りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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【ツール・ド・フランス2019】ボーラ・ハンスグローエ 出場全選手プレビュー

略号:BOH

国籍:ドイツ

GM:ラルフ・デンク

創設年:2010年

使用機材:スペシャライズド

 

ペテル・サガンによるスプリント、そしてエマヌエル・ブッフマンによる二頭体制。サガンは今シーズン不調が叫ばれてきたが、直近のスイスでは調子を取り戻してきた印象。目立った発射台はいないが、オスやブルグハートなど頼れる名ルーラーたちがこれを強力にサポートする。

そしてブッフマンは実質コンラッドとのダブルエース体制で臨めそう。こちらも、最終局面まで残って手助けしてくれる山岳アシストはあまりいなさそうだが、2人のコンビネーションがうまく発揮できれば、昨年のユンボ・ヴィズマのような結果を生み出させそうな気がする。

そして、3人目のエースともいうべきマキシミリアン・シャフマンの存在。サガンのためのスプリントアシストもブッフマンのための山岳アシストもこなせそうで、また彼自身の山岳ステージ逃げ切り勝利も狙えそう。ジロに続くこのチームの大活躍を見ることはできるか。

 

www.ringsride.work

  

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。

 

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11.ペテル・サガン(スロバキア、29歳)

スプリンター 184cm、73kg 出場日数:43日

Embed from Getty Images

例年と比べ不調と言われ続けていたサガンも、カリフォルニア、そしてスイスと得意のレースを経るうちに調子を取り戻し、その表情もいつものサガンに戻りつつある。完璧な状態でツールに臨むことができそうだ。目指すはもちろん、7回目のマイヨ・ヴェール。

とはいえ、不安がないわけではない。北のクラシックから続く、「間違いなく強いのに、最後の最後で決め手を失う」流れは、今回のスイスでも繰り返されたと見ることもできる。ヴィヴィアーニとドゥクーニンクが強かったのもあろうが、それでも得意の登りスプリントで歯が立たなかったのは気になるところ。

マイヨ・ヴェールの最有力候補なのは間違いない。が、もしかしたら、4年ぶりの勝利なしの緑ジャージ、という可能性はあるかも。

 

 

12.エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、27歳)

オールラウンダー 181cm、62kg 出場日数:29日

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現チームのプロコンチネンタルチーム時代からの叩き上げ。2015年にはラファル・マイカと逃げたツールマレー峠越えで区間3位に入った。

2017年にはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで新人賞獲得。2018年にはイツリア・バスクカントリー総合4位やクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合6位など着実に成績を伸ばしており、不調のマイカに代わるチームのエースとしての存在感を高めつつあった。

そして今年。シーズン開幕のマヨルカ・チャレンジからいきなり勝利を挙げた勢いをそのままに、UAEツアー総合4位、イツリア・バスクカントリー総合3位、ツール・ド・ロマンディ総合7位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合3位と、昨年以上のハイコンディションでここまで来ている。

そのドーフィネでは、クイーンステージで総合優勝者フルサングと共にアタックし、最終的にはステージ優勝にはならなかったものの、他のライバルたちに対しリードを得ることに成功した。タイムトライアルにおいても総合勢の中でも上位でフィニッシュしており、これもまた彼の武器になる要素となった。

ということで、今大会はかなり自信を持って臨めるはずのブッフマン。ただし、まだまだグランツールでの実績があるわけではないのも事実で、前半好調でも後半に崩れる可能性もある。落ち着いて冷静に対応していき、まずは総合TOP10を目指したい。

 

 

13.マークス・ブルグハート(ドイツ、36歳)

ルーラー 189cm、75kg 出場日数:25日

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ゴール前ではなく、その前の段階で働くサガン親衛隊の1人。平坦はもちろん多少の登りも問題なくこなし、ミラノ〜サンレモのポッジョ・ディ・サンレモなどでもサガンが勝負しようと考える重要ポイントまできっちり運び上げる。信頼の厚さは、サガンと同じく2021年まで契約が残っていることからも伺える。

今回も、見えづらいところでサガンを守り続けているはずだ。たとえば第3ステージ、終盤のアップダウンにピュアスプリンターたちはたまらずに脱落していくだろうが、そこでサガンが残れたとしたら、きっとこの男の働きがあるはずだ。

 

 

14.パトリック・コンラッド(オーストリア、28歳)

クライマー 180cm、65kg 出場日数:39日

オーストリアロード王者

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彼もまたブッフマンと同様に、プロコンチネンタルチーム時代からの叩き上げであり、ここ2〜3年で急成長を遂げつつある選手である。

昨年はパリ〜ニースとジロ・デ・イタリアで総合7位と、ブッフマン以上の成績を残している。今年はイツリア・バスクカントリー総合9位など、ブッフマンよりは劣る結果にはなってしまったものの、ツール・ド・スイスでは総合3位。すなわち、ブッフマンとはダブルエース体制と言っても過言ではない関係に。

いわば昨年のログリッチェとクライスヴァイクのような関係で、うまく機能すれば他の総合優勝候補たちを抑え込むことも十分に可能。そしてこのチームはチームワークの高さも魅力的なので、きっとうまくいく気がしている。

 

 

15.グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、25歳)

パンチャー 180cm、64kg 出場日数:33日

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思い切りの良いアタックを得意とするアグレッシブアタッカー。昨年のピンクバンクツアー第6ステージでは、ウェレンスやスティバルらで構成された小集団から残り1.2㎞で抜け出して逃げ切り勝利。過去にはルント・ウム・ケルンでの逃げ切り勝利もある。

直近のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第6ステージでは、最後の2級山岳をデマルキを突き放しながらアラフィリップと共に踏破。最後のスプリント勝負でも、アラフィリップに対してごく僅かの差にまで迫った。

今大会はクライマーとして、ブッフマンやコンラッドのアシストに徹することがメインワークだろう。しかしチャンスがあれば勝利を狙っていける才能は充分にある。

 

 

16.ダニエル・オス(イタリア、32歳)

ルーラー 190cm、75kg 出場日数:38日

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リクイガス時代からサガンのチームメート。そのあとはしばらくBMCに籍を置き、グレッグ・ファンアーフェルマートのパリ〜ルーベ制覇における重要な役割を果たした。

そこでサガンからの熱いラブコールを受けて再び彼のチームメートに。そして早速、そのパリ〜ルーベ制覇を助ける。まさに名宰相。彼もまた、2021年まで契約を残すサガン親衛隊の1人である。

今年もダウンアンダー、ティレーノ〜アドリアティコ、春のクラシック、カリフォルニア、スイスと常にサガンと行動を共にする。残念ながらルーベでは落車リタイアしてしまったがしっかりと復帰し、今回もサガンのマイヨ・ヴェールを支えてくれそうだ。

特徴的なヘアスタイルが、プロトンの中での識別可能性を高めてくれている。ロックな男。

 

 

17.ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、27歳)

ルーラー 182cm、70kg 出場日数:29日

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2017年、ボーラ・ハンスグローエとして初めて出場したジロ・デ・イタリアの第1ステージでいきなりのサプライズ逃げ切り勝利。本人にとっても当然初のグランツールだったところで、大金星を遂げた。

しかしその後は大きな活躍なく、地味な役回りに徹する。それでもこうしてツールに選ばれるだけの信頼はあるわけで、今大会は、発射台の乏しいサガンをゴール前で助ける役回りを担うことになるかも。 

 

 

18.マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、25歳)

パンチャー 183cm、70kg 出場日数:32日

ドイツロード王者

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クイックステップから移籍してきて、いきなりボーラの中心的存在の1人となった才能溢れる男。元々パンチャーとしての資質や、独走力には定評があったが、イツリア・バスクカントリーでは個人TTと登りスプリントで他を圧倒する走りを見せて3勝、さらには山岳ステージでも粘りの走りを見せ、エースのブッフマンへの大きな助けをしてみせた。

www.ringsride.work

今回も求められる仕事は多数。たとえば平坦牽引、たとえばペテル・サガンの発射台。さらには、ブッフマンの山岳アシストの役割を務める可能性もある。

昨年のジロでは山岳ステージで逃げ切り勝利も果たしている。サガン、ブッフマンに続く今大会ボーラの3人目のエースと言っても差支えはなさそうだ。

 

 

総評

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サガンを打ち出す専用の発射台は見当たらないが、その分、ゴール前のポジションを確保するための平坦ルーラーは豪華な顔ぶれ。ブッフマンらにトラブルが起きたときの対応も期待ができるだろう。

また、シャフマンや、総合争いから脱落してしまった場合のブッフマンやコンラッドの山岳逃げ切り勝利にも期待。ミュールベルガーも、今年のドーフィネのような走りができればステージ優勝の可能性はある。 

 

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