りんぐすらいど

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ツアー・オブ・オマーン2019 注目選手プレビュー

コースプレビューに引き続き、今年のツアー・オブ・オマーンで注目すべき選手たちを紹介。

もちろん「勝つだろう」選手も紹介していくが、合わせて、勝つとまではいかないだろうが今後に向けて注目しておくべき選手なども紹介していきたい。

 

 

 

アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、32歳)

UAEチーム・エミレーツ

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中東マイスター。ツアー・オブ・オマーンでは通算8勝。ツアー・オブ・カタールやアブダビ・ツアーを加えると、中東レースでの勝利数は15にのぼる。昨年のオマーンで彼を勝利に導いたロベルト・フェラーリも連れてきており、 勝利に向けての準備は整っている。

彼の強みは、ミラノ~サンレモやロンド・ファン・フラーンデレンでの優勝があることからも分かるように、多少の登りやアップダウンをものともしない脚質である。ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでも、ディラン・フルーネウェーヘンを苦しめた第2ステージで5位に入るなど、その強みを遺憾なく発揮している。

もちろんピュアスプリントにおいても十分にトップクラスである。昨年は念願のシャンゼリゼを獲得したほか、それこそバレンシアナでも、最終ステージでマッテオ・トレンティンを差しての区間2位に入り込んでいる。そのときは後方から怒涛の勢いで飛び出してきたフルーネウェーヘンにこそ負けたものの、ナセル・ブアニなど、今大会のライバルたちに対しては一歩先んじた強さを持っている。

最大のライバルはチームメートのフェルナンド・ガビリア。すでに彼は、ブエルタ・ア・サンフアンで2勝している。新チームメートとの相性も良さそうで、このままでは本当にクリストフが「2番手」になりかねない。

もちろん彼も意地があるだろう。とくに、2月の後半には、チームスポンサーのお膝元でのUAEツアーが待ち構えている。現状、そのレースにはガビリアもクリストフも出場予定。どちらがエースとして走れるかは、今回のオマーンでのクリストフの走りにかかっていると言ってよいだろう。

 

 

ナセル・ブアニ(フランス、29歳)

コフィディス・ソルシオンクレディ

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彼もまた、チーム内にライバルを抱える男である。昨年は実際に、ツール・ド・フランスの出場権を奪われた。しかも、かつては自らのアシストだった男に!

しかし、その後彼はブエルタ・ア・エスパーニャにて執念の1勝をもぎ取る。一時はチーム離脱の噂すら出ていた中で、もう1年、このチームでやると決めたのは、結果を出すため以外に理由はない。

今年もすでに、そのライバルに勝利は先を越されている。が、ブアニもまた、決して悪くはない。ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナの第2ステージでは、集団の後方からかなりよい飛び出しを見せていた。マッテオ・トレンティンの冷静な走りの前に、あと一歩のところで勝利を逃してはしまったが、それでもその脚が決して悪くない状態であることを示してくれた。

第5ステージではその伸びがイマイチだったところも見せてしまったが、ここでは逆にアシストのファンビルセンの状態の良さを見ることができた。今大会にはファンビルセンは連れてきていないが、昔はよくブアニをサポートしてくれていたジョフレ・スープを連れてきている。相変わらずチームはブアニ第一というよりは山岳系選手が多く冷たい布陣ではあるものの、その中でなんとか、1勝を掴み取っておきたいところ。

 

 

ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、26歳)

ディレクトエネルジー

ランプレ、トレック、バーレーンと渡り歩き、そこでエースとしての活躍を見せるはずが、全く結果を出すことができず今年からプロコンチネンタルチームへ。

しかし新チームでのデビュー戦となったラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴにてステージ3勝と総合優勝。今度こそチームのエーススプリンターとして、一花咲かせたい。

直前のエトワール・ド・ベセージュでは4位が2回。コカールには敗れてしまってはいるものの、悪くはない順位。アフリカでの勢いをこの中東でも発揮し、再びトップスプリンターの仲間入りを果たせるか。

 

 

ライアン・ギボンス(南アフリカ、25歳)

チーム・ディメンションデータ

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2年前から注目している南アフリカの才能ある若手スプリンター。ジロ・デ・イタリアなどでも上位に来ることがあるが、特に驚きの走りを見せてくれたのが今年のツアー・ダウンアンダーとカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースであった。

ダウンアンダーでは第1ステージのピュアスプリントでも5位に入っていたが、それ以上に驚いたのが、ピュアスプリンターたちを容赦なく薙ぎ払ったウライドラの第3ステージ、さらにはコークスクリューの第4ステージでも先頭集団に残っていたことだった。その結果彼は、スプリンターでありながら今大会の新人賞を獲得することになる。

カデルレースでも、ダニー・ファンポッペルも振るい落とされたチャランブラ・クレセントを越えるレイアウトで、ジェイ・マッカーシーなど優勝候補を差し置いての4位。南アフリカ選手権ロードでもかなり期待していたが、さすがにこれは、昨年以上に調子の良かったダリル・インピーにしてやられてしまった。2位。来年こそは。

以上より、とにかく登りを含んだレイアウトでは優位に立てる足の持ち主である彼は、ゴール4km手前に激坂を含んだ第2ステージや、ブシェール・アラムラットの連続登坂の先の登りスプリントとなる第4ステージ、そして細かなアップダウンの先のスプリントとなる第6ステージでは上位に入れる素質を持つだろう。

もちろん、第2・第4の最有力候補は、バレンシアナで勝ったファンアーフェルマートだと思うし、第6ステージもクリストフが絶対有利だろう。チームメートには実績のあるジャコモ・ニッツォーロもおり、ピュアスプリントでは彼がエースで走ることにはなると思う。その中でギボンスがどれだけの走りを見せてくれるか、楽しみにしたい。

 

 

ヘスス・エラダ(スペイン、29歳)

コフィディス・ソルシオンクレディ

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モビスターで長年アシストを務めていた男が、エース待遇で現チームに招かれて2年目。昨年はプロコンチネンタルチームのエースとして相応しい走りを見せるとともに、ブエルタ・ア・エスパーニャでは2日間リーダージャージを着用した。

今年もここまでは良い状態で過ごせている。開幕戦のトロフェオ・セスサリネス~ファラニチュで早速優勝。バレンシアナでもクイーンステージで先頭集団に 喰らいつき綜合6位。

このオマーンは昨年も総合4位で、そのときの総合2位と3位は今大会出場していない。そして総合優勝のルツェンコも本来であれば山岳に完全に向いた選手ではないので、今年はエラダの年だと確信している。

 

 

アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、27歳)

アスタナ・プロチーム

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昨年総合優勝。元々は山岳もイケるエスケープスペシャリストといった感じで、純粋なクライマーではない。しかし昨年はミゲル・ロペスやヤン・ヒルトらの助けもあって、クイーンステージのグリーンマウンテン」でもライバルたちに差をつけることができた。

今年はその意味で、あまり山岳向け選手を連れてきていない布陣のため、昨年ほどの強さは発揮できないかもしれない。 逆に、ここで強さを見せつけることができれば、いよいよ彼も新しい才能を見せ始めたということができるだろう。

 

 

ベン・オコーナー(オーストラリア、24歳)

チーム・ディメンションデータ

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今、最もその成長が楽しみなオージークライマー。昨年はツアー・オブ・ジ・アルプスでステージ1勝と新人賞。ジロでは終盤まで総合12位あたりを維持していたが、第19ステージで落車リタイア。2019年も引き続き飛躍していってほしい。

密かに期待していたダウンアンダーでは力を出し切れず。パンチャー向けのレイアウトよりは、しっかりと登りのあるレイアウトの方が向いているのかもしれない。となれば今回のグリーンマウンテンでの走りには注目したいところ。

 

 

ブランドン・マクナルティ(アメリカ、21歳)

ラリー・UHCサイクリング

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こちらはアメリカの若手、というよりは現在の最若手クライマーたちの中でも特に注目すべき選手の1人である。

昨年は同時期のドバイ・ツアー、ハッタ・ダムのステージで残り50mまで逃げ続けた執念の走りを見せた。当時は独走力の高い選手、という印象しかなかったが、その後、ツアー・オブ・カリフォルニアのサウスレイクタホで4位、総合でも7位と、クライマーとしての才能を示し始めた。

そしてツール・ド・ラヴニール。本格的な山頂フィニッシュとなった第7ステージで、タデイ・ポガチャルとイヴァン・ソーサと同タイムの2位。しかも確か、マクナルティが先着のはずだったのが、いわゆる「やっちまったガッツポーズ」で最後に差されたという展開だった・・・はず。

いずれにせよ、昨年のラヴニールでのトップクライマーたちと張り合う登坂力を見せたことで、俄然、次代を担うトップオールラウンダー候補となった。今年はチャレンジ・マヨルカに出場し、そのときはまだ結果を出せずにいたが、今回のレースでは昨年のドバイのこともあるので期待したい。

また、最終的には今年のカリフォルニアでの大爆発を楽しみにしておきたいところだ。

 

 

 

以上、スプリンターおよび総合上位候補として計8名を選んでみた。

これ以外にも当然、ルイ・コスタだったりグレッグ・ファンアーフェルマートだったりアンドレ・グライペルだったりブライアン・コカールだったりと注目すべき選手たちは沢山いるが、その中でも期待も込めて今回のこの8名の活躍を願っている。

 

とはいえまだまだシーズンは開幕したばかり。順当な選手たちが十分な実力を発揮できないこともあれば、予想もつかなかった才能が花開く瞬間を目の当たりにすることもあるだろう。

そういったことも楽しみにしつつ、レース開幕を待ちたいと思う。