コースプレビューに引き続き、バスク1周の注目選手たちを紹介していく。
総合優勝候補たちの紹介が中心となるが、一方で、若手の有望株ですでに今年結果を出しつつある選手たちも何名か紹介している。
彼らのこの好調が一時のものに過ぎないのか、それとも今回のバスクでもそれを継続してくれるのか。
今、最も注目すべき若手を追っていくうえでも、参考にして頂ければ幸い。
また、ピュアスプリンターたちが活躍しえないバスク1周においては、トップスプリンターの紹介が難しい。
それでもなんとか集団スプリントに近い形で決着しそうなステージもあるが——その場合も、今絶好調の「あの男」が掻っ攫っていきそうだ。
と、いうわけで、総合優勝候補から若手の総合系、そしてステージ優勝候補者まで、合計10名、注目選手を紹介していく。
↓全6ステージのコースプレビューはこちら↓
- 1.ミケル・ランダ(モビスター・チーム)
- 31.ヤコブ・フルサング(アスタナ・プロチーム)
- 35.ヨン・イサギレ(アスタナ・プロチーム)
- 41.ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- 45.エンリク・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- 81.ゲラント・トーマス(チーム・スカイ)
- 91.アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
- 104.タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)
- 111.ダニエル・マルティネス(EFエデュケーション・ファースト)
- 143.ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
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1.ミケル・ランダ(モビスター・チーム)
モビスターの、ジロにおけるダブルエースの一角となることを予定しているこの男は、今シーズンここまで非常にスローペースな出だしとなっている。
理由は、シーズン開幕戦となったチャレンジ・マヨルカで、いきなりの鎖骨骨折を経験したこと。
そこからの復帰戦となったミラノ〜サンレモをリハビリとして走り、挑んだ最初の本格的なレースがイタリアの1クラスのステージレース、「セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ」。
このレースで彼は総合4位となるが、その原因は総合表彰台を独占したミッチェルトン・スコットに、モビスターが初日のチームTTで27秒を失ったから。
総合首位のルーカス・ハミルトンとランダとのタイム差は22秒なので、まんまこのチームTTの差である。
それはそれで課題ではあるが、とりあえずジロにチームTTはない。
この「コッピ・エ・バルタリ」でランダは、クイーンステージとなった第2ステージの激坂フィニッシュで勝利している。
調子は問題ない。
今回のバスクで、どれだけの走りができるか、注目が集まる。
ランダにとって、バスクは自らの故郷。スペイン以上に重要な舞台だ。
昨年はキンタナとタッグを組んで終盤の山岳ステージでログリッチェ相手にしっかりとタイムを奪った。しかし個人TTで失った1分16秒が響き、最後は1分9秒差でバスク初制覇ならず。
だが今年は苦手なTTの距離が短め&昨年より山がち。そしてログリッチェはいない。
ここで結果を出さないわけにはいかない。
31.ヤコブ・フルサング(アスタナ・プロチーム)
今年絶好調のアスタナは、今回のバスクでもほぼフルメンバーでの参戦となった。7人中5人が今期何かしらのステージレースで総合優勝している。
その中でも絶好調なのがこの男だ。ブエルタ・アンダルシアでは個人TTで2位につけつつ、翌日のクイーンステージでは盤石なチーム力を活かして総合首位ティム・ウェレンスを完全に丸裸に。見事逆転総合優勝を果たした。
ティレーノ~アドリアティコでもクイーンステージで逃げ切り勝利を果たして総合順位をジャンプアップし、表彰台を獲得。ステージレースだけでなくワンデーレースでも、2度目の出場となったストラーデビアンケで積極的な動きの末に2位と大健闘となる。
2年前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝。期待されてエースとして出場したツール・ド・フランスは落車によってチャンスを失う。昨年もエースで出場するが振るわず。今年はイサギレ兄弟が新加入してきたことで、再び自らの立場に危機感を抱いていたところはあるだろう。
その中で今、彼は再び調子の良さを取り戻してきている。今回も、エースナンバーを着用することを許された。
ヨン・イサギレとはまだライバル関係にはあるだろうが、まずは今回、しっかりと結果を残し、現時点では許されているツールの単独エースの座をキープしておきたいところ。
35.ヨン・イサギレ(アスタナ・プロチーム)
ツール・ド・フランスのエース待遇を約束されて意気揚々と創設メンバーの1人となったバーレーン・メリダでは、正直結果を出すことができなかった。後から入ってきた兄のゴルカの方が調子が良かったくらいだ。
そうした中で初期契約の2年が終わるとさっさと移籍。結果的にこれが正解だった。今期ここまでボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナで得意のTTでタイムを稼ぎ、クイーンステージの激坂でもこれを守り切り、総合優勝を掴んだ。
今回のバスク1周もTTが重要な意味をもつステージレース。また、山頂フィニッシュは1つしかなく、ダウンヒルが重要になるステージが2つ。いずれも彼の得意とする分野だ。
エースナンバーはフルサングが着用し、彼もまた当然、総合優勝候補の1人だ。一応現時点では、ツールはフルサング、ヨンはジロとブエルタと、棲み分けは決まってはいる様子。
それでも、状況次第ではどう変化するかわからない。ダブルエース体制を維持しつつ、狙える勝利は貪欲に狙って行こう。
ほかにもアスタナはビルバオ、ゴルカ・イサギレ、ルツェンコ、ルイスレオン・サンチェスとみんな調子が良い。オマール・フライレも、逃げ切り勝利から山岳アシストまでそつなくこなせる。
今大会、間違いなく最強チーム。うまく噛み合えば、どのチームも手も足も出ない圧倒的な勝利を収められる、はず。
41.ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
総合ではなくステージにおいて大きな期待を寄せたい選手。昨年も第1・第2ステージで連勝し、その後の調子の良さを予感させるような強さを見せつけた。
今回も、ピュアスプリンターステージが存在せず、それでもクライマー以外が残れそうな第2・第3・第4ステージはいずれも、スプリンターたち以上にこのアラフィリップにこそ向いているステージと言えそうだ。そのまま、昨年はログリッチェに奪われたポイント賞まで取ってしまいたいところ。
今の彼はまさに覚醒状態。彼が「やれる」と強く感じたことはすべて実現してしまいそうな勢いだ。この自信でもって今回のバスクも制覇し、そのまま秋の世界選手権に向けても弾みをつけてほしいところ。
45.エンリク・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで台頭し、総合2位を獲得した驚きの男。しかしその伏線はこのバスクにもあった。昨年のバスクの最終日に逃げに乗ってそのまま追いすがるミケル・ランダを振り切って優勝した彼は、総合順位を一気に12位から6位にまで引き上げ、新人賞を獲得した。その後、ツール・ド・スイスでも総合4位となり、そしてブエルタでの結果に繋がった。
今年はさすがに昨年よりもずっとマークは厳しくなるだろう。今度は真正面からぶつかって、総合上位を狙う必要がある。ヴォルタ・アン・アルガルヴェではワウト・プールスなどと張り合う走りを見せて総合4位。カタルーニャは途中まで苦しい走りを見せていたが、最終日のバルセロナ周回アップダウンステージで2位ゴールを果たし総合9位には入り込んだ。まだ本調子ではなさそうだが、初参戦のツールに向けた足試しとして見ていきたい。
なお、今回、クイックステップの中でもまあ登れる方のデヴェナインスやヴァコッチ、セリーなどを連れてきてはいて、それは良いのだが、いずれも現時点ではツール参加予定がなさそうなのが気になるところ。
今年のツールはマスの総合のためのチームを作るよ!と年初に言っていた気がするが、それは本当だろうか・・。
81.ゲラント・トーマス(チーム・スカイ)
登坂力はもちろん、ログリッチェ不在の中、最もTTでタイムを稼げそうな総合系ライダーということで実力だけ見れば総合優勝候補。
あとは、彼自身が本気で走るかどうか。
昨年までは2月3月ですでにステージレースの総合争いを演じていたが、どうやら今年は完全に「フルーム待遇」のようで、そのイメージでいけば今回も彼は本気出さなさそう。
だが、本気さえ出せば随一の総合優勝候補。うーん、予想が難しい。
もちろんクウィアトコウスキーやデラクルスなどチームメートもかなり強いが、彼らが総合優勝を狙えるかと問われるとうーん、なのでなんとかトーマスに頑張ってもらいたいところ。
91.アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
昨年ツールに単独エースとして臨みながらも悔しい結果に終わってしまったアダム。しかし今年はここまでかなりの絶好調。苦手だったTTも決して悪くない結果で、ツールでのリベンジに向けては着々と準備も進んでいる模様。
チーム体制も十分。ニエベやハウスンはもちろん、ツアー・ダウンアンダーやカデルレースでダリル・インピーを強力にアシストしつつ、直近のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリでは総合優勝を果たしたルーカス・ハミルトンの山岳アシスト力には期待したい。
また、ピュアスプリンター向きではないスプリンターステージばかりのバスクでは、ミヒャエル・アルバジーニによるステージ勝利も狙っていける。事実、バスクでも過去2勝、そのうちの1勝は2年前に果たしている。
104.タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)
昨年のツール・ド・ラヴニール覇者。とはいえ、ベルナルのような活躍はさすがにそう多くはないだろう——と思っていたら、まさかのアルガルヴェ総合優勝。決してレベルの低いレースではない。プールス、マスなどが本気の走りをする中で、TTも含めてその強さを見せつけた。
(ポガチャルのアルガルヴェでの走りについては以下の動画が参考になる)
もちろん、チームとしての本来のエースは、過去総合2位が2回(しかもいずれもTTだけが問題だった)のセルジオ・エナオ。そうでなくてもダン・マーティンがおり、本来であればポガチャルはアシスト役に過ぎないだろう。
しかし初日のTTでの結果次第では、ポガチャルにもある程度の自由が与えられるかもしれない。密かに期待しておきたい選手だ。
111.ダニエル・マルティネス(EFエデュケーション・ファースト)
感動のロンド制覇を成し遂げたEFエデュケーション・ファースト。
今年間違いなくノリに乗っているこのチームが次に目指すのは、ここバスクの地にて若きコロンビアンライダー、マルティネスによる総合上位である。
元ウィリエールで昨年から現チーム入り。
昨年はツアー・オブ・カリフォルニア総合3位とベルナルにも負けない走りをしてみせたが、今年は国内選手権個人TTで前年覇者ベルナルを破り優勝。
そのTT能力の高さは今年のパリ~ニースでも発揮され、区間5位。
そしてクイーンステージのコル・ド・テュリーニ山頂フィニッシュでは、サイモン・イェーツ、ミゲルアンヘル・ロペスを破ってプロ2勝目を遂げた。
総合では18位だったが、第1・第2ステージの横風問題によって7分以上のタイムを失っていたことを考えれば、実は悪くない結果だと思われる。
それらをチームもよく理解しており、今回、当初はマイケル・ウッズがエースで出場するはずだったところを、急遽このマルティネスがエースナンバーをつけて臨むことに。
まずはどれほどの結果を残せるか。
143.ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
2016年ツール・ド・ラヴニール覇者。
昨年はティボー・ピノのアシストとして見事な働きをしてみせていたが、今年のUAEツアーでエースを担い、あらゆるライバルを突き放すプリモシュ・ログリッチェの断続的な攻撃にしっかりと喰らいつき続けていた。
シーズン序盤とはいえ、トップクライマーたちに張り合えるだけの走りをしてみせたのだ。
2015年ラヴニール覇者のマルク・ソレルは2018年のパリ~ニースで総合優勝という形で大成した。
ならば、今度はゴデュの番か。
とはいえ、さすがに錚々たるメンバーの集う今大会、彼が総合表彰台の頂点に立つのはさすがに厳しいだろう。
それでも、もしも表彰台の2番目か3番目に登ることくらいは、夢見ても許される気がする。もちろんエースナンバーのモラールも、非常に優れたクライマーではあるけれど・・。
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