平坦多めな第1週が終わり、第2週ではいよいよ、本格的な山岳ステージが開始されていく。
絶対の存在と思われていたプリモシュ・ログリッチェとユンボ・ヴィズマが見せる弱み。一方で万全のチーム力を見せるアスタナ、モビスター、バーレーン・メリダ。
絶対的に強い選手・チームが存在しない、例年以上に誰が勝つのかわからない混沌とした展開の中で、大きな逃げと共に歓喜の勝利を挙げるアシスト系の選手たちの姿も。
ロードレースらしい劇的なステージの連続で彩られた第2週を振り返っていく。
↓第1週の振り返りはこちらから↓
↓第3週の振り返りはこちらから↓
- 第10ステージ ラヴェンナ〜モデナ 145㎞(平坦)
- 第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リーグレ 221㎞(平坦)
- 第12ステージ クーネオ〜ピネローロ 158㎞(丘陵)
- 第13ステージ ピネローロ〜チェレゾーレ・レアーレ 196㎞(山岳)
- 第14ステージ サン・ヴァンサン〜クールマイユール 131㎞(山岳)
- 第15ステージ イヴレーア〜コモ 232㎞(丘陵)
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第10ステージ ラヴェンナ〜モデナ 145㎞(平坦)
休息日明け初日は今大会3本の指に入る短距離ステージでの、オールフラットステージ。
休息日明けに体調を崩す人が現れて大きくタイムを失わないようにという大会主催者側の配慮だろうか。ブエルタとは大違いである。
集団スプリントが約束されたステージで、初山翔が今大会2度目の逃げを敢行。
再び日本人ライダーが世界最高峰の舞台で脚光を浴びることとなった。
そして集団スプリント。
風もなく、ラスト2kmはひたすらまっすぐの直線。
石畳区間もわずかにあったものの、基本的には各チームのトレインを阻害する要素はなく、トップスプリンターたちによる純粋な力と力のぶつかり合いが演出される、はずだった。
しかし、ラスト1km地点でまさかのアッカーマン、落車。
さらにその直後に巻き起こった別の落車では、これまた優勝候補の1人だったトレック・セガフレードのマッテオ・モスケッティも落車。
元ポーラテック・コメタ(アルベルト・コンタドールの育成チーム)の有望な若手スプリンターは、実力を感じさせる走りを連日見せながらも、志半ばでジロを去ることとなった。
残った集団の中で最も完璧なトレインを見せたのがロット・スーダル。そして発射されたポケット・ロケット。
ヴィヴィアーニは彼の背中に飛び乗り、完璧な最終スプリント体制を整えた・・・のだったが、そこで思うように加速できない。
ただでさえ身長の低いユアンの、超低空姿勢スプリント。
やはりこの後ろというのはスリップストリームがほとんど効果を発揮しないのか。いつもとは勝手の違う感覚に、ヴィヴィアーニの踏みの勢いが明らかに弱まってしまった。
その隙に、離れた左手から一気にまくり上げていったのがデマール。
今大会、常に良い走りで2位や3位に安定して入り込んでいた元ミラノ~サンレモ覇者が、ジロ初勝利を成し遂げた。
なお、3位に入り込んだのがボーラ・ハンスグローエのゼーリッヒ。
今大会、アッカーマンの最終発射台として、常に良い位置にいた彼が、エースが脱落したあとのスプリントでその実力を遺憾なく発揮してくれた。
2年前のジロでもサム・ベネットを差し置いて上位に入っていたこともある彼が、もし今後、今日の怪我が原因でアッカーマンがその力を失うようなことがあれば、新たなエースとして台頭してくる可能性もありうるかもしれない。
第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リーグレ 221㎞(平坦)
前日に引き続き、オールフラットの集団スプリントステージ。総合勢は連日の平穏なステージで、このあとに続く激戦に向けてしっかりと足を貯めることができたかもしれない。
ラスト1kmを切って先導したのはグルパマFDJトレイン。しかしアシストの枚数がやや足りず、残り600mを切ってすでに最終発射台のグアルニエーリだけに。
残り450mでゼーリッヒがアッカーマンを引き連れて加速し、グアルニエーリを追い抜いて先頭に。常にアッカーマンの後輪を捉え続けていたユアンは、この動きにしっかりとついていった。
しかも残り350mの時点で、デマールがアッカーマンの後ろという絶好のポジションを奪おうと寄せてきたところを、しっかりと跳ね除けている。
もしここでアッカーマンの番手を失っていたら、最後のデマールの伸びを見ても、勝ったのは彼の方になっていたかもしれない。
さすが(たまに右方向に飛び出る)ポケット・ロケット。位置取り争いには(たまにやり過ぎてしまうことはあるけれど)定評がある。
なお、このとき、ヴィヴィアーニは10番手くらいの位置についており、勝負するにはやや厳しいポジションであった。
しかし、同じく埋もれていたサバティーニが一気に加速。ヴィヴィアーニはこれに飛び乗り、一気に番手を引き上げることに成功した。
そのあたりはやはり名アシストのサバティーニ。
動くべきポイントをしっかりと抑えた、ただ速いだけじゃない実力者である。
しかし残り300m。ヴィヴィアーニはそのままサバティーニの後ろについていくわけではなく、ユアンの背中に飛び乗った。
サバティーニの実力ならば、このまま絶好の位置にまでヴィヴィアーニを連れていくことも不可能ではなかったかもしれない。
それでもヴィヴィアーニはユアンの後ろを選んだ。このあたりの選択の勘については、本来のヴィヴィアーニであればかなり鋭いものを持っているのだが、今回に関しては、もしかしたらやや、適切ではなかったかもしれない。
残り270mで、結局ユアンの後ろはデマールに奪われてしまい、仕方なくそこからスプリントを開始しようとするヴィヴィアーニ。
だがちょうど同じタイミングでアッカーマンがゼーリッヒの背中から飛び出し、スプリントを開始。当然ユアンもその背中に乗って左に動いたことで、飛び出そうとしたヴィヴィアーニの進路は失われてしまった。
残り250mからの全力スプリントを開始したアッカーマン。しかし、この距離はアッカーマンにとっては少し長すぎる距離。向かい風だったこともマイナスに働いた。
残り150mからアクセルを踏んだユアンはきっちりとアッカーマンを抜き去って、そのまま先頭でゴールに突き進んだ。
このときユアンの番手を手に入れたデマールは、それを奪おうとするヴィヴィアーニを押しのけて、ユアンのスリップストリームに入り込む。
だが、そこから追い抜きスプリントを開始できるほど残り距離は長くなく、さらにはユアンの超低空スプリントの背後は加速をかけにくい。
最終的には誰もユアンを追い抜きなおすことはできず、そのまま彼は、大会2勝目を掴み取った。
カレブ・ユアンはかつて、2015年のブエルタで、当時21歳ながら、ペテル・サガンとジョン・デゲンコルプという2大スプリンターを相手取り、登りスプリントで見事なグランツール初勝利を手に入れていた。
翌年初頭のツアー・ダウンアンダーでもキレッキレのスプリントを見せつけ、次の年ではツアー・ダウンアンダーの全スプリントステージを制するという圧倒っぷりを見せつける。
しかし2016年に初出場したジロではキッテルやグライペルを相手に歯が立たない様子を見せ、2017年には1勝するものの、1年遅れのジロ初出場を果たした同年代のフェルナンド・ガビリアに完全に打ち負かされた。
以来、その実力を十分に発揮できない時期が続いていた。
そんな彼が、昨年から少しずつ、元々の彼の武器であった「登りスプリント」への適性を復活させていき、ピュアスプリンターたちとは違った勝ち方を模索し始め、それが今年少しずつ結実しつつある。
今回はついに、同年ジロでの2勝。すでにリタイアしたガビリアに「勝った」わけで、早すぎる成功とその後の沈没を経験した男が、新チームにて復活の時を迎えつつあるというわけだ。
ユアンはこの日を最後に、ジロを去ることに決めた。
彼の目標はすでに、夏のツールに向けられている。
昨年果たせなかった大舞台。今大会、真正面から勝つことのできなかったガビリアや、ヴィヴィアーニ、そしてフルーネウェーヘンといったより最強のスプリンターたちが集うツールの舞台で、進化した彼の走りを炸裂させることができるか。
まだまだ、最強の名を追い求めるのに遅くはない。
第12ステージ クーネオ〜ピネローロ 158㎞(丘陵)
2009年にリクイガスのトレーニーとしてプロの世界に飛び込んだベネデッティ。
その後はボーラの前身となるコンチネンタルチームに所属し、少しずつ経験を積みながら、3年前のジロでは序盤の山岳賞も獲得した。
しかし、ただの一度もプロ勝利は無し。アシストや逃げ屋に徹し続けた男が、歓喜の初勝利をこのジロで手に入れた。
しかも、簡単に手に入れたそれではない。25名の逃げ集団がたったの6名に絞り込まれるほどに厳しい1級山岳モントゾの登りで遅れ、しかし決定的に離されることはなく耐え切って、そして下りで追い付いた。
その後もゴール前2kmに用意された石畳急坂で遅れながら、ゴール直前に再び執念で追い付いた末での、大勝利であった。
20年前に初めてジロのスタートヴィレッジを訪れたときからの夢だったというジロの勝利。
チームメートのために働き続ける偉大なる男が、自らのための大きな結果を掴み取った。
さて、この日は総合勢においても早速動きが巻き起こった。
そのきっかけを作ったのはアスタナ。
先頭集団が残り34.8km、タイム差が11分21秒のタイミングで、2年前ジロ総合12のヤン・ヒルトが先手を打つアタックを仕掛けた。
集団先頭はユンボ・ヴィズマのクーン・ボウマン。なんとかヒルトとの距離を詰めていく。
これが捕まえられると、カウンターで飛び出したのが大将ミゲルアンヘル・ロペス。この動きに、ユンボのアシストたちは反応できず。集団先頭はボーラ・ハンスグローエが牽引することに。
ユンボのアシスト陣が限界を迎えたことを悟ると、ロペスの動きに追随するのがライバルたち。モビスターのリチャル・カラパスがまずは追走をブリッジを仕掛け、そこにマイカやニバリもついていく。
当然、これをログリッチェが見逃すわけにはいかない。自らチェックに動く。そこにサイモン・イェーツやエステバン・チャベス、ルーカス・ハミルトンもついていき、総合リーダージャージを着るヴァレリオ・コンティは脱落してしまう。
そして、この直後に第2の攻撃を繰り出したのがモビスター。
ログリッチェから4分52秒遅れのミケル・ランダがアタック。少し遅れて、同4分29秒遅れのロペスもブリッジ。
この動きに対し、その他の総合系ライバルたちは反応せず。
総合で大きな遅れを見せているランダとロペスが、総合逆転を目指して抜け出しに成功した。
逃げから降りてきたカタルドやズッタリンなども協力し、メイン集団に捕まることなく逃げ切りを成功させた。
結果として、彼らが手に入れたのは28秒。
彼らの持っているタイム差を考えるとまだまだ十分ではない数字ではあるが、それでも自分たちの足がこの先の山岳に向けて十分に仕上がっていることを確認できただけでも、大きな成果であると言える。
一方、ユンボ・ヴィズマにとっては不安を感じさせる1日となった。
ロペスのアタックに対し早々と崩れ落ちたアシスト陣。
1人になったログリッチェは、その後のニバリの攻撃に対しても自ら反応することができず、生まれた隙間を埋めるのにミッチェルトン・スコットの面々に頼るような場面すらあった。
この日から始まる厳しい山岳3連戦を前にして、果たしてログリッチェは、ユンボ・ヴィズマは耐え切ることができるのか。
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第13ステージ ピネローロ〜チェレゾーレ・レアーレ 196㎞(山岳)
今大会最初の1級山岳山頂フィニッシュ。
何かが必ず起こるステージで、まず巻き起こったのは、ライバルチームたちによる大量逃げ。
モビスターがアマドール、カレテロ、ホセ・ロハスの3名を、アスタナもカタルド、イサギレ、ツェイツの3名を、バーレーンがアントニオ・ニバリとポッツォヴィーヴォの2名を、ミッチェルトン・スコットがユールイェンセンとニエベの2名を逃げに乗せている。いずれもグランツール総合上位を狙えるほどの実力者も逃げに乗っている。
一応、ユンボ・ヴィズマもアントワン・トルークを乗せてはいるが、それで彼らが集団牽引の責任を免除されるような事態には決してならないであろう。
さらに言えば、ログリッチェから3分38秒遅れのイルヌール・ザッカリンや、1分55秒遅れでしかないバウケ・モレマも逃げに乗っている。しかも、モレマに至っては3名ものアシストを引き連れて、である。
ありえない陣容のこの大規模逃げ。それだけ、ユンボ・ヴィズマが集団の統率を図れない状態であることを示していた。
一応、逃げとメイン集団とのタイム差は2分程度。しかし、それが縮まることのないまま、残り76kmから始まる2級山岳に突入しようとしていた。
平坦はヨス・ファンエムデンが全力の牽引。少なくとも、これ以上タイム差が開かないようにするしかない。
山岳に突入し、ユンボのアシスト陣は一気に縮小する。
先頭を牽いているのはポール・マルテンス。どちらかというとパンチャー脚質の選手であり、ピュアクライマーではない彼ではあるが、本命の山岳アシストであるセップ・クス、クーン・ボウマンのために、少しでも長く前を牽き続ける。
だがそれも、ミゲルアンヘル・ロペスが火蓋を切った総合勢による激突が開始されると、どうしようもなくなる。
先頭が残り62.6kmとなったところで、メイン集団にはランダ、カラパス、ロペス、ビルバオ、カタルド、ニバリ、マイカ、カーシー、カンゲルト、イェーツ、ハミルトン、シヴァコフ、そしてログリッチェ。
ミッチェルトン・スコットではチャベスが遅れてしまった代わりに、ルーカス・ハミルトンがきっちりとアシストをこなしているところに、彼の進化を見出すことができる。
今大会、ジャック・ヘイグも急遽参戦できなくなってしまったものの、その代わりを十分に果たす存在となっている。
そして、今大会繰り返されることになる、総合有力勢同士の「お見合い」状態。
本来、最も優勝候補というべきログリッチェは、そのフィジカル的には問題がなさそうではあるが、やはりアシストが1人もいない状態ということで、無理をすることを避けようとして積極的な動きには出ようとしない。
一方、その他のライバルたちも、ログリッチェに牽引を任せようとし過ぎて、なかなか自分たちが動くこともしない。とくに最も実績があり調子も良さそうなニバリが、アシストたちを抱えながらも思い切った攻撃に出ようとしない。
結果、勇敢な逃げに乗った選手たちが、大きな結果を掴むことになる。
山頂フィニッシュで、2つ山が残っている状態で2分差という、本来考えれば逃げ切りなど不可能な状況の中、たった一人で逃げていたザッカリンがまさかのステージ優勝を成し遂げたのも、その状況が生み出した展開であった。
もちろんそれでも、モレマやニエベのような実力者を突き放してのその勝利は、十分に偉大なものだ。しばらく日の目を見ない状況が続いていたザッカリンが、ようやく復活の兆しを見せるような勝利を手に入れた。
そして、最後の登りでメイン集団では再び動きが。
ミケル・ランダ、そして次いでリチャル・カラパスが集団から抜け出し、再びタイムを稼ぎ出した。
ログリッチェとニバリは互いを警戒して動かない。
そしてサイモン・イェーツはずるずると崩れ落ち、ミゲルアンヘル・ロペスは調子は良かったのにメカトラブルによって勝機を失った。
結果、ランダがログリッチェから1分37秒を稼ぎ出した。
カラパスは1分19秒。マイカも50秒、そのタイム差を縮めることに成功した。
ログリッチェは目下最大のライバルとも言えそうなニバリの動きを抑えることには成功した。
しかし、離れたところにいるはずだった選手たちとのタイム差を少しずつ縮められ、その包囲網が狭まりつつあることを感じるはずだ。
なんだか、TTで稼ぎ出した貯金を切り崩しているかのような状況・・・。
果たして、明日、そして3週目に、その貯金はしっかりと残っているのだろうか。
第14ステージ サン・ヴァンサン〜クールマイユール 131㎞(山岳)
131kmという今大会最も短い距離に、1級山岳2つを含む5つのカテゴリ山岳。そして総獲得標高は4000mを超える。まさに地獄のようなステージだ。
逃げ集団に希望などなく、標高1951mに至る1級山岳「サン・カルロ」に至る登りにて、総合優勝候補たちの熾烈な争いが開始される。
登り始めてすぐ、主導権を握ったのはバーレーン・メリダ。まずはアントニオ・ニバリの牽引によってペースアップが図られ、総合リーダージャージを着るヴァレリオ・コンティやボブ・ユンゲルスらが千切られていく。
そしてアントニオが終了すると、今度はヴィンツェンツォ・ニバリが自らアタック。ログリッチェ、ランダ、カラパス、ロペスがこれに喰らいつく。
少し遅れた総合7位マイカは、フォルモロのアシストもあり、なんとかニバリたちに追い付く。サイモン・イェーツも同じく先頭から降りてきたルーカス・ハミルトンの力を借りながら、マイペースに追走を続け、引き離されないようにギリギリのところで耐え続けていた。
一方で、前日の勝利で一気にジャンプアップしたばかりの総合3位ザッカリンや、総合4位モレマは完全に引き離されてしまった。
間もなく、先頭で逃げていたダミアーノ・カルーゾが降りてきて合流。ニバリたちの集団を牽引。
これによって逃げ集団が次々と捕まり、1分近くあった先頭とのタイム差も一気に縮まり、単独で山岳賞ポイントを狙って先頭を走り続けていたチッコーネを飲み込んでしまった。
そして山頂から残り3kmで、カラパスがアタック。
ログリッチェが先頭で追走を仕掛け、カルーゾは脱落した。
ここでまた、「お見合い」が発生してしまった。
ニバリはログリッチェに牽かせたい。しかしログリッチェも、まだカラパスとのタイム差には余裕があり、アシストのいない状態で牽きたくはない。
そんなこんなカラパスとのタイム差は一気に開いていき、最終的には2分近いタイム差をもって逃げ切り勝利を果たした。
これにより、エクアドル人としては当然初となるマリア・ローザを着用。
ログリッチェとしては7秒のビハインドを得ることになったが、最終日の個人TTの存在もあり、逆転は容易とみたうえで、わざとマリア・ローザを手に入れることを避けたとも考えられる。
逆にニバリにとっては、ログリッチェとは別のライバルを抱えることに。
例を見ないような熾烈な「牽制合戦」により、総合争いはより混沌としていくことに・・・。
なおこのステージで、遅れては戻ってきて集団牽引を繰り返し続けた男、カルーゾについては、以下の記事を参照して頂けると幸い。
第15ステージ イヴレーア〜コモ 232㎞(丘陵)
長い平坦の末に、イル・ロンバルディアとほぼ同じコースレイアウトを最後の70kmに用意したステージ。
長すぎること、平坦気味であることから、前半はマッティア・カッタネオ(アンドローニジョカトリ)とダリオ・カタルド(アスタナ)の2名だけの逃げ。驚異の一切ない逃げに対してメイン集団は16分近い大きなタイム差を許し、プロトンは久々に平和な時間を過ごすこととなった。
しかし後半戦が始まれば、ここ数日と同様の激しい総合勢の激突が開始される。マドンナ・デル・ギザッロに至る登りにて、ミッチェルトン・スコットやモビスターが中心となって集団を強力に牽引。 今日もまた、ユンボ・ヴィズマのアシストたちが早々に引き剥がされていった。
しかし、ギザッロ教会への登りでは、決定的な攻撃は繰り出されなかった。
続くコルマ・ディ・ソルマーノでも、サイモン・イェーツやミゲルアンヘル・ロペスが積極的な動きを見せるも、そのアタックが決まることはなかった。
勝負が動いたのは、イル・ロンバルディアでも最後の勝負所となるチヴィリオの登り。
サイモン・イェーツとヒュー・カーシーの2名が先行してアタックしたのちに、メイン集団から過去2回ロンバルディアを制しているヴィンツェンツォ・ニバリが動き始めた。
この動きについて行けたのは総合リーダーのリチャル・カラパスのみ。
ログリッチェ、そしてロペスはついていくことができず、ずるずると遅れ始めていった。
あとはもう、ニバリの必勝態勢である。
得意のチヴィリオの下りでは、同行者のカラパスやサイモン・イェーツ、カーシーを引き離す場面も見られた。
そして一方のログリッチェは、途中のメカトラに加えてこの下りでも落車する泣きっ面に蜂。
カラパス、ニバリたちに40秒差をつけられてゴールすることに。
総合成績においては、首位カラパスに47秒遅れてログリッチェ。そしてそこからさらに1分遅れてヴィンツェンツォ・ニバリの順番。
最終日にTTがあることを考えても、微妙なタイム差となってきた。
そして、ステージ優勝は序盤から逃げていたカッタネオとカタルドの間で繰り広げられることに。
最初16分近いタイム差があった中で異常なスピードで縮んでいくそのタイム差。
最終的にはわずか11秒。それでも2人は逃げ切ることに成功した。
そして、最後のストレートでカッタネオがひたすらカタルドのツキ位置に。
それでもカタルドは自ら仕掛け、そして、カッタネオに前を譲ることなくそのまま優勝を果たした。
日々鎬を削る総合勢。
その合間を掻い潜って渾身の勝利を挙げる選手たち。普段アシストに徹するような選手たちにも訪れる歓喜の瞬間。
3週目もこの戦いはさらなる激化を見せることだろう。
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