5月。それはジロ・デ・イタリアの季節。と同時に、7月のツール・ド・フランスに向けた、調整のレースとしても注目を集めるツール・ド・ロマンディ、ツアー・オブ・カリフォルニアなどが開催されている。
とくにカリフォルニアは例年同様に、いやある意味今年は例年以上に、若手の活躍が目立った。表彰台に立ったポガチャル、イギータ、アスグリーンはもちろん、スプリントで上位に食い込んだネオプロのニューエンハイスや、最終日に勝利したボルなど、新たなタレントが輩出されていった。
このボルやニューエンハイスは、続く北欧のツアー・オブ・ノルウェーでも実力を示し、彼らが今確実に進化中であることを示す1か月となった。
そして、今年から取り上げている女子ワールドツアーのレースも盛り上がりを見せている。春のクラシックシーズンを終え、いよいよ7月の「ジロ・ローザ(女子版ジロ・デ・イタリア)」に向け、女子ワールドツアーの舞台でも各種ステージレースが盛り上がりを見せつつある。
スプリンター向けのチョンミンアイランドに、パンチャー・クライマー向きのカリフォルニア、エマクメーン・ビラ。
今、女子レース界でどんな実力者が台頭してきているのか、についても参考にしてもらえると幸い。
- ツール・ド・ロマンディ(2.WT)
- エシュボルン・フランクフルト(1.WT)
- ツール・ド・ヨークシャー(2.HC)
- ツアー・オブ・チョンミンアイランド(2.WWT)
- ジロ・デ・イタリア(2.WT)
- ツアー・オブ・カリフォルニア(2.WT)
- ダンケルク4日間レース(2.HC)
- ツアー・オブ・カリフォルニア・ウィメンズレース(2.WWT)
- エマクメーン・ビラ(2.WWT)
- ツアー・オブ・ノルウェー(2.HC)
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ツール・ド・ロマンディ(2.WT)
ワールドツアークラス 開催国:スイス 開催日:4/30~5/5
↓詳細はこちら↓
プリモシュ・ログリッチェ、ハットトリック達成。圧倒的な力量差で総合優勝を勝ち取った。
それは十分に予想の範囲内。その中で、若手を中心に以外な活躍をしてくれた選手たちも数多くいる。
ゴデュの勝利はそこまで意外ではないだろう。彼はもはや、ピノと並ぶグルパマFDJのエースである。
勝てはしなかったが注目に値する走りを見せたのが、ロット・スーダルのカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー)。今年28歳と、決して若手ではないが、昨年まではチーム・ジョーカー・イコパルというノルウェーのコンチネンタルチームに所属していたため、ネオプロの選手ではある。
第1ステージで6位、第3ステージで9位に入るまずまずの成績。チームも第3ステージにおいては、彼のための先頭牽引や、デヘントによる牽制アタックを行うなど、彼に期待している様子が見受けられた。
今回は総合TOP10には入れなかったが、いつか大きな結果を出し得る選手の1人だと思っている。今後も期待である。
また、もう1人、地味ながらも活躍していたのがチーム・イネオスのディラン・ファンバーレ(オランダ)。本来はクラシックに強い、平坦系のパワールーラーであるはずの彼だが、今大会では第1ステージの終盤、山岳を越えた先にある平坦区間でトーマスのための牽引をきっちりとこなしたり、第4ステージでは山岳トレインの最終発射台として活躍するなど、山にも対応できる実力を見せつけた。
いわばキリエンカのような働き方ができるように成長しつつあるファンバーレ。今後のグランツールでの活躍にも期待だ。
エシュボルン・フランクフルト(1.WT)
ワールドツアークラス 開催国:ドイツ 開催日:5/1
1962年初開催と、ドイツで最も歴史の長いUCIレース。昨年からワールドツアークラスに昇格し、サイクラシックス・ハンブルクに続くドイツ2番目のワールドツアーレースとなった。
コースの途中にはそれなりの強度の山岳区間が横たわっているが、基本的にはピュアスプリンターも含め問題なく終盤まで生き残り、集団スプリントによる決着となることが多い。
大会中止となった2015年を飛ばし、2014年から4連勝しているアレクサンドル・クリストフが最大の優勝候補。
しかし、今大会は、新進気鋭の実力者アッカーマン率いるボーラ・ハンスグローエが完全に支配した。
5名の逃げ集団も、ボーラの強力な牽引によって残り5kmですべて吸収。このとき、アッカーマンの前には4名。ミュールベルガー、ベネデッティ、コンラッド、シリンガーの順。ゼーリッヒもアッカーマンの後ろに待機。
クライマーも総動員しての一大トレインは、他チームが前に出ることを一切許さない勢いでフラム・ルージュを通過した。
残り200mで最初に抜け出したのはイスラエルサイクリングアカデミーのダヴィデ・チモライ。直前のカスティリャ・イ・レオンでステージ2勝&総合優勝と絶好調の彼のスプリントは力強く、またコース右端を進むアッカーマンの進路をやや塞ぐ形のコース取りだったため、アッカーマンにとっては厳しい状況のはずだった。
しかし、アッカーマンはそのまま猛烈な勢いで加速。塞ぎかけていたチモライを肩で押しやり、残り150mから開始したスプリントは、一気にチモライを抜き去って先頭へ。
チモライを避けながら前に出たデゲンコルプも追随するが、凄まじい勢いのドイツ重戦車を捉えることはできなかった。
「チームは完璧な状態で、ジロ・デ・イタリアが楽しみだ」
と語ったアッカーマン。今、最も勢いのある新人スプリンターは、ジロ・デ・イタリアでも大暴れしてしまうのか?
ツール・ド・ヨークシャー(2.HC)
ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イギリス 開催日:5/2~5/5
2015年初開催の、まだ歴史の浅いステージレース。とはいえ、ASO主催で、自転車熱の高まるイギリス・ヨークシャー地方ということで、出場チーム・選手は豪華。今年からHCクラスに昇格し、注目選手としてクリス・フルームの出場が目玉となった。
チーム・イネオスとしても、正式に新チームとなってから初のレースとなる。地元レースでの勝利は何としてでも、という思いでの参戦となった。
初日は雨の中の平坦スプリントステージ。しかし昨年もそうだったように、今年もその中で意外な逃げ切りが決まる。
勝ったのは、今年の北のクラシックでもラース・ボームと共に良い走りを見せていたアッセルマン。今後もプロコンチネンタルチームながら、クラシック風味のレースでは注目したい選手だ。
第2ステージは今年の世界選手権の舞台、ハロゲートの周回コースを使用したステージ。ここでは、調子が上がらないまま予定した今レースも欠場を決めたキッテルの代わりとして、エースを任された「発射台」ツァベルが勝利。
なかなかエースを張ることが少ないながらも、着実にその実力を高めつつある彼が、今後新たなエースとして台頭するための伏線となるような勝利だった。
そして、強烈な北海からの横風が吹きすさぶ第3ステージで、いよいよ総合争いが本格化していった。
残り55km。急勾配の短い山岳ライスバンクを越えたあとの吹きさらしの横風区間で、まずはCCCチームのミヒャエル・シェアーが先頭でペースアップ。
200m近い長身のパワールーラーの牽きで、集団は完全に分裂。直前の急勾配区間で番手を下げていたスプリンターたちは皆、後続に取り残されてしまった。
続いてディフェンディングチャンピオンのグレッグ・ヴァンアーヴェルマートも自ら先頭に躍り出て牽引。チーム・イネオスも横風職人イアン・スタナードなどが綺麗にローテーションを回しながら、横風分断作戦を敢行していく。
イネオス、CCCというワールドツアー2チームによる横風分断。ここを生き残って集団の中に4名を含めることができたのが、デンマークのプロコンチネンタルチーム、リワルレディネス・サイクリングチーム。同じ北海の風には慣れているからか、チームとしてしっかり危機的状況を乗り越えた彼らは、最後に大きなチャンスを掴むことに成功した。
強風で水しぶきが上がり、海水がコースの中に侵食するような最終ストレートで、まず抜け出したのがクリストファー・ローレスを牽引するオウェイン・ドゥールだった。
しかし、これを冷静に追走したグレッグ・ファンアーフェルマートが最高のタイミングでスプリントを開始。
そして、その背後につけていたリワルレディネスのカンプが、これを上回る爆発的なスプリントでラインを切った。
プロコンチネンタルチームによる金星勝利。これは、あの劇的な横風分断を潜り抜けたチームとしての実力の高さによるものだった。
最終ステージはアップダウンの続く丘陵コース。6秒差でローレスを追いかけるディフェンディングチャンピオンのファンアーフェルマートにとってはチャンスとなるステージだった。
それゆえに、イネオスは先手を打った。
残り21km。最後の山岳ポイントとなるオトリーシェビンの登りで、クリス・フルームがペースアップ。これについていけたのはチームメートのエディ・ダンバーとファンアーフェルマート、カンプといった面々であり、総合リーダージャージを着るローレスの姿はなかった。
そして、登りの頂上を越えて、ダンバーがアタック。と同時にフルームはペースを落とし、遅れてついていきたローレスたちと合流する。
ファンアーフェルマートとカンプは抜け出せず、ダンバーだけが独走の末に逃げ集団に合流。その後もダンバーは積極的に前を牽いて、メイン集団との距離を縮めないように踏み続けた。
ダンバーとローレスとのタイム差は10秒。ファンアーフェルマートとは4秒しか差がない。
このままダンバーが捕まえられずに逃げ切れば、そのまま逆転総合優勝の可能性が出てくる。そしてファンアーフェルマートと同じ集団内には総合リーダーのローレス。イネオスはこの先手をうつ動きによって、選択肢を増やすことに成功した。今年のヘラルドアン・ツアーなどでも見せた、実に巧みな戦略である。
もちろん、これですごすごと負けを認めるCCCチームではない。残り5.5km。カテゴリのついていない最後の登りで、ファンアーフェルマートが一気にアクセルを踏んだ。
しかし今度は、ローレスは喰らいつく。そしてカンプはこれについていけない。
先頭に逃げ集団も次々と崩れ落ち、唯一残ったのがダンバーのみ。このダンバーが、最後、ローレスを助ける大いなる役割を果たす。
すなわち、ローレスとタイム差なしの総合2位につけるカンプに追い付かせないための、残り5kmの超牽引。ここまでもずっと逃げてきたダンバーの、死力を尽くしたアシストが光った。
結果、この3名による逃げ切りが決まり、最後はスプリント力で勝るファンアーフェルマートが先着。
しかしローレスもきっちりこれに貼り付き、2位ゴール。大きなガッツポーズを見せるファンアーフェルマートの背後で、小さく右腕でガッツポーズを作った。
クリストファー・ローレス、総合優勝。ただのスプリント力だけでなく、チームの力、戦略、アシスト、そして彼自身の、最後に喰らいついた意地の登坂力の賜物であった。
チーム・イネオス。新チームとして初めて挑んだ地元英国のステージレースで、見事な勝ち方をしてみせた。
彼らは今後も最強で居続けるのだろうか。
ツアー・オブ・チョンミンアイランド(2.WWT)
ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:中国 開催日:5/9~5/11
中国・上海の長江河口に浮かぶ「崇明(チョンミン)島」で開催される3日間のステージレース。場所が場所だけに、登りなど一切なるオールフラットな完全スプリンター向けコースが3日間続く。よって、ウィメンズワールドツアーとはいえ、正直そこまで強力なチームが出場していなかったり、出場していたとしてもその人数が多くなかったりする。
そんな中で完全制覇を成し遂げたのがウィーベス。
まだ20歳の若手ではあるが、今年すでにドリダーフス・ブルージュ・デパンヌとヘント~ウェヴェルヘムという2つのスプリンター向けワールドツアーレースで、当代最強スプリンターのキルステン・ワイルドに喰らいついての2位を立て続けに取っている。今回もまぐれなどでは決してなく、実力をしっかりと反映したものである。
それでは、チームのトレインも完璧だったかといえばそうでもない。いずれのステージも、ゴール前の段階では彼女は1人だった。もちろん、チームメートはラスト500mまで彼女を最適なポジションに運び上げるうえで非常に重要な役割を果たした。しかし残り500mに関して言えば、ウィーベスは巧みにライバルたちの番手を乗り継いで、そして最後に爆発的なスプリントを見せたのだ。
まるでサガンのような器用さ、そして勝負勘の鋭さ。
彼女はこれからも間違いなく、女子ロードレース界のトップスプリンターとして名前を売り続けるであろう。
ジロ・デ・イタリア(2.WT)
ワールドツアークラス 開催国:イタリア 開催日:5/11~6/2
詳細は下記を参照のこと。
長い3週間だった。その中で数多の英雄が生まれ、そして消えていく。激動が続き、常に「最強」が2転3転するような展開。
派手さでいえば、昨年ほどではなかっただろう。ヴィヴィアーニとサム・ベネットの頂上対決は4vs3の接戦を見せ、サイモン・イェーツの爆走からクリス・フルームの逆転劇。そこに喰らいつくトム・デュムランなど・・・。今年はヴィヴィアーニもガビリアも早々に大会を去った。最も多くてアッカーマンとユアン、ビルバオ、カラパスの2勝のみ。総合有力勢は山岳でお見合いを繰り返し、保守的な動きが続いた。
そこに派手さはなく、その意味で今大会を昨年と比べて面白くなかったと評価する向きがあるのは非常によくわかる。
一方で、そんな展開だからこそ生まれた大逃げの連続の中で、普段はアシストとしての働きに終始するようなベネデッティやカタルドが勝利を掴んだり、積極的な逃げを連発していった若手としてチッコーネやピーターズやチーマが優勝したり。
そして最後は、混戦の中で疲弊した優勝候補たちを出し抜くべく、最後の数日間を最終日に焦点を当てて足を貯め続けていたハガが大金星を挙げる。彼もまた、普段は決して目立たないアシストとしての姿を演じ続けていた男だった。
そして、頂点を掴んだのもまた、若く、そしてアグレッシブな走りを見せ続けた男、カラパスだった。第13・14ステージでの彼の挑戦的なアタックが総合優勝の最大の要因であったことは言うまでもない。牽制状態に陥った優勝候補たちの中で、あくまでも挑戦者であった彼だからこそできたこの動きが、歴史的な勝利を作り上げたのだ。
そして、彼がそこまで自由な動きをとれたのは、ミケル・ランダの存在あってのものである。実に見事なまでに機能したダブルエース。やればできるじゃないか、モビスター。
結果として、実に面白いジロだった。今年も。昨年とはまた違った意味で。
カラパス以外は悔しさの残るリザルトだったに違いない。とくにログリッチェ、ロペス、そしてサイモン・イェーツ。
3人とも、いつグランツールの頂点に立ってもおかしくない男たちだ。この経験を踏まえ、次のブエルタ、または来年のジロでの大躍進を期待する。
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ツアー・オブ・カリフォルニア(2.WT)
ワールドツアークラス 開催国:アメリカ 開催日:5/12~5/18
詳細は下記を参照のこと。
昨年に続き、ツール・ド・ラヴニール覇者が制覇。しかし、昨年のベルナルは当初よりずば抜けていることが予想されていたからわかるものの、まさかポガチャルまでもがそれに匹敵する才能の持ち主だったとは・・・というのはすでにアルガルヴェ総合優勝の頃からなんとなくは分かっていたけれど、しかし。
ただ、彼だけでなく、例年通りといえば例年通りだが、若手の対応著しいカリフォルニアだった。いや、例年以上か。何しろ、表彰台の平均年齢は21.7歳。セルジオ・イギータとカスパー・アスグリーンといった若手たちの実力の高さが常に想像を超えるものであった。初日のサガン以外の勝者が全員25歳以下ってどうなんだ。最終日の覇者ボルも、その勝ち方があまりにも強すぎて、驚嘆以外のなにものでもない。
(勝ち方の詳細は上記リンクで詳しく説明しているんで参照のこと!)
やっぱりカリフォルニアは面白い。これから伸びる若手をチェックするうえではこれ以上ないレースだ。ジロの裏側でかつ早朝なので見るのはなかなか大変だけれども・・・来年以降も見逃してはならないレースだ。
ダンケルク4日間レース(2.HC)
ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:フランス 開催日:5/14~5/19
北フランス、ベルギー国境にも近いダンケルク地方を舞台にして行われる6日間のステージレース。北のクラシックの残り香のあるステージレースで、スプリンター向けの前半戦はフルーネウェーヘンの圧勝。そしてクラシックの気配濃厚の後半戦では、フルーネウェーヘンの発射台かつチーム随一のクラシックスペシャリストでパリ~ルーベでも7位のテウニッセンがその強さを見せつけた。
いずれも、チームとしての力がもう、ユンボ・ヴィズマが圧倒的過ぎていた。それはそうだ。ジロの裏側でワールドツアーも4チームしか出ていないこのレースで、フルーネウェーヘン&テウニッセンだけでなくトニー・マルティンまで連れてきているんだから、下手したらそのままグランツール走れる面子なのである。
第1ステージは3位にテウニッセンが入ったり、最終日は2位にフルーネウェーヘンが入ったりと、その圧勝ぶりがうかがえる。そんな中で1勝したコカールは十分頑張った方・・・かな。
🇳🇱@MikeTeunissen of 🇳🇱@JumboVismaRoad wins stage 6 of 🇫🇷@4JDDunkerque #4JDD (📺@CorsaireTV) pic.twitter.com/1ho99po0KI
— World Cycling Stats (@wcsbike) May 19, 2019
最終日は圧倒的過ぎて謎ガッツポーズしちゃうほど。
そしてその後ろで「もういいか」って感じでフルーネウェーヘンが普通にスプリントで差して2位。つよすぎ。
ツアー・オブ・カリフォルニア・ウィメンズレース(2.WWT)
ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:イタリア 開催日:5/16~5/18
ツアー・オブ・カリフォルニアの最終3ステージと同日に、距離は短いもののほぼ同じフィニッシュを採用した3日間のステージレース。
初日は男子レースの第6ステージにあたり、ゴール前の急坂も同じように使うため、ピュアスプリンターたちが残れない展開の中、ある程度の登りもこなせるヴァルサモやアレニス・シエラを突き放し、世界王者が独走に持ち込んだ。
第2ステージはマウント・バルディの登りを同じように使用したクイーンステージ。前年覇者ホールがファンデルブレッヘンとワンツーフィニッシュ。ライバルたちを30秒以上突き放したファンデルブレッヘンは、今大会の総合優勝をほぼ確実なものとした。
最終日は純粋なスプリントステージに。初日に悔しくも勝利を逃したヴァルサモがリベンジ達成。
最強チームとして名高いプールスドルマンスがその力をはっきりと示した大会となった。
エマクメーン・ビラ(2.WWT)
ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:スペイン 開催日:5/22~5/25
バスク地方を舞台にした、1998年初開催の伝統あるレース。エマクメーン・ビラとは、バスク語で、「女子レース」を意味する。正式名称ではⅩⅩⅩⅡなどがつくが、これは第32回を意味する名称で、毎年その数字が増えていく。
バスク地方を舞台にするため、当然アップダウンの激しい丘陵・山岳コースとなる。
唯一のスプリントステージとなった初日は、昨年のジロ・ローザで2勝している一流スプリンター、ドールが優勝。鎖骨骨折により春のクラシックの大半をパスすることとなった借りを返す勝利となった。
第2ステージはアップダウンの激しいパンチャー向きステージ。残り19kmでタイラー・ワイルスが独走を開始するが、最終的にこれを捕まえた集団の中から、ツアー・ダウンアンダー3連勝中のトップパンチャー、スプラットが最後の登りスプリントを制する。
ライバルたちを引きちぎり、力でねじ伏せた勝利であった。総合リーダージャージも着用。
第3ステージは全体的にフラットながら、終盤に2つの登りが設けられ、最後は頂上フィニッシュとなるステージ。その1つ目の登りオパクア(登坂距離4.6km、平均勾配7.6%)で前日も逃げていたワイルスがアタック。すぐさま集団とのタイム差を30秒近くにまで広げ、最後の登りサンタ・テオドシア(登坂距離2.5km、平均勾配10.2%)の強烈な登りを独りで駆け上っていった。
前日と同じ残り20kmの早めの攻撃が、この日は成功を収めた。
後続に追い付かせることなく、悪天候の中、ワイルスは2年ぶりの勝利を獲得。
今年新創設となったトレック・セガフレード・ウィメンの初ワールドツアー勝利となった。
2位には同じトレックのロンゴボルギーニ。山岳賞ジャージもキープ。
総合リーダーのスプラットも31秒遅れの5位につけ、総合リーダーは守り切った。
しかしロンゴボルギーニとのタイム差は12秒にまで縮められ、いよいよ最終ステージに突入する。
最終ステージは4つの山岳ポイントが用意されたハードな丘陵ステージ。 距離も155.8kmと長く(他の3ステージは100km程度だった)、明確なクイーンステージとして位置づけられた。
ゴール前18km地点にある最後の登りアセンツィオ(登坂距離6.1km、平均勾配6%
)。その頂上まで残り500mで、ロンゴボルギーニがアクセルを踏んだ。スプラットは当然これに追随しようとするが、ロンゴボルギーニの勢いは凄まじく、前日に続きスプラットはこれについていくことができなかった。
その後の下りを独走し、ラスト9kmの平坦に辿り着いたとき、ロンゴボルギーニはスプラットから20秒のリードを得ていた。
スプラットのチームメートであるアネミエク・ファンフルーテンは全力で集団を牽引してロンゴボルギーニを追いかけるが、最後、わずか4秒届かず、ロンゴボルギーニを捕まえ損ねてしまった。
スプラットはこの日も5位入賞。そして、ロンゴボルギーニはボーナスタイム10秒をそっくりそのまま手に入れ、結果として—―スプラットとの12秒差をひっくり返し、2秒差で逆転総合優勝を果たした。
加えてポイント賞と山岳賞も独占。チームとしても非常に大きな成果を成し遂げた。
5月の女子ワールドツアー・ステージレース3連戦を終え、ウィメンズ・ワールドツアーランキング首位は引き続きファンフルーテンが保持。
いよいよ女子版ジロ・デ・イタリア、通称ジロ・ローザの時期が近づいてくる。
ツアー・オブ・ノルウェー(2.HC)
ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イギリス 開催日:5/28~6/2
ハンマー・スタヴァンゲルの舞台スタヴァンゲルからスタートする6日間のステージレース。全体的にパンチャー向けのレイアウトが多く、今回もノルウェー人3強(クリストフ、ボアッソンハーゲン、ハルヴォルセン)に混じってボル、そしてニューウェンハイスという若手のパンチャータイプスプリンターの台頭が目立った。
とくにボルはカリフォルニアの勝利がまぐれではないことを示した。本当に、若手スプリンターは次々と才能が輩出されていく。中心的な選手は毎年入れ替わってくる。今年のアッカーマンのような活躍を、来年はボルが果たしてくれるかもしれない。
そしてニューウェンハイス。シクロクロスではオランダでマチュー・ファンデルポールの次ぐ才能とすら言われるこの男の本格的ロードレースデビューとなった今年、主戦場のはずの北のクラシックを病気?怪我?によってパスしてしまった彼は、なんとか復帰したカリフォルニアとこのノルウェーできっちりと実力を示すことができた。
目下、ドーフィネに出場の彼が、今シーズンの残りどんなレースに出るかはわからないが、たとえばツール・ド・ポローニュやビンクバンクツアーとか、ツアー・オブ・ブリテンであれば、さらなる活躍を見せてくれそうな気がする。
もう1人、注目の走りを見せてくれたのが同じくネオプロ、元SEGレーシングアカデミーのアッフィニ。独走力を武器とする彼だったが、今年ミッチェルトンは彼に、マッテオ・トレンティンの発射台のとしての役割を与えることが多かった。
その意味を測りかねていたのだが、今回、逃げ切りに成功した5名の小集団スプリントの中でしっかりと先手を取った。チーム首脳陣の見立ては間違っていなかったのだ。
彼もまた、あらゆる可能性を持ち、今後の進化が実に楽しみになる選手だ。
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