いよいよ開幕する、今年最後のモニュメント、イル・ロンバルディア。
この日に向けて、先週末から立て続けに開催されてきた「前哨戦」たちの結果を踏まえ、6名の注目選手たちをピックアップしてみた。
もちろん、予想はあくまでも予想。そもそも、前哨戦とはいえ、それぞれ個性的な特徴をもち、イル・ロンバルディアとはまた違ったレースたちばかりなので、参考にできるところとそうでないところは多分にある。
それらを踏まえた上で、イル・ロンバルディア本戦を観る上で少しでも参考になれば幸い。
なお、いずれも10/10時点の暫定スタートリスト上では出場となっている選手たちではあるが、当日本当に出場するかどうかはまだ未定ではあるので悪しからず。
また、表記中の年齢はすべて、2019/12/31時点のものとなります。
↓コースプレビューはこちらから↓
↓前哨戦レースの振り返りはこちらから↓
- プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、30歳)
- マイケル・ウッズ(カナダ、33歳)
- アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)
- エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
- セルヒオ・イギータ(コロンビア、22歳)
- ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
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プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、30歳)
チーム・ユンボ・ヴィズマ所属
ブエルタの疲れはどこへやら。ジロ・デッレミリアとトレ・ヴァッレ・ヴァレジーネ、2つの「前哨戦」を制し、最も完璧な状態でロンバルディアに挑む。
昨年も、ムーロ・ディ・ソルマーノを越えて最終局面に至った4名のうちの1人で、そのときはチヴィリオの登りでピノとニバリに突き放された。しかし今年の彼であれば、同じような轍は踏まないだろう。
ロンバルディアはときに下りの能力が勝敗を分けるが、その点でもログリッチェは優位。昨年の悔しさを晴らすと共に、名実ともに今年最強の選手であることを示せるか。
マイケル・ウッズ(カナダ、33歳)
EFエデュケーション・ファースト所属
ジロ・デッレミリア2位、そしてミラノ〜トリノ優勝。彼もまた、前哨戦で絶好調な男だ。
昨年ものこの時期は調子が良かった。ブエルタの激坂フィニッシュでステージ優勝し、山岳コースとなったインスブルック世界選手権で3位。続けて出場したジロ・デッレミリアとトレ・ヴァッレ・ヴァレジーネで共に4位。しかしイル・ロンバルディア本戦ではエースをリゴベルト・ウランが担ったことで、彼自身にはチャンスがなかった。
今年は満を持してエース。しかも、昨年以上に完璧な状態で。ミラノ〜トリノでは終盤で、度重なるアタックで常に先行を取りながらも、最後まで戦い抜くだけのガッツを持っていた。
もちろんロンバルディアは山頂フィニッシュではない。とはいえ、昨年はムーロ・ディ・ソルマーノの激坂で勝敗が分かれた。今年も同様の展開になれば、ウッズにチャンスは回って来やすいだろう。
実は、イル・ロンバルディア当日は彼のバースデー。最高のバースデー勝利を見てみたくもある。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)
モビスター・チーム所属
ジロ・デッレミリア5位、GPブルーノ・ベヘッリ2位、ミラノ〜トリノ2位。相変わらず元気すぎる39歳。このままの勢いでイル・ロンバルディアもしっかりと上位に入ってきそうで恐ろしい。
ただ、今年はなかなか勝てていない。14勝もした昨年に比して、今年は5勝。対して2位は13回。強いのだけど、あと一歩で勝てない、というのが今年は目立った。
イル・ロンバルディアについても、過去に2回の2位は経験しており、その頂点に立ったことはない。今年も上位には入れそうではあるが、頂点まで得られるかというと・・・どうだろう。
エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
チーム・イネオス所属
コロンビア人でありながら、イタリア人の名伯楽ジャンニ・サビオに見出されアンドローニ・ジョカトリにて経験を積んでいた彼にとって、イタリアは第二の故郷ともいうべき場所。それがゆえに、ツール・ド・フランス覇者でありながら、このイタリア秋のクラシックには並々ならぬ思いを持って参加している。
しかし、ジロ・デッレミリアとミラノ〜トリノではそれぞれ9位・6位と期待ほどではない結果に。グラン・ピエモンテでは優勝したが、これはある意味では、他チームが2日後の本戦に向けて主戦力を出し惜しみした結果と言えなくもなく、彼の実力をこれだけで測ることは難しいだろう。また、山頂フィニッシュではないイル・ロンバルディアは、ミラノ〜トリノや今年のグラン・ピエモンテに比べるとベルナル向きではない。
しかし昨年は、ムーロ・ディ・ソルマーノを越えたところでログリッチェと共に先頭のピノ、ニバリに追いついた。そのあとのチヴィリオの登りで彼らに突き放されたのもログリッチェと同様ではあったが、昨年と同じハングリーさ、アグレッシブさを忘れていなければ、今年もまた、同様に勝利のチャンスを得られるかもしれない。
セルヒオ・イギータ(コロンビア、22歳)
EFエデュケーション・ファースト所属
ほんの半年前まではコンチネンタルチームに所属していた。それが、5/1からEF入りし、早速のツアー・オブ・カリフォルニア総合2位。さらにはツール・ド・ポローニュ総合4位、ブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝、直近のジロ・デッレミリア3位にトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ5位と絶好調。
今大会は、マイケル・ウッズがエースを担う可能性が高いため、彼はあくまでもアシストとして走ることになるだろう。それでも、デッレミリアはウッズとのツースリーでゴールしたし、展開によってはロンバルディアでも重要になるスプリント力はイギータの得意分野である。
たとえばムーロ・ディ・ソルマーノやチヴィリオでウッズが勝負を仕掛け、後続の集団にイギータを残す。万が一集団に捕まえられてしまった場合(そしてそれは時折起こる)、イギータがスプリント勝利かカウンターアタックを狙う。
他チーム以上の選択肢をもったダブルエースのチームと呼んで差し支えはないだろう。
ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
グルパマFDJ所属
FDJとしては本来は当然、ディフェンディングチャンピオンのティボー・ピノを出したいところであっただろう。しかし彼は、ツールでの悲劇的なリタイアからまだ立ち直ってはいない。代わりにエースとして抜擢されたのは、いまやこのチームのセカンドエースであることは疑いようのない男、ゴデュ。前哨戦GPブルーノ・ベヘッリ4位、昨年もピノが勝ったミラノ〜トリノは5位と、悪くない結果だ。
そして、彼の強さは、他の誰にも負けない執念である。ミラノ〜トリノで見せた、4度、5度と繰り返されたアタックの数々は圧巻。たしかに繰り返せば繰り返すほどその持続時間は弱まり、脅威ではなくなったが、それでももう限界まで迎えているはずなのに、その表情を苦悶に歪めながら、我々の想像を超える形でアクセルを踏み続けた。
その執念が、このイル・ロンバルディアで結果となって結実してくれれば嬉しい。
以上、6名の選手たちをピックアップしてきたが、ほかにも、トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ6位、そしてミラノ〜トリノの終盤で突如として先頭集団に追いついてきたティシュ・ベノート(ロット・スーダル)や、ジロ・デッレミリア4位、GPブルーノ・ベヘッリ5位、そしてミラノ〜トリノ7位とかなり安定した成績を出してきているバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、もしくはプロコンチネンタルチームの中からも、トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ2位でスプリント力が持ち味のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ネーリソットーリ・セレイタリアKTM)なんかは注目すべき選手だ。
ミッチェルトン・スコットからはクロアチアのレースで総合優勝し、ミラノ〜トリノでも3位と復調しつつあるアダム・イェーツに、世界選手権前のブルターニュ・クラシックやカナダ2連戦からこっち、調子を上げ続けているジャック・ヘイグも期待できる選手たちだ。エステバン・チャベスはイル・ロンバルディア優勝経験者であるが、結局のところ今年も復活とはいかなかったようだ。現状では期待するのは難しい。
注目選手を探し始めればキリがないが、だいたい上記の11名くらいを中心にレースが展開されると予想する。
もちろん、ミラノ〜トリノのケビン・リベラやグラン・ピエモンテのクレモン・シャンプッサンのような、意外な選手たちの上位入賞もまた楽しみである。その意味では、ファウスト・マスナダ(アンドローニ・ジョカトリ)、ジョヴァンニ・カルボーニ(バルディアーニCSF)、アレクサンダー・ウラソフ(ガスプロム・ルスヴェロ)、ジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)あたりの若手が、優勝とまでいかなくとも、TOP10に入ってくれれば驚きだ。
泣いても笑ってもこれが今年最後のモニュメントであり、ワンデーレースとしては最後のワールドツアーレース。
今年の総決算たる走りとして相応しいものを、出場する全選手に期待したい。
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