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パリ〜ツール2019  プレビュー

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Class:ヨーロッパツアー HCクラス

Country:フランス

Region:フランス北部

First edition:1896年

Editions:113回

Date:10/13(日)

 

パリ〜トゥールとも。

その名の通り、パリ(正確にはその近郊)からサントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏のトゥール(Tours)までを駆け抜けるワンデークラシック。

その歴史は19世紀末から始まる非常に長いものであり、著名なスプリンターやパンチャーたちが優勝者に名を連ねている。

 

昨年からはその歴史あるコースレイアウトに変更が加えられ、終盤の登りが削られた代わりに石畳区間が追加。

北のクラシックのようなレイアウトとなった末に、ソーレンクラーク・アンデルセンが、牽制し合うニキ・テルプストラとブノワ・コズネフロワを突き放して逃げ切り勝利を決めた。

 

今年も北のクラシックスペシャリストたちが優勝を競い合うのか、それとも。

 

今回は、このシーズン最終盤の伝統ある一戦について、コースと注目選手の両面でプレビューしていく。

 

 

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コースの特徴

パリ〜ツールは長らく、スプリンター向けの平坦レースという印象であった。過去にも、ジョン・デゲンコルブやフェルナンド・ガビリア、マッテオ・トレンティンなどが優勝している。

 

ただ、その伝統的なコースレイアウトが、昨年から大きく変更。

例年コース終盤に用意されていた登りがなくなり、代わりに全長12.5㎞におよぶ未舗装路が登場し、クラシックスペシャリストたちにチャンスを与えうるレイアウトとなった。

 

実際、昨年は残り40㎞台から本格的なアタックが巻き起こり、最終的にはクラシックスペシャリストのアンデルセン、テルプストラ、そして後続にオリバー・ナーセンを控えさせたコズネフロワの3名が抜け出した。

メイン集団はナーセンやヴァランタン・マデュアスなどが中心となって追走を仕掛け、コズネフロワもナーセンのために先頭集団の重し役として働いたが、最後までこの2集団のタイム差は縮まらなかった。

最後は、牽制の隙をついて独走を開始したアンデルセンが逃げ切り勝利。

実に「北のクラシック」らしい展開となった。

 

 

今年も、レイアウトは昨年とほぼ変わらず。

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残り50㎞あたりから始まる石畳と登りの連続でセレクションがかかる中、残り3〜40㎞で決定的な抜け出しが生まれる展開が一番可能性としてありそうだ。

逆にラスト10㎞は真っ平らとなり、ここに集団が1つのまま突入するようなことがあれば、集団スプリントで決まる可能性が高くなるだろう。

 

 

以上を踏まえて、今大会の注目選手を確認していく。

 

 

 

注目選手

ニキ・テルプストラ(オランダ、35歳)

Embed from Getty Images

2014年にパリ〜ルーベを、2018年にロンド・ファン・フラーンデレンを制した世界トップクラスのクラシックスペシャリスト。昨年はこのパリ〜ツールで悔しい思いを味わった。その前にも2度、3位を経験しており、今度こそは、という思いは人一倍強いだろう。

今年からプロコンチネンタルチームのトタル・ディレクトエネルジーに。チーム力はどうしても落ちることもあって、また春先は怪我に悩まされたこともあって、期待されていたほどの結果は残せていない。チームメートのアントニー・テュルジの方がより結果を出している。

ただ、全く駄目というわけでもなく、クールネ〜ブリュッセル〜クールネ3位やル・サミン3位、ドワースドール・ヘットハヘラント2位など、勝てはしないが上位には何度か食い込んでいる。直近のツール・ド・ヴァンデでは10位。

今回は、昨年の、そしてこの1年の悔しい思いをすべてぶつける覚悟で挑んでほしい。

 

 

オリバー・ナーセン(ベルギー、29歳)

Embed from Getty Images

2年前6位、昨年4位、着実に成績を伸ばしてはいるが、勝ちきれない。昨年も3名に先を行かれ、必死で追走するも届かなかった。

ファンアーフェルマートと並んで、強いのに勝ちきれない選手。今年もビンクバンクツアー最終日にはなんとか勝ったけれど、それ以外ではイマイチな状況が続いている。

勝ちきれない要因の1つはチームメート。長らく山岳クライマーを重視してきていたAG2Rはもともとクラシックをチームで勝つノウハウが少ない。

そんな中、ジュリアン・デュヴァルは最近ちょっと調子の良さを見せている選手。メインはスプリンターではあるものの、彼がなんとかナーセンを支えてくれれば良いのだが。

直近のヴァンシュ~シメイ~ヴァンシュでは最終逃げ集団に加わりスプリントでギリギリの2位。勝ちきれないのは相変わらずだが、調子は悪くない。

 

 

ニルス・ポリッツ(ドイツ、25歳)

Embed from Getty Images

長身と長い手足、そしてきらりと光る白い前歯が特徴。

今年、とくにクラシックの分野において覚醒を遂げつつある男。ロンド・ファン・フラーンデレン5位、パリ〜ルーベ2位。多少の起伏への適性も必要とするパリ〜ツールは、パンチャーでもある彼にとってはベストマッチするレイアウトと言えるだろう。スプリント勝負になったときでも、上記のナーセンにひけを取らない力をもつ。

もちろん、正直チームは頼りにならない。一人で戦わざるをえないだろう。だが、ついに単独での生き残りを諦め、イスラエル・サイクリングアカデミーとの合併を選んだカチューシャに、なんとかせめてもう1勝は、もたらしてあげたい。

彼自身の未来を確実なものとするためにも。

 

 

バプティスト・プランカールト(ベルギー、31歳)

Embed from Getty Images

2017年にカチューシャ・アルペシンでワールドツアーデビュー。しかしその後の2年で結果は出せず、今年から、古巣のワロニー・ブリュッセルへと出戻りとなった。

だが出戻った途端、かつての強さを取り戻しつつある。ワロニー・ブリュッセル時代最終年は年間5勝・3位以内が17回と絶好調だったが、今年もそこまでには達しなくとも、そこんじょそこらのワールドツアーの選手には負けないだけの実績を出してはいる。直近のファムンヌ・アルデンヌ・クラシックでも2位。

今回のパリ〜ツールのような混戦が予想されるレースは得意なレースとなるはず。上記3名と比べるとスプリント力には難ありなので、最後は終盤飛び出しでもいいのでなんとか少数に絞り込みたい。

 

 

シュテファン・キュング(スイス、26歳)

Embed from Getty Images

スイス現役最強のTTスペシャリスト。ツール・ド・ロマンディでは雨の中見事な独走勝利を見せてくれた。

同じく雨の中の過酷なコンディションとなった世界選手権でも残り60㎞から抜け出して最後まで生き残った。今回も雨が降ればチャンスは大きい。

あとはやっぱりスプリント力が難ありなので、できれば1人で逃げたい。

直近のバンシュ~シメイ~バンシュでも終盤の逃げ集団に乗り込んだ。だがやっぱりスプリント勝負になると分が悪く9位。

 

 

 

ほかにもスプリントとなればティモシー・デュポン(ワンティ・グループゴベール)やマルク・サロー(グルパマFDJ)、ブライアン・コカール(ヴィタルコンセプト)。

クラシックスペシャリストとしてはイェンス・クークレール(ロット・スーダル)の存在も忘れてはならないだろう。

 

 

賛否両論あるコース変更だっただろうが、結果的に北のクラシック的な予測不可能性が生まれるのであればそれは功を奏したと言えるだろう。

より面白くなったパリ〜ツールが、今年も激戦を繰り広げてくれることを楽しみにしている。

 

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