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王者アールツと新星イゼールビットの激戦!ーー2019-2020シーズンUCIワールドカップ開幕戦「アイオワ・シティ」レビュー

いよいよ今年のシクロクロスシーズンも本格的に幕を開ける。

まずは3大シリーズ戦の1つ、UCIワールドカップの開幕だ。例年通り北米を舞台にこの9月から始まり、その初戦は「アイオワ・シティ」である。

 

昨年まではU23カテゴリで活躍し、2度の世界王者に輝いているエリ・イゼールビット(ベルギー、22歳)が今年からエリートカテゴリで参戦。

ツールでの負傷により戦線離脱しているワウト・ファンアールト、ロード世界選手権に集中しまだシクロクロスシーズンに入っていないマチュー・ファンデルポールは欠場するものの、昨年のワールドカップ覇者かつベルギー王者のトーン・アールツ(ベルギー、26歳)は参戦し、初戦から激戦が期待された。

 

今回はその「アイオワ・シティ」の激戦を簡単に振り返っていく。

 

↓シクロクロスの基礎知識についてまとめた昨年の記事はこちら↓

www.ringsride.work↓昨年のワールドカップについてまとめた記事はこちら↓

www.ringsride.work

 

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↓実際のレース映像はこちらから↓

www.youtube.com

 

スタートライン最前列に並んだのは、左からコルネ・ファンケッセル、クィンティン・ヘルマンス、マイケル・ファントーレンハウト、ベルギー王者のトーン・アールツ、ローレンス・スウィーク、ラース・ファンデルハール、ジャンニ・フェルメールシュ、そしてエリ・イゼールビット。

スタート直後はファントーレンハウトやヨリス・ニューエンハイスらが先頭を走る姿を見せていたものの、1週目後半の下り区間に入ったあたりからトーン・アールツが先頭に。これをイゼールビットが追いかける展開となった。

 

さすが王者というべき、アールツの実力は圧倒的であった。パワー、そして隙の無い安定したバイクコントロール。彼が少しペースを上げさえすれば、ほとんどのライバルたちがいとも簡単に突き放されるほどであった。

 

また、アールツがライバルたちに差をつける定番のポイントとして、コース序盤の登りセクションがある。

そこで彼はほとんどバイクを降りずに駆け上がることが何度かあったが、他のライバルたちは最初からバイクを降りて駆け上がるので精一杯であった。そこで差がついてしまう。

 

だが、イゼールビットは違った。彼は常に、アールツのペースアップに食らいついていったのだ。

そして登りセクションでは彼もバイクを降りるが、そこからバイクを押しながら走ったり担いで走ったりするそのスピードも速く、アールツとの差をそこまで開かずに済んでいた。

 

そして、開いたギャップも、そのあとの平坦セクションの加速で一気に埋めていく。

どんなに足を使っても引き離されないイゼールビットを見てアールツも足を止め、彼に前を譲りながらペースを落とすこともしばしば。

よって、序盤はアールツとイゼールビットが先行する場面と、そのあと落ち着いて4〜6名の小集団に戻る場面とが繰り返された。

 

 

 

状況に変化が訪れ始めたのは1周2.89㎞の全10周中6周目の登りセクションからである。

 

アールツは相変わらずバイクを降りることなくハイスピードで駆け上がっていくが、それを追うイゼールビットもまた、バイクを降りることなくこの登りを攻略した。

ここまでずっと3番手で食らいついていたジャンニ・フェルメールシュは当然バイクを降りる。

ここで完全に前の2人に引きちぎられてしまい、以後、先頭はアールツとイゼールビットの2人だけの戦いに。

 

 

 

7周目は序盤からイゼールビットが軽快に飛ばしていた。

アールツもしっかりとこれに食らいついていくが、この周回のスイッチバックの下りセクションで、アールツは曲がりきれずに足をつくミスを犯してしまう。

そこで開いたギャップはその直後に埋めることに成功したものの、すでにアールツが体力の限界を迎えており、集中力を切らしていることは明らかであった。

以後、少しずつ、イゼールビットのペースアップにアールツがついていけなくなる。

 

 

一度崩れてしまえばあとはおしまいである。

7周目終了時点で2人のタイム差は5秒。ここまで、この2人がこれだけのタイム差をつけることはなかった。

そして8周目の登りセクション。イゼールビットはいつも通りバイクを降りて攻略するが、アールツもまた、初めから降りて駆け上がることを選択する。

もうバイクに乗りながら攻略するだけの体力は残っていかったのだ。

 

そして8周目のラストについたタイム差は21秒。

 

 

勝負は決まった。

エリートカテゴリ1年目の新星イゼールビットが、昨年のワールドカップ王者を見事打ち倒したのである。

シクロクロス界においても、新たな時代の幕が上がった。

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昨年アールツと鎬を削る場面もあったオランダの若手ヨリス・ニューエンハイス(サンウェブ、23歳)は、スタート直後は最前列でなかったにも関わらず先頭を取るなど良い調子を見せていたように思っていたが、そのあとはずるずると後退。

最終的には5分55秒遅れの26位と散々なスタートを切ることとなった。

 

とりあえずは、若手シクロクロッサーの星としてはこのイゼールビットに注目をしておきたい。

赤いジャージの小さい体を左右に揺らしながらダンシングするその姿はどことなくリッチー・ポートを彷彿とさせる。

ベルギーの新星は、ワウト不在のこの19-20シクロクロスシーズンをどのように掻き回してくれるか。

 

続く北米2戦目「ウォータールー」も楽しみである。

 

2019-2020シーズン UCIワールドカップ スケジュール

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