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ノケレ・コールス2019 プレビュー

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Class:ヨーロッパツアー HCクラス

Country:ベルギー

Region:ヴェストフラーンデレン州

First edition:1944年

Editions:74回

Date:3/20(水)

 

石畳の登りスプリントが特徴のセミクラシック。

登りとはいえ、ゴール直前の下りを利用してハイスピードで突入できる登りのため、特別「登れるスプリンター」でなければ勝てない、というわけではない。

トップスプリンターたちの出場は少なく、どちらかというプロコンチネンタルチームや若手選手など、2番手級の実力者たちが勝ちを奪い合う見応えのあるレースだ。

 

そして何より、今年は「あの」マチュ―・ファンデルポールが今年最初の日本語実況・解説付レースでの出場となる。

 

そんな大注目の「ノケレ・コールス」を、今回はプレビュウしていこう。

 

 

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レースについて

2019年のコースは全長195.6km。

残り110kmを切ってからノケレの街を中心とした周回コースへ。

最初は約15kmの小周回を3周。

そして、32~33kmの大周回を2周してゴールする。

Embed from Getty Images

 

やはり目玉となるのは、全部で6回登ることになる「ノケレベルク」。全長400m、平均勾配6%の石畳の登りである。

この登りの頂上にフィニッシュラインが引かれているため、いわゆる「登りスプリント」となっているわけだが、ラスト1kmから500mまでの間に平均2%の下りが用意されているため、ここで勢いをつけた各スプリンターたちが一気に登ることも可能で、そこまで特別に登りスプリントが得意な選手でなくても優勝者に名を連ねている。

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ノケレ・コールス 過去の優勝者

 

またパリ~ニースやティレーノ~アドリアティコ、ミラノ~サンレモといったビッグレースに挟まれた週に開催されるHCクラスのレースということもあり、トップチームのエーススプリンタークラスの参加はほとんどなく、地元プロコンチネンタルチームやトップチームでも若手・2番手3番手といった選手たちがエースを務める。

有名レースでの決まった選手たちのバトルには物足りなさを感じる「通」な視聴者の欲も満たしてくれる、見ごたえのあるレースとも言えるだろう。

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昨年はネオプロのヤコブセンが他を圧倒する走りを見せて勝利。その後シーズン7勝を挙げる彼の最初の勝利となった。 

 

 

注目選手たち

マチュー・ファンデルポール(オランダ、24歳)

コレンドン・サーカス(COC)所属

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現役最強のシクロライダー。

2018-2019シーズンのシクロクロスでは、3大シリーズ戦の1つであるスーパープレスティージュで全戦全勝。

そもそも出場した34戦のうち勝てなかったのは2回だけ。落車で怪我をしてリタイアとなった一戦(翌日のレースでは優勝)と、バッドデイにより4分以上もタイムを失った一戦(その後のレースでこのタイムをひっくり返して総合優勝)の2つだけ。

過去3年連続でライバルのワウト・ファンアールトに奪われ続けていた世界王者の座も手に入れ、今年は圧倒的にファンデルポールの年だった。

 

昨年はロードでも活躍した。

プロコンチネンタルチームに所属していたファンアールトと比べるとどうしてもそこまで派手ではなかったものの、アークティックレース・オブ・ノルウェーではそのスプリント力で区間2勝。

ロード国内選手権でもダニー・ファンポッペルを相手取り、その巧みなコース取りで優勝をもぎ取った。

これで昨年はロード、シクロクロス、MTB全てで国内王者に輝くという、前代未聞の記録も打ち立てる。

 

そんな彼が所属するコレンドン・サーカスが、今年は彼のためにプロコンチネンタルチームに昇格。

いよいよロンド・ファン・フラーンデレンをはじめとするワールドツアー・クラシックスに本格参戦する。

 

その手始めがこのノケレ・コールス。

石畳そして激坂こそ、ファンデルポールの得意分野。

ワールドツアーも含んだ強豪選手たちを相手にどこまでその実力を示してくれるのだろうか。

 

なお、今期すでに、トルコで行われたツアー・オブ・アンタルヤ(2.2)にてスプリント勝利を果たしている。開幕戦での開幕勝利であった。

ただしこのレースのその後のスプリントステージではチームメートのロイ・ヤンスがエースを担う。

ヤンスはノケレ・コールスでも昨年4位などと活躍しているため、今回ももしかしたら・・・ヤンスがエースということも、ありうるかもしれない。

 

 

パスカル・アッカーマン(ドイツ、25歳)

ボーラ・ハンスグローエ(BOH)所属

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おそらく、今大会出場している選手の中で最も実績のある選手。自然に考えれば最有力候補と言えるだろう。バシュカ、マッカーシー、ゼーリッヒとアシストも揃っている。

ただ、直近のスプリンター向け北のクラシック、クールネ~ブリュッセル~クールネでは、逃げ切りとなったユンゲルスを除く先頭集団中16番目のゴールだった、というのは少し気になるところ。

ノケレの石畳激坂をゴールまでの間に5回、こなしてきた中で、彼自身やチームメートの足が削れていなければいいのだが。

昨年も出場しておりそのときは先頭集団最後尾の28位。ただしそのときはフィングステン(18位)がエースだった模様。今回はフィングステン不参加。

代わりに2年前7位のルディガー・ゼーリッヒがチームメート。同じくチームメートのマッカーシーは、3年前に46位。

 

 

クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー、23歳)

チーム・スカイ(SKY)所属

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3年前のU23世界王者。昨年、鳴り物入りでスカイ入団。

しかし初戦となるはずだったツアー・ダウンアンダーは、前哨戦クリテリウムでの落車骨折により参加できず。

それ以外でも大きな活躍はできず、同じく注目の若手ベルナルと比べて、あるいはスプリンターという意味ではクイックステップのホッジ、ヤコブセンと比べて、目立つことのできないシーズンとなった。

 

しかしスカイには2年目のジンクスがある。

期待されて入団した選手は初年度はあまり活躍ができず、2年目に花開く、というものだ。クウィアトコウスキー、ランダ、エリッソンドのように。

そのジンクスに従うかのように、ハルヴォルセンは今年良い滑り出し。

ヘラルドサン・ツアーではついに勝利を手にし、その後も集団スプリントでは常に存在感を発揮している。

 

ノケレ・コールスではコンチネンタルチーム(チーム・ジョーカー)時代の3年前にティモシー・デュポンに敗れての2位。このときはフルーネウェーヘンやモスコンに勝っていた。

さらに昨年も、同じくスプリンター向けの北のクラシックであるハンザーメ・クラシックで、アッカーマンにも競り勝っての2位。このとき負けた相手は宿敵のホッジ。今回こそは、負けられない。

チームメートにはヘラルドサン・ツアーで逃げ切り勝利を果たしているオウェイン・ドゥールや、昨年同じく期待の新人スプリンターとしてスカイ入りしたクリストファー・ローレスなど。

 

 

マッテオ・モスケッティ(イタリア、23歳)

トレック・セガフレード(TFS)所属 

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元ポーラテック・コメタ(アルベルト・コンタドールが設立した育成チーム)出身で、昨年年間9勝を遂げているイタリアの若き才能。

トレックのトレーニーを経て今年からプロデビュー。その中で早速見せた才能の片鱗が、先日のUAEツアー第4ステージだった。

これまでも数多くの強力な「登れるスプリンター」に勝利を届けてきた名物「ハッタ・ダム」の頂上フィニッシュ。過去にはジョン・デゲンコルプやフアンホセ・ロバト、そしてソンニ・コルブレッリなどがこれを制してきていた。

今年はカレブ・ユアンが驚きの勝利。だが、一時は彼の前に立ち、最後の最後まで粘り切って2位に入り込んだのがモスケッティだった。

ピュアスプリントだけでなく、これほどの(17%の)強烈な急勾配に対しても見事な走りを見せてくれた彼は、今年すでに活躍しているエヴェネプールやポガチャルと並び、期待以上の活躍を見せてくれている驚きの新人である。

 

と、いうことで、今年初出場のこのノケレ・コールスでも期待したい。

石畳に対する適性はさすがに未知数だが・・・

 

 

アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、23歳)

ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、21歳)

ともに勝機が十分にある若手スプリンター。

ホッジはツアー・コロンビアで、フィリプセンは(ユアン降格の結果)ツアー・ダウンアンダーでそれぞれ1勝している。

ただ、UAEチームの方は比較的若い選手が揃っているため、チーム力にやや不安が残る。フェラーリとセバスティアン・モレーノという、発射台としては十分に実力のあるメンバーが揃ってはいるが・・・。

ホッジは発射台と呼べるような選手はいないものの、クラシック巧者が集まっており、無事に・安全にホッジをゴールまで届ける役目はどのチームよりも手厚くこなしてくれることだろう。

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