Class:ワールドツアー
Country:フランス
Region:-
First edition:1993年
Editions:77回
Date:3/10(日)~3/17(日)
先週のオンループ、そして今週のストラーデビアンケでクラシックシーズンが本格的に開始されると共に、フランスではいよいよ本格的なステージレースのシーズンが開始される。
その恒例の幕開けとなるのがこの伝統的なレース。ツール・ド・フランスと同じくアモリ・スポル・オルガニザシオン(ASO)が主催し、マイヨ・ジョーヌなど各賞のジャージも非常に似通っている。そして何より、ツール・ド・フランス本戦を意識したコース設定が用意され、本格的な山岳ステージを含めた「ミニ」ツール・ド・フランスとして、シーズン序盤のグランツールライダーたちの足試しの機会として多く活用されている。
今年も初登場の巨大山岳の登場などで話題を集めるこの「太陽へのレース」。
今回はそのコースについてプレビュウしていく。
- 第1ステージ サン=ジェルマン=アン=レー~サン=ジェルマン=アン=レー 138.5km(平坦)
- 第2ステージ レ・ブレヴィアール~ベルガルド 163.5km(平坦)
- 第3ステージ セッポワ~ムーラン 200km(平坦)
- 第4ステージ ヴィシー~ペルシャン 210.5km(丘陵)
- 第5ステージ バルバンターヌ~バルバンターヌ 25.5km(個人TT)
- 第6ステージ ペニエ~ブリニョール 176.5km(丘陵)
- 第7ステージ ニース~チュリーニ峠 181.5km(山岳)
- 第8ステージ ニース~ニース 110km(山岳)
第1ステージ サン=ジェルマン=アン=レー~サン=ジェルマン=アン=レー 138.5km(平坦)
パリ郊外の高級住宅地サン=ジェルマン=アン=レーを発着する138.5km。
途中に2つの3級山岳が用意され、終始細かなアップダウンが続くが、最後の1kmはほぼ完全なフラットレイアウトのため、ピュアスプリンターたちによる集団スプリントが期待されるだろう。
ルイ6世の時代からルイ14世の時代まで、国王の居城の1つとして使われていたというサン=ジェルマン=アン=レー城でも有名。
第2ステージ レ・ブレヴィアール~ベルガルド 163.5km(平坦)
パリ西部のレ・ブレヴィアールを出発したプロトンは、いよいよ太陽に向かうルートを進んでいく。
まず目指すはオルレアン東部に位置する町ベルガルド。この日も序盤に3級山岳が2つあるだけのフラットなレイアウトだが、最後の1kmは緩やかに登っている。平均勾配は1%程度で、本当に本当に緩やかだけれども。
第3ステージ セッポワ~ムーラン 200km(平坦)
フランス中央部の平原地帯をひたすら南下していく。今回は200km。いよいよ山岳地帯も近づいてくるオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏に。今回はその北端に位置するアリエ県の県庁所在地ムーランが終着点。
14世紀に創設されたブルボン公の首都にもなった町で、のちにブルボン朝が創設されたとき、その初代国王の両親が結婚式を挙げたのもこの町であるという。
ステンド・グラスのノートルダム大聖堂などが著名な建築物。
レイアウトはとくに面白みのないオールフラット。山岳ポイントも1つもない。海外のコースプレビューサイトが「Flat, Flatter, Flattest」と呟いてしまうくらいにフラット。
ただ、ラスト1.5kmは完全フラットではあるものの、ラスト2.5kmから1.5kmにかけては2%勾配の登りが設置されている。これが何か、ドラマを生む可能性は・・・まあ、少ないだろう。
第4ステージ ヴィシー~ペルシャン 210.5km(丘陵)
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏をさらに南下。
中央山塊の北東を横切りつつリヨン南部の街ペルシャンへ。今大会最長ステージであると共に、いよいよ山岳地帯の色彩を帯び始めるコースレイアウトとなっている。
残り60kmを過ぎてから3つの2級山岳と1つの1級山岳。途中で一度ゴールを通過したのちに、もう1度同じコースを巡ってゴールに飛び込む。
いずれも標高300m程度だが、常に登るか下りるかするアップダウンの中で、着実に選手たちの足は削られていくことだろう。
最後の登りの山頂からゴールまでは3km程度。そこまで厳しい登りではないものの、ピュアスプリンターたちが残ることは難しいだろう。最後も少しだけ登っている。
よって、この日はパンチャーとクライマーとが混在するスプリント勝負を見ることができそうだ。
第5ステージ バルバンターヌ~バルバンターヌ 25.5km(個人TT)
前日のゴール地点ペルシャンから一気に南に移動し、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏の街バルバンターヌで総合争いにも大きく関わる中距離タイムトライアルに挑む。
ほぼフラットではあるが中盤と最後に小さな登り。中盤は登坂距離3km、平均勾配3%。最後の1kmも平均勾配4%(ただし後半は8%くらいはありそう)と、バイクの種類に迷う必要もないようなレベルである。それでもTTスペシャリストが圧倒的に有利かというと、そこまででもない気はするレイアウトである。
なおこの中盤の登りは、バルバンターヌの街の南部に広がる丘陵地帯に位置するフリゴレ修道院。西暦960年に設立された「丘の上の修道院」である。
第6ステージ ペニエ~ブリニョール 176.5km(丘陵)
マルセイユ近郊を舞台にした、アップダウンステージ。
残り65kmを切ってから、2つの2級山岳と3級山岳が現れる。いずれもさして難易度も高くなく、最後の山頂からゴールまでは17.5kmもあるため、スプリンターたちが残る可能性は十分にある。
ただし気を付けなければならない。この日はクイーンステージの前日。そしてすでにTTも終えており、虎視眈々とタイムを失っていた逃げスペシャリストたちが構えているに違いない。
この日は、エスケーパーたちの夢が詰まったステージ。前半3ステージで取りこぼしたスプリンターチームは、死ぬ気で集団を牽引しなければその野望を叶えることはできないだろう。
やっぱり期待したいのはエスケーパーの王、トーマス・デヘント。昨年同時期のカタルーニャ1周レースでも実にフォトジェニックな逃げ切り勝利を果たした彼が、今年もこの3月にきっちりとエスケープ勝利を果たせるか。
第7ステージ ニース~チュリーニ峠 181.5km(山岳)
スタート直後から登り始め、全部で3つの2級山岳と1つの3級山岳、そして2つの1級山岳の2つ目は大会初登場のチュリーニ峠山頂フィニッシュとなる。
全長14.9km。平均勾配7.3%。獲得標高は1000m以上。
道は補足ヘアピンカーブの連続で、この時期に登場する山岳としては最高峰の難易度を誇る。この山は、パンチャーに毛が生えたような選手では乗り越えることはできない。今年のパリ~ニースは、本気でクライマーのためのコースを用意してきた。
よって、この日の覇者が今大会を制する可能性は大いにある。
いや、しかしパリ~ニースには、いつも驚きをもたらしてくれる最終ステージが控えているので・・・。
第8ステージ ニース~ニース 110km(山岳)
毎年恒例のエズ峠を含む短距離山岳ステージ。
2年前までのエズからの下りフィニッシュではなく、昨年採用された、エズ越えの後にもう1つ、2級山岳キャトル・シュマン峠を越えるレイアウト。
一昨年まではコンタドールが逆転を狙ってエズ峠でライバルを引き離したが、その後の下りでタイム差を詰められて逆転が果たせなかった。
しかし昨年はマルク・ソレルがペイユ峠の登りで抜け出して、そのまま逃げ切りの逆転総合優勝を果たした。
今年も、ペイユか、エズか、はたまたキャトル・シュマンか。
最後の最後まで総合の行方が分からない白熱した戦いを楽しめることだろう。
しかし、勝つのはその逆転を狙うオールラウンダーの方ではない。
例年、それに喰らいついていった一流クライマー・エスケーパーがスプリントを制して勝利を手に入れている。
3年前はウェレンス、昨年・一昨年はデラクルス。
今年も、最後の総合逆転劇の裏で、劇的な逃げ切り勝利を果たす「もう1人の主役」が現れるかもしれない。
以上、 全8ステージ。とくに総合争いに影響を及ぼしそうなのは第5ステージの個人TT(25.5km)と第7ステージの山頂フィニッシュ、そして第8ステージだ。
クライマーが勝つか、TTも速いオールラウンダーが勝つか。
そして今年もまた、秒差の争いが繰り広げられるのか・・・
楽しみの尽きない1週間が始まる。