りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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【ツール・ド・フランス2019】ドゥクーニンク・クイックステップ  出場全選手プレビュー

略号:DQT

国籍:ベルギー

GM:パトリック・ルフェーヴル

創設年:2003年

使用機材:スペシャライズド

 

ベルギーが誇る北のクラシック最強軍団にして、最強トレインを持つ最強スプリンターズチーム。昨年の年間勝利数は73。今年も現時点で41勝。絶好調は終わらない。

そんなクイックステップの今年のツール最大の目標はエリア・ヴィヴィアーニによるスプリント勝利。そのために、直前のツール・ド・スイスで彼を支えたメンバーをフルで投入。代わって不出場の憂き目に遭ったのはフィリップ・ジルベール。彼もまた、出れば確実に勝利を狙えるほどのタレントではあるが、その参戦すら捨ててまで、チームは今年、ヴィヴィアーニに懸ける。

そしてもう1つの軸が、若手スペイン総合系ライダー、エンリク・マス。ただ、今回は彼のためのチームではない。まずは、彼にとって初めてとなるツールで存分に経験を積むことだ。

そして、現時点で世界ランキング首位に立つ男、ジュリアン・アラフィリップ。

昨年は驚きの山岳賞を手に入れた彼が、今年もまた、サプライズを用意してくれるかもしれない。

 

ジロではまさかの未勝利に終わった「常勝軍団」クイックステップ。

今回のツールは、飢えに飢えた「ウルフパック」が盛大に暴れまわることだろう。

 

www.ringsride.work

 

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

 

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21.ジュリアン・アラフィリップ(フランス、27歳)

オールラウンダー 173cm、62kg 出場日数:37日

Embed from Getty Images

現時点での2019年シーズン世界ランキング首位。すなわち、現代の最強の男である。

ステージ優勝、山岳賞、ポイント賞、総合成績以外ならいずれも狙っていける才能を持つ。おそらくチームの中ではかなり自由な立場を許されることになるだろう。直前のドーフィネでの走りを見るに、今年も昨年と同じく、ステージ優勝と山岳賞にフォーカスしてきそうだ。

ただ、ドーフィネでの走りは決して「完璧」ではなかった。第6ステージ、本当に強いときのアラフィリップであれば、デマルキとミュールベルガーを登りで突き放せたり、少なくとも最後のスプリントであれほど僅差の勝負になることはなかったであろう。

ドーフィネはまだまだ本番の3週間前ということで、力をセーブしていただけとも考えられる。それとも・・・。

また、山岳賞狙いはあくまでも予想。本気で、狙ったものはなんでも取れる才能を持つ男だけに、どんなサプライズを用意しているか、予想はつかない。

 

 

22.カスパー・アスグリーン(デンマーク、24歳)

オールラウンダー 192cm、75kg 出場日数:35日

デンマークTT王者

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この男には今年、常に驚かされ続けてきた。最初の驚きは北のクラシック。その最高峰たるロンド・ファン・フラーンデレンにて、不調のジルベールらに代わって常に先頭で積極的にレースを動かし、終盤には集団から抜け出して、単独での2位ゴールを果たした。

次なる驚きはツアー・オブ・カリフォルニアであった。クライマー同士の戦いの舞台となるはずのサウスレイクタホにて、まさかのステージ優勝。そのままマウント・バルディでも上位に食い込み、最終的にも総合3位。オールラウンダーの仲間入りを果たした。

そして第3の驚きは、ツール・ド・スイスにおける、エリア・ヴィヴィアーニのトレイン要員としての活躍である。元より高速巡航能力に長けた男ではあった。そこに加えてスプリント力も兼ね揃えており、クイックステップの最強トレインを最初に牽引するには十分すぎる能力を備えていた。

というわけで今大会も、まずはヴィヴィアーニのためのトレイン要員として活躍が期待されることだろう。加えて、平坦牽引要員、さらには、その登坂力を活かし、山岳ステージでの逃げ切りや、場合によってはマスの山岳アシストもこなせそうな予感がする。

まさにオールラウンダーな男。今回のツールで、4度目の驚きを我々にもたらしてくれるかもしれない男だ。

 

 

23.ドリス・デヴェナインス(ベルギー、36歳)

パンチャー 176cm、64kg 出場日数:43日間

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ドゥクーニンクの平地系の名アシストがティム・デクレルクだとしたら、山岳系の名アシストがこのデヴェナインスだ。シーズン冒頭のカデルレースでは見事なアシストぶりを発揮してくれた。

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直前のツール・ド・スイスでもマスの側近として活躍し、最終日の登りで彼のアタックを生み出すための発射台の役割を果たした。

マスがこのツールで成功しようと失敗しようと、彼だけはその傍らに常にいてあげてほしい。そして彼に輝けるチャンスが訪れた時、確実にこれを支えられるように。

 

 

24.イヴ・ランパールト(ベルギー、28歳)

ルーラー 180cm、75kg 出場日数:48日

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自分の記憶違いでなければ、当初の出場予定メンバーには入っていなかった気がする。それが突然の選出に繋がったのは、直前のツール・ド・スイスでのリードアウトの大活躍ゆえにだろう。残り700〜800mでアスグリーンから先頭を引き継ぎ、残り300〜400mまで他のライバルチームを全く寄せ付けない超高速牽引で有利な状況を作り上げた上で、リケーゼ、モルコフの発射台にバトンタッチをする。まるでお手本のようなトレインだった。

この局面においては何よりも高速巡航能力、すなわちTT能力が重要になる。その点、ツール・ド・スイス最終日の個人タイムトライアルで優勝したランパールトは完璧なコンディションであった。選ばれない理由はない。

もちろん、彼の本職はクラシックハンター。スプリントが狙えないような丘陵ステージでのステージ勝利を狙ったり、ゴール前だけじゃない平坦部分での牽引を担ったりと、役割は多彩だろう。

 

 

25.エンリク・マス(スペイン、24歳)

クライマー 177cm、61kg 出場日数:29日

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昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで突如覚醒し、あれよあれよという間に総合2位にまで登りつめた男。アルベルト・コンタドールの後継者と呼ばれ、ダニエル・マーティンを失ったチームの総合を支える存在となる。

しかし、コトはそう単純ではない。今シーズンはここまで、期待度の高さと比べると満足できない結果しか得られていない。直近のツール・ド・スイスでも、アグレッシブな走りは忘れていないが、それが最後まで続かず失速してしまう。

チームとしても、今大会はあくまでもヴィヴィアーニの勝利が最優先。純粋なマスの山岳アシストはデヴェナインスくらいだ。アスグリーンがもしかしたら手伝ってくれるかもしれないくらい。

よって、今回のツールはブエルタのときのような躍進は望むべくもないだろう。まずは経験。プレッシャーを感じないようにして自由に走りつつ、あわよくばステージ優勝を狙えれば上出来だ。

 

 

26.ミケル・モルコフ(デンマーク、34歳)

スプリンター 183cm、69kg 出場日数:49日

デンマークロード王者

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クイックステップ入りは昨年から。しかしそんな風には思えないほど、もはやこのチームにはなくてはならない最強の発射台である。

その技術はもはや芸術のレベルで、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースやツール・ド・スイス第4ステージでのリードアウトの巧みさは、土井氏によって丁寧に解説されている。

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また、ヴィヴィアーニだけでなく、シュヘルデプライスではヤコブセンのために同じく完璧なリードアウトを見せてくれている。

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今回のツールでも最終発射台として活躍してくれるはずだ。彼らがいるからこそ、ヴィヴィアーニは最強になれる。ツールでもそれが機能することを証明してみせてくれ。

 

 

27.マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、36歳)

スプリンター 175cm、68kg 出場日数:46日

アルゼンチンロード王者 

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彼もまた最強発射台の1人だ。とくにその「運び屋」としての能力が高く、昨年のツールでのガビリアの2勝は彼によってもたらされたと言っても過言ではない。

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また、山岳適性が比較的高い選手でもあり、今年のツアー・オブ・カリフォルニアでも、ファビオ・ヤコブセンが対応できないアップダウンステージではエーススプリンターを務め、上位に入っていた。昨年ツールでのガビリアリタイア後のエースでもあった。

今大会も、途中でヴィヴィアーニが脱落した日は、代わってスプリントに挑むことになるかも。

 

 

28.エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、30歳)

スプリンター 178cm、67kg 出場日数:49日

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昨年はジロ4勝、ブエルタ3勝を記録し、同一年に2つのグランツールで最多勝を記録する「ダブルツール」を、2012年のカヴェンディッシュ以来6年ぶりに達成した選手となった。

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そんな彼が、満を持してツール参戦。ジロ・デ・イタリアでは斜行判定による降格以降、うまく噛み合わない走りが続いて1勝もせずジロを去るという悔しい結果を味わったが、ツール・ド・スイスでは復活の2連勝。

しかも登りスプリントでサガンを圧倒して。

 

それを実現させたのが、クイックステップの最強のトレイン陣。今回はスイスで成功した面子をまるっともってきて、完全なるヴィヴィアーニ体制を作り上げた。マスのアシストや、ジルベールを犠牲にして。

ゆえに、責任は重大だ。初日でのツール初勝利&マイヨ・ジョーヌは当然として、最低でも3勝(そしてシャンゼリゼ)は持ち帰りたいところ。

ディラン・フルーネウェーヘンとの数少ない直接対決の機会でもある。果たして最強はどっち?

 

 

 

 

 

 

総評

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最強トレインによるスプリントからの勝利に一点集中。ただし、アラフィリップやマス、あるいはアスグリーンによる山岳エスケープからの勝利も十分に考えられるだろう。

山岳で盤石なトレインを組んで総合を戦う、というのは想定されていない。マスは総合を狙うならば、ある程度単騎での戦いを強いられる。

 

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