せるも結局は失速して逆にタイムを失うなど噛み合わず、総合9位。今回も、期待よりも不安の方が大きい。

早過ぎた天才。しかし、今ようやく、最も結果を出しやすい年代に入りつつある。彼が強くなければ、ツールも面白くならない。あくまでも再起を待ち続ける。

 

 

62.アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)

オールラウンダー  178cm、61kg  出場日数:35日

ロード世界王者

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プロ生活18年目。積み上げてきたプロ勝利数は126。そのうちフレーシュ・ワロンヌでは5勝、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは4勝、グランツールでの表彰台は8回。そして、過去6回表彰台に登った世界選手権では、昨年ついにその頂点に立つ。まさに、この20年を常に世界のトップで走り続けてきた、時代の中心にいた男である。

そんな彼が、今年は意外にも大人しい。UAEツアーでは相変わらずの強さを見せつけて1勝したが、出るレース出るレース勝ち続けてきた昨年・一昨年と比べるとやや物足りない。アルデンヌも取れず、ジロ・デ・イタリアも直前の怪我で出場回避となった。

彼曰く、「アルカンシェルはモチベーションを低下させる」という。

バルベルデ「アルカンシェルはモチベーションを低下させる」 | Bike News Mag

一方で、史上最も軽量で臨むことになるという今回のツール。キンタナの不調、ランダはジロからの連戦、ということを考えたときに、キンタナに次ぐセカンドナンバーを与えられたバルベルデが、今回のツールを狙ってくる可能性は充分にある。

何しろ、あらゆるタイトルを手にしてきた彼が、いまだ手に入れていない数少ないタイトルがこのツール制覇であるのだ。

2021年の引退をほぼ決めている彼にとって、これが最後の大きな戦いとなるかもしれない。

 

 

63.アンドレイ・アマドール(コスタリカ、33歳)

オールラウンダー  181cm、73kg  出場日数:44日

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2009年にケース・デパーニュでプロデビューを果たして以来、このチーム一筋。勝利はたったの2つだけだが、2015年のジロではエースを務めて総合4位。2016年には一時的にマリア・ローザも着用した。

バランスの取れた登坂力と独走力を兼ね揃え、グランツールでのエースアシストの定番としてチームからの信頼も厚い。今年もジロに続きツール参戦。現状のところブエルタも参戦を予定しているとのことで、チームは彼を酷使し過ぎである。

この献身的なアシストによる、感動のツール初勝利というのも、見てみたいが。

 

 

64.イマノル・エルビティ(スペイン、36歳)

ルーラー  189cm、75kg  出場日数:40日

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2016年にはロンド・ファン・フラーンデレン7位、パリ〜ルーベ9位という成績を叩き出し、スペイン人としては珍しいクラシックスペシャリスト!として期待されたが、以後はそこまで。むしろチームのなくてはならない平坦アシストとして、2010年から連続してツールに参戦している。

独走力も高く過去にはブエルタで逃げ切り勝利も。チームTTでも力を発揮してくれそうだ。

 

 

65.ミケル・ランダ(スペイン、30歳)

クライマー  173cm、60kg  出場日数:38日

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トリプルエースの一角。しかし悲しい哉、本人はアシストとして働くときの方が力を発揮しやすい。2015年のジロ・デ・イタリアではエースのファビオ・アル以上の実力を見せながら、最終日に自らのステージ優勝のチャンスを捨ててアルのために待った。スカイ時代の2017年にも、ペイラギュードの激坂でクリス・フルーム以上の走りを見せた。今年のジロも、リチャル・カラパスの総合優勝を支えながら自らも総合4位。エースとして走るときはイマイチながら、アシストとして走ったときの彼はかなり強い。

だから今回、ジロからの連戦ということで、基本的にはキンタナやバルベルデを支える役目を担うことになると予想されている。事実そのように機能すればこれほど心強いアシストもおるまい、といったところだが、一方でキンタナの不調やバルベルデの年齢とツールとの相性の悪さを考えると、ランダが一番可能性あるのではと思ってもしまう。

昨年も、第9ステージでの落車がなければもっといけてたという思いはある。

果たして、3週間の中で彼の立場はどうなる?

 

 

66.ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、30歳)

TTスペシャリスト  180cm、67kg  出場日数:35日

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モビスターのキリエンカともいうべきカストロビエホまでもがスカイ(イネオス)に取られた今、その役割を担う存在。3年ぶりのツール出場。

ランプレ・メリダ時代にはブエルタで逃げ切り勝利を果たしたこともある。あの、ユーロップカー時代の新城がシカールと共に逃げ、彼のために決死の集団先頭牽きを行なった日だ。それが国内選手権以外での唯一の勝利となる。

直近のヨーロピアンゲームスの個人TTでもキリエンカに次ぐ2位。チームTTでは要の存在となる。

 

 

67.マルク・ソレル(スペイン、26歳)

オールラウンダー  186cm、68kg  出場日数:35日

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2015年ツール・ド・ラヴニール覇者。その才能は見事開花し、昨年のパリ〜ニースでは逆転総合優勝を果たした。ツールではトリプルエースを守るアシストとして見事な働きをしてみせており、今回もアマドールと並びエースアシスト筆頭である。山岳ステージで逃げに乗っていたら、前待ち作戦を強く警戒すべきだろう。

今年は昨年と比べあまりリザルトを残せていないのは不安材料。本番までにきっちりとコンディションが整えられるか?

 

 

68.カルロス・ベローナ(スペイン、27歳)

クライマー  186cm、68kg  出場日数:39日

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昨年まではミッチェルトン・スコットに所属していた山岳アシスト。今年もカタルーニャやドーフィネで積極的に逃げに乗り、前待ち作戦を敢行していた。

大きな実績はなく警戒されにくいため、前待ち要員としては使いやすい。あとは合流した際にきっちりと目を瞠るような結果を出すこと。カタルーニャのときも、キンタナを前待ちしたけれど結局すぐ捕まってしまったしね。

今回初ツール。実績を残し、今後のキャリアを大きく羽ばたかせていきたい。

 

 

総評

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トリプルエースとそれを支える山岳アシストの豊富さは魅力。ただしトリプルエースはいずれもそれなりの不安の嘘を抱えており、突き抜ききれない。トリプルエースの一角がアシストに回るなどすれば、かなり安定しそうだが。

また、平坦アシストはオリヴェイラとエルビーティが務めるが、やや不足感はあるかも。横風には注意を。

 

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