略号:GFC
国籍:フランス
GM:マルク・マディオ
創設年:1997年
使用機材:ラピエール
ジロ・デ・イタリアでの2年間の修行期間を終え、ついにこのチームはピノによるツール制覇に向けて本気の挑戦を始める。アルノー・デマールすら回避させ、ただピノのためだけのチームを作り上げた。
山岳アシストも、平坦アシストも、バランスよく揃っている。もちろん、イネオスだったり、アスタナだったりといった最強チームと比べればいずれも一歩届かない。最後はエースの地力が試される。ティボー・ピノ。その人生最大の戦いが始まる。
- 51.ティボー・ピノ(フランス、29歳)
- 52.ウィリアム・ボネ(フランス、37歳)
- 53.ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
- 54.シュテファン・キュング(スイス、26歳)
- 55.マチュー・ラダニュ(フランス、35歳)
- 56.ルディ・モラール(フランス、30歳)
- 57.セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、30歳)
- 58.アントニー・ルー(フランス、32歳)
- 総評
※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。
※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。
※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。
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51.ティボー・ピノ(フランス、29歳)
クライマー 180cm、63kg 出場日数:35日
22歳のとき、初出場のツールでいきなりの逃げ切り勝利を果たした。興奮するマディオ監督の声援と共に、彼が近い将来、ツールを制するフランス人となることを多くの人が夢見たに違いない。それを証明するかのように、2014年にはツール総合3位。ロマン・バルデも総合6位に入っていたが、当時はバルデよりもピノにこそ注目が集まっていた。
それが、彼を苦しめることになった。言ってしまえば彼は、プレッシャーに押しつぶされたのだ。2015年ツールは度重なるトラブルで遅れに遅れ、ステージ優勝のチャンスも、下りでの落車によって自ら潰してしまった。
しかし、その年の最後の山岳ステージ、ラルプ・デュエズ頂上フィニッシュで見事優勝。その後は、バルデが新しくフランス期待の星となったことで、少しずつ彼に対するプレッシャーが薄らいでいったようだ。2017年からはジロにフォーカスを当てて「武者修行」。17ジロは総合4位、18ジロは最終日にリタイアしてしまうが、それまでは総合3位と調子は良かった。2018年は他にもブエルタ区間2勝、イル・ロンバルディア優勝など、伸び伸びとした走りでこれまでにない成績を叩き出していった。
そして今年、満を持して彼は再びツールの舞台に立つ。ロードレーサーとして最も成績を出しやすい、成熟した29歳という年齢に達してもいる。チームも今年は完全なるピノシフト。デマールもそこは理解してくれたようだ。
そして何よりも彼自身がやる気に満ち溢れている。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、かなり積極的にレースを動かそうとしていた。フランス選手権でも同様だ。
もちろん、その動きがなかなか決定的なものにならないところが彼らしくはあるのだが。それでも、今年のピノは、きっと大きな結果を出してくれる。
52.ウィリアム・ボネ(フランス、37歳)
ルーラー 185cm、78kg 出場日数:25日
2011年のプロコンチネンタル時代からFDJに所属。実に16回ものグランツールに出場している大ベテラン。かつてはツールで区間5位に入り込みキッテルやカヴェンディッシュと鎬を削ったときもあったが、最近はもちろん、ルーラー役に徹する。
今回は3年ぶりのツール出場。求められるのは地味ながらも重要な平坦アシストと、キャプテン役としてチームの精神的支柱となること。
53.ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
クライマー 173cm、53kg 出場日数:35日
2016年ツール・ド・ラヴニール覇者。そして昨年あたりから、ピノの強力なアシストの筆頭として台頭してきた。
今年は彼自身のエースとしての力量も発揮されつつある。UAEツアーでは誰よりもプリモシュ・ログリッチェのアタックに反応し、総合3位。
ツール・ド・ロマンディでも総合5位と、ピノに次ぐセカンドエースと言っても良いくらいの成績だ。
フランス選手権でも終盤まで先頭で動いていたように思うが、最後はメカトラで脱落。残念だったが、調子は悪くないはずだ。
ドーフィネではあまりピノの傍にいられなかったのが気になる。3週間の中でコンディションをしっかり整え、最後まで彼を支えてくれ。
54.シュテファン・キュング(スイス、26歳)
TTスペシャリスト 193cm、83kg 出場日数:38日
スイスTT王者
3年連続のスイスTT王者に輝いた男。今年のFDJの新加入選手3名はすべてBMCレーシングチームからの獲得であったが、その中でも目玉とも言うべき存在である。
当然、チームTTでは最も重要な役割を担うと共に、ポーの個人TTでは優勝候補の1人。そして今年のツール・ド・ロマンディのように、独走力を活かした逃げ切り勝利も狙っていける。
ただのルーラーではない。チームのもう1人のエースたる活躍が期待できる選手だ。
55.マチュー・ラダニュ(フランス、35歳)
ルーラー 182cm、73kg 出場日数:38日
2006年からFDJ一筋。10年近く前にはダンケルク4日間レースの総合優勝など、クラシックに強いタフな肉体を持ち合わせている。最近ではパリ〜カマンベールやGPブルーノ・ベヘッリなどややパンチャー向けのレースでも上位に入っている。
果たす役割は映像にもあまり映らないような地味なものでありながらも、今回も黙々とエースたちのために仕事をしてくれることだろう。
56.ルディ・モラール(フランス、30歳)
クライマー 178cm、62kg 出場日数:33日
かつて5年間コフィディスに所属。2017年から現チームへ。
昨年のパリ〜ニース第6ステージでは、1級山岳を越えて総合エース級の選手たちばかりが残った16名の小集団の中から残り1.5㎞でアタック。これに誰もついていけず、そのまま逃げ切り勝利を果たした。その年のブエルタでは総合14位、今年のパリ〜ニース総合7位と、総合エース候補になりうる脚力を発揮しつつある。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、第6ステージでピノの傍にいることのできた唯一の人物でもある。第7、8は遅れてしまったが、他のFDJの選手も同様で、少し不安を感じてしまったチーム体制の中では期待できる存在であった。ツールでは盤石の構えで、ピノを助けてやってほしい。
57.セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、30歳)
クライマー 178cm、64kg 出場日数:35日
スイスロード王者
ピノ親衛隊の1人。ゴデュ覚醒前はピノ側近の第一人者であったし、それは今回も変わらないだろう。もちろん彼自身も強い。ピノがリタイアした2016年ツールでは総合14位。区間4位まで到達したこともある。
今回はチームメートのモラビートからナショナルジャージを引き継いでの参戦。母国に近いアルプスの地で、そのジャージを輝かせながらピノのために前を牽き続ける彼の姿を見てみたい。
58.アントニー・ルー(フランス、32歳)
パンチャー 189cm、70kg 出場日数:31日
元フランスチャンピオン。彼もまた2008年からFDJ一筋の選手である。
アルデンヌ・クラシックなど丘陵系のレースを得意としており、平坦をボネとラダニュで守る一方、アップダウンの激しいステージではこのルーがチームを守ることになるだろう。
TT能力も高く、チームTTでの活躍にも期待ができる。
総評
エースの実力、山岳アシスト、平坦アシスト、すべてが高いレベルでまとまっており、バランスの取れた編成だ。
一方、決め手に欠ける。いずれの項目も、最強チームには一歩及ばない。その中であくまで頂点を目指すならば、妥協せず、中途半端を捨て、ただ一点、ピノの総合優勝に向けてチーム全体を賭す覚悟が必要となるだろう。
それはこのチームにとってもツールでは初めての試みかもしれない。しかしそれらがすべてうまく噛み合ったときの化学反応が実に楽しみなチームでもある。可能性は十分だ。
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