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ロンド・ファン・フラーンデレン女子2019 プレビュー

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男子のレースがそうであるように、女子においてもロンド・ファン・フラーンデレンは重要なレースとして位置づけられている。

全部で23ある「ウィメンズ・ワールドツアー」の第6戦にあたり、今年で16回目を迎える。男子よりも距離は短いものの、それでも159kmは女子レースの中でも長い方で、しかもラスト40kmのレイアウトは男子と完全に同一。すなわち、オウデクワレモントやパテルベルグなど、男子レースでも勝負所となる厳しい石畳の急坂を、女子も同じように乗り越えていく。

 

男子レースのロンドが「クラシックの王様」として盛り上がる中、女子も同様に盛り上がりを見せることは間違いなし。

今回は、この女子レース版「ロンド」の簡単なプレビュウを行っていきたい。

女子レースについてはまだまだ初心者の筆者の見解で書いているため、認識不足や助言などがあればぜひお願いいたします。

 

 

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昨年の展開

昨年の男子レースは、クルイスベルグでのヴィンツェンツォ・ニバリのアタックにニキ・テルプストラが喰らいつき、やがて彼がニバリを突き放して独走を開始。クイックステップのチームメートが後続集団を撹乱し、27kmの独走を制したテルプストラが優勝——という流れだった。

実は女子レースも似たような展開だった。同じくゴール27km手前に用意されたクルイスベルグにて、ブールスドルマンスサイクリングのエイミー・ピータースがペースアップを図り、集団は10名に絞り込まれる。

この直後に同じくブールスドルマンスサイクリングのアンナ・ファンデルブレッヘンが26kmにおよぶ独走を開始。残されたメイン集団からはアシュリー・モールマンパシオやカシア・ニエウィアドマが追撃しようと仕掛けるも、この集団に3名も残していたブールスドルマンスサイクリングのメンバーが妨害。

最後は逃げ切ったファンデルブレッヘンに加え、2位にはピータースが入り込み、ブールスドルマンスサイクリングのワンツーフィニッシュとなった。3位はアネミエク・ファンフルーテン。

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www.youtube.com

 

なお、今年はこのディフェンディング・チャンピオンのファンデルブレッヘンが欠場。それでもブールスドルマンスサイクリングのメンバーは強力ではあるものの、中心を欠いた状態で果たして同じような結果を出せるのか。

このあたりは後述の注目選手紹介で。

 

 

今年のコースについて

全長159km。男子と同じくオウデナールデの街をフィニッシュ地点とする。

レース開始から61km地点までは4つの平坦石畳区間が待ち構えており、64km地点の「レベルグ」から、合計10個、全長55kmの急坂が用意されている。

もちろん、1つ1つは男子レースで使われているものと一緒である。

 

以下、重要な急坂ポイントについて確認する。

 

  • 残り73km地点:ミュール・カペルミュール
  • 残り41km地点:ターインベルグ(新登場!)
  • 残り26km地点:クルイスベルグ
  • 残り16km地点:オウデクワレモント
  • 残り13km地点:パテルベルグ

 

昨年までとの違いとして、カペルミュールとクルイスベルグとの間に「ボーネンベルグ」ことターインベルグが追加されたこと。よりタフなレースとなった。

そして残り40kmのレイアウトは男子と完全に同一である。残り30kmを切ったあたりからのクルイスベルグ~オウデクワレモント~パテルベルグが最大の勝負所にになるという点も、男子と一緒である。

参考:男子レースの見所と各急坂のプロフィール

www.ringsride.work

 

今年のクルイスベルグで攻撃を仕掛けるのは一体誰だ?

続いて注目選手たちを紹介していく。

 

 

注目選手

※年齢はすべて2019/12/31時点のものです。

 

1.シャンタル・ブラーク(オランダ、30歳)

ブールスドルマンスサイクリング所属 

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前年覇者ファンデルブレッヘンが「ケープ・エピックでの疲れからの回復を優先し、アルデンヌ・クラシックに向けて準備をする」という理由でロンドを欠場する中、残された最強チームを率いるのがこの、元世界王者ブラークと、あとはもう1人、昨年2位のエイミー・ピータースである。

ブラークはロンドと同様の急坂を使用するオンループ・ヘットニュースブラッドでも優勝しているという点で期待されて然るべき存在だ。過酷な石畳レースであるロンド・ファン・ドレンテでも2位。今日のロンドは雨模様の予報とのことで、同じく雨模様となりサバイバルレースが展開されたドレンテでの2位は重要な勝因となるだろう。

ピータースはピータースで同じくドレンテで4位のほか、ノケレ・コールスでも4位、ヘント~ウェヴェルヘムでも5位とこれまた好調。彼女も過去にドレンテとオンループを制している。

さらにそこに加えて、 元ベルギー王者のジョリアン・ドールも、半月前の鎖骨骨折からの復帰戦として参戦する。これらの才能たちが集結するブールスドルマンスサイクリングは女子版クイックステップと言ってもよい? チーム力で「女王」を打ち崩せるか。

 

 

11.アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、37歳)

ミッチェルトン・スコット所属

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単身であれば現代女子レース界のまさに頂点に立つ人物。女王、という名が相応しいかもしれない。

すでに37歳といい年齢ながら今もなおビッグタイトルを獲得し続けており、昨年はジロ・ローザを制するとともに区間勝利数も8に伸ばした。女子版ツール・ド・フランスの「ラ・クルス」も連覇中で、世界選手権では個人TTを連覇中。今年はついにストラーデビアンケまで制し、登り・TT・未舗装路すべてにおいて強さを見せつける真性のオールラウンダー。年齢も含め、まさに女子版バルベルデといったところだ。

リオ五輪では下りでクラッシュして搬送されたのも記憶に新しい。あの事故からの復活という意味でも凄い。

 

既に述べたように今年もストラーデビアンケを制しているほか、オンループ・ヘットニュースブラッドでも4位、直前のドワーズ・ドール・フラーンデレンでも7位と好調を見せている。最大のライバルたるファンデルブレッヘンが不在の中、順当にいけば彼女が最大の優勝候補か・・・? ブールスドルマンスサイクリングはチーム力でもって対抗したいところ。

なお、ファンフルーテン自身は最大のターゲットはアルデンヌに置いているとのことで、もしかしたらチームメートのアマンダ・スプラットがエースとして動いていくかもしれない。彼女もアルデンヌ系ってイメージはあるけれども・・。

 

 

21.マリアンヌ・フォス(オランダ、32歳)

CCC・リブ所属

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激しいアップダウンの連続となるトロフェオ・アルフレド・ビンダにて、圧倒的、まさに圧倒的なスプリント力でもって勝利を掴んだ。アルフレド・ビンダはこれで4度制覇しており、それ以外にも世界王者を3回経験、フレッシュ・ワロンヌを5回制覇、ジロ・ローザでは21回のステージ勝利と3回の総合優勝を経験している。ロンドン五輪金メダリストでもあり、プロ通算184勝のもう1人の「女王」である。

今年はストラーデビアンケで7位、ドレンテで11位、ドリダーフスで10位、ヘント~ウェヴェルヘムで13位とまあまあの結果。アルフレド・ビンダはどちらかというとアルデンヌ系のレースのように思えるし、北のクラシックはそこまで得意ではない? ロンドは2013年に制しておりそれ以前にも表彰台を3度経験しているが、2014年以降は昨年まで出場無し。昨年は35位。

チームメートにはアルフレド・ビンダでもフォスを強力にサポートしてくれた昨年4位アシュリー・ムールマンパシオもいるため、彼女との連携でもって最強チームや女王に対抗していきたい。

 

 

34.エレン・ファンダイク(オランダ、32歳)

トレック・セガフレード所属

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直前のドワーズ・ドール・フラーンデレンで優勝。昨年に続く連覇となった。終盤の勝負所からの抜け出しによる独走勝利という点でも一緒。キャリア勝利の実に半数がTT勝利という、稀代のTTスペシャリストによる得意パターンによる連覇。女子版ボブ・ユンゲルスみたいな存在として、終盤の彼女の動きには十分に注意が必要だ。

今年はドレンテでも3位。ロンドは2014年に制しており、昨年も7位。相性は良い。

チームメートにはこれもまた過去のロンド覇者であるエリザ・ロンゴボルギーニがいる。彼女もドワース・ドール・フラーンデレンで8位。コンビネーションでロンド2度目の勝利を2人で狙って行く。

 

 

71.マルタ・バスティアネッリ(イタリア、32歳)

チーム・ヴィルトゥ・サイクリング所属

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雨と泥に塗れたサバイバルレースとなったロンド・ファン・ドレンテを、最後にシャンタル・ブラークをスプリントで差して制した。今回のロンドも雨予報が出ており、荒れた展開となれば十分に勝機があるだろう。

実際、今年の彼女は絶好調だ。オンループ2位、オンループ・ファンヘット・ハヘラント 優勝、ストラーデビアンケ4位、ヘント4位、ドワーズ・ドール・フラーンデレン2位と北のクラシックの数々のレースで上位に喰い込み、ウィメンズ・ワールドツアーでも総合首位を走っている。

ロンド自体は最高で8位が2回。昨年も13位と、他の優勝候補と比べると決して実績があるわけではない。しかし今年の彼女は例年以上に勢いが良い!と思う。期待していいだろう。彼女自身も、このロンドがヨークシャー世界選手権と並んでシーズン最大の目標の1つであると宣言している。

 

 

 

その他注目すべき選手として挙げるとしたら、チーム・サンウェブから過去優勝者のコリン・リヴェラ、ルシンダ・ブランド、リー・キルシュマン。

WNTローターは直近のウィメンズ・ワールドツアーで2勝している最強スプリンター、キルシュタン・ワイルドをエースに据えている。もちろん、ロンドにおいて彼女が最後まで残れるかというと微妙だが、もしも残るような事態になれば、リヴェラと共に強力な優勝候補となるだろう。

 

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