Class:ワールドツアー
Country:ベルギー
Region:ワロン地域
First edition:1892年
Editions:105回
Date:4/28(日)
「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」とも呼ばれる、世界最古のクラシックレース。
起伏や登りを多く含むレースとして知られるアルデンヌ・クラシックの中でも、とくにその登り、アップダウンの連続が厳しいレースとして知られ、レース全体の総獲得標高は4000mを超えることも。
ゆえに過去の優勝者も、他2つのアルデンヌ・クラシックと比べても、グランツールなどでも活躍するクライマーなどが名を連ねることも多い、厳しいレースであることがわかる。
世界5大クラシックレースの「モニュメント」の1つでもある。
今回はそんな、春のクラシックシーズンのクライマックスを彩る最重要レースについて、徹底的にプレビューしていく。
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今年のコースについて
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのレースとしての特徴はすでに述べた通りである。昨年までは、今年のラ・フレーシュ・ワロンヌのスタート地点にも使われたアンスの街をゴールとし、そこに至る長い登りにおいてクライマーたちの熾烈な争いが繰り広げられた。
しかし今年は、このフィニッシュ地点に大きな変革がもたらされた。なんと28年ぶりに、このフィニッシュ地点が変更されるというのだ。
新たなゴール地点はリエージュ。すなわち、レース名の通りにリエージュからバストーニュに至り、再びリエージュに戻ってくるというコースになったのだ。
この変更により、これまでは終盤の勝負所であった登りコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンが最後の登りとなり、ここからゴールまでは15㎞の下りと平坦ーーまるで、ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベのような、北のクラシックめいた変更となった。
似たような変更は2年前のアムステルゴールドレースにももたらされた。同じく終盤のカウベルグでの一発勝負といった感のあったアムステルは、変革によりそこから3年、毎年残り30〜40㎞で決定的な動きが巻き起こるレースとなった。
今回のリエージュの変更は、昨年同時期の現UCI会長ダヴィッド・ラパルティアンによる「リエージュは最近ひどくステレオタイプなレースになった」発言の影響もあるかもしれない。
いずれにせよ、この変革が何を生み出すのか。勝負所が終盤にないことから、残り数十㎞の地点からの予測不能なアタックを誘発するのか、あるいは逆に、だらだらと大きめな集団の中でのスプリント勝負になってしまうのか。あるいは最後の15㎞での思わぬ伏兵の飛び出しからの逃げ切り勝利もあり得そうだ。
ただ1つ言えるのは、新しいリエージュがもたらすのはこれまでのリエージュの勝者ラインナップからは大きく外れた選手になり得る、ということだ。
それでは、このことを踏まえて注目すべき選手を確認していこう。
注目選手
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
引き続き今年絶好調の男。ラ・フレーシュ・ワロンヌも問題なく連覇。
リエージュの今回のコース変更は、ストラーデ・ビアンケでもアムステル・ゴールドレースでも激坂からのアタックで抜け出してそのまま長距離逃げることのできていた彼にとっては、逆にプラスになる出来事だろう。もしも抜け出せない事態になるor捕まえられても、飛び抜けたスプリント力を前にすれば、バルベルデすら敵わない可能性は十分にある。
今大会最大の優勝候補。
ヤコブ・フルサング(アスタナ・プロチーム)
彼史上、最高に輝いているシーズンかもしれない。リザルトだけみれば、ドーフィネ総合優勝を果たした2017年も十分凄いが、今年はその走り方がずば抜けている。ストラーデビアンケも、アムステルゴールドレースも、抜け出すべきときに抜け出すその勝負勘が卓越しまくってる。ただし、そこには常に、アラフィリップの影が・・・
今年の彼の躍進はアスタナのチーム力の高さも大きな要因。アムステルでは残念な落車に見舞われたルツェンコも今回の優勝候補だし、ウルフパックに負けないチーム力で、アラフィリップを打倒したいところ。
ミカル・クウィアトコウスキー(チーム・スカイ)
得意なはずの北のクラシックもパスし、今年はアルデンヌに向けて全力投球中のクウィアトコウスキー。ここまでの2戦の調子は、リザルトだけ見ると決して、「めちゃくちゃ調子が良い」わけではない。
が、アムステルゴールドレースではただ強いだけでなくクレバーな走りも見せていた。2年前と同じように、最初のアタックには反応せずにブリッジを仕掛けるためにマッテオ・トレンティンとの2人旅を開始した。登りでは明らかにクウィアトコウスキーの方が優勢だったが、ギリギリまでトレンティンとの伴走を続けた。そして終盤にシャフマンが後ろから追い付こうとしていたタイミングでついに発車。残り2km。先頭のアラフィリップとフルサングとのタイム差は20秒だった。
そのままゴールまで残り700mで2人に追い付く。その時のスピードは彼らを圧倒するものであった。
その先はクウィアトコウスキーの勝ちパターンだった。ミラノ~サンレモやE3で、アラフィリップやサガンを出し抜いたときのような。冷静な判断力と仕掛け所の選び方、戦術眼は、絶好調のアラフィリップをもってしても、簡単に倒せる相手ではなかったかもしれない。
その全てを最後の最後に怪物が持って行ってしまわなければ。
今回も、これまでのように純粋なパワーというよりはタイミング、仕掛け所が重要なコースレイアウトになっている。老練なるベテラン、クウィアトコウスキーが、若手を圧倒するタクティクスで、この春のクラシックのオオトリを勝利で飾れるか。
マキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
2017年のアムステルゴールドレースは105位、フレーシュ・ワロンヌは115位。そこから翌年、フレーシュ・ワロンヌでギリギリまで逃げて8位。ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャとジロ・デ・イタリアでは逃げ切り勝利を果たし、飛躍を遂げた。
そして今年。昨年に続きカタルーニャにて絶好調で、集団スプリントの状態でも常に前に抜け出して少しでも良い順位を取ろうというアグレッシブさを魅せる。
そして、バスクでの大覚醒。
この勢いはそのままアルデンヌにも引き継がれ、アムステル5位、フレーシュ・ワロンヌ5位。もはやこれは偶然でも奇跡でもない。彼は今、世界トップクラスのライダーの1人に成長した。
登りへの適性は、激坂も含め十分に高いことは証明されている。そして、エスケーパーとしてのタイミングを見極める能力と独走力も十分。となれば、コース変更された今回のリエージュとの相性もバッチリのはずだ。
勢いの良さを今回も見せられるか?
マテイ・モホリッチ(バーレーン・メリダ)
稀代のアタッカー、エスケーパー。正直、彼の調子を見極めるのは難しい。リエージュ~バストーニュ~リエージュの過去のリザルトは惨憺たるもので、今年のアルデンヌのリザルトの結果も決して良くない。
では走りが微妙かというと、そうでもない。むしろ北のクラシックから合わせて、とにかく積極的な動きが目立つ。常にアタックし、レースを動かそうとしてくる。それが実らないことの方が多いのだが、その姿勢はときおり奇跡を呼び起こす。
今回が例年のレイアウトならば、彼を上位候補に挙げることはないだろう。もっと、今絶好調のランブレヒトや、いつかリエージュを取ること間違いなしのバルデなどを選んでいる。
しかし今回のレイアウトは、期待したくなる。まったく箸にも棒にも掛からぬ結果で終わってしまう可能性も十分あるが、 ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンの登りさえ集団先頭でクリアしてしまえば、あとはそのまま最後までいける男だと思っている。実際、ミラノ~サンレモはそういう走りだった。
頼む、期待している。
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