Class:ワールドツアー
Country:フランス
Region:ドーフィネ地方
First edition:1947年
Editions:71回
Date:6/9(日)~6/16(日)
「ツール・ド・フランス前哨戦」が今年も開幕する。
今回も昨年同様、ピュアスプリンターにとってはやや厳しいレイアウトの連続。ただし今大会最有力スプリンターのベネットは最近登りスプリントもいけるため、十分2勝以上いけるかも。昨年も優勝しているインピーも、同様に有力候補だ。
登りでは第7ステージに超級山岳山頂フィニッシュが登場するが、勾配が一定で難易度が非常に高いというわけではない。抜け出す登りよりかは耐える登りが重要になりそうで、チーム・イネオスにとって有利なプロフィールと言えそうだ。
そうなると、前日の第6ステージの「ゴール直前の2級山岳を登って降りて」のステージでアダム・イェーツあたりがどれだけアグレッシブな走りを見せられるか。あるいは最終ステージ、「ゴール前64.5kmの超厳しい勾配の登り」で大逆転を狙う勇気ある攻撃を繰り出すチームが現れるかどうか。
このあたりが、単純な「登りでの保守的な動き」にとどまらない、面白い展開を生んでくれそうなコース設定である。パリ~ニースに近いイメージ。
そして、超級山岳山頂フィニッシュがややマイルドな分、勝負を左右しかねないのが第4ステージの個人TT。レイアウト、および距離については、ツール本戦の個人TTと似通っており、これが今年の「予行練習」ステージとなりそうだ。
TTが苦手な選手たちにとっては辛い1週間となりそうだが、そんな彼らの積極的な攻撃を楽しみにしている。フルーム、デュムラン、リッチー・ポート、クライスヴァイクらのTT型オールラウンダーVSバルデ、マーティン、キンタナ、アダム・イェーツらのピュアクライマーたちとの戦い。
そんな戦いをイメージさせてくれる今大会の全8ステージを徹底解説していこう。
全チームスタートリストと簡単なプレビューはこちらから
- 第1ステージ オーリヤック〜ジュサック 142㎞(丘陵)
- 第2ステージ モーリアック〜クラポンヌ=シュル=アルゾン 180㎞(丘陵)
- 第3ステージ ル・ピュイ=アン=ヴレ〜リオン 177㎞(平坦)
- 第4ステージ ロアンヌ〜ロアンヌ 26.1㎞(個人TT)
- 第5ステージ ボエン=シュル=リニョン〜ボアロン 201㎞(平坦)
- 第6ステージ サン=ヴルバ〜サン=ミッシェル=ド=モリエンヌ 229㎞(丘陵)
- 第7ステージ サン=ジェニ=レ=ヴィラージュ〜レ・セプ・ロー=ピペ133㎞(山岳)
- 第8ステージ クリューズ〜シャンペリー 113.5㎞(山岳)
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第1ステージ オーリヤック〜ジュサック 142㎞(丘陵)
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の最南端に位置するオーリヤックは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではまだ一度も使われたことのない町である。
スタート直後から緩やかに登り始め、34㎞地点でこの日の最標高地点となる1級山岳ピュイ・マリー(登坂距離10.6㎞、平均勾配6.1%)の頂上に至る。
そのあとも4級山岳、3級山岳を越えて、最後に2級山岳コート・ド・ロックナトウ(登坂距離3.6㎞、平均勾配7%)を含む28㎞の周回コースを2周してフィニッシュに至る。
最後の2級山岳の山頂からゴールまでは18㎞。
集団スプリントというのは難しく、パンチャータイプの選手たちが勝利を奪い合うか、もしくは序盤から逃げた選手がそのまま逃げ切るか・・・
デヘントが出ていれば逃げ切り勝利してもおかしくないレイアウト。今回は残念ながら彼は出場していないが、デマルキやカミングスあたりに注目したい。
第2ステージ モーリアック〜クラポンヌ=シュル=アルゾン 180㎞(丘陵)
第1ステージに引き続き、第1ステージ以上の容赦のないアップダウンステージをドーフィネの主催者は用意してきた。
スタート直後の下りを含んだ7㎞のあと、早速2級山岳コート・ド・ムサージュ(登坂距離4㎞、平均勾配6.5%)がプロトンを待ち受ける。
ここで山岳賞ジャージ着用者を含んだ数名の逃げが形成されるだろう。その数は第2ステージからいきなり2桁に至るかもしれないし、流石にそれを許さない面々により熾烈なアタック合戦が繰り広げられるかもしれない。
最初の1時間を過ぎても決定的な逃げが生まれず、ハイスピードで丘陵地帯を駆け巡る展開ともなれば、プロトンの中の選手たちも皆、疲弊しきった様子でステージの後半戦を挑むこととなるだろう。
だが68㎞地点の3級山岳を越える頃には、さすがに無難な小規模逃げ集団が生まれ、集団は落ち着いた様子を見せながら下りに突入するはずだ。
後半戦の肝になるのは、残り48.3㎞から登り始める2級山岳コート・ド・ラ・バルバッテ(登坂距離5.8㎞、平均勾配7%)と残り21.1㎞から登り始める2級山岳サン・ビクター・シュール・アラン(登坂距離3.1㎞、平均勾配9.4%)の2連続登坂である。特に後者は、短くも険しい激坂といっていい登りである。
最後の2級山岳の頂上からゴールまでは今回も18㎞。さらに、ラスト3㎞を切ってから下りが始まり、ラスト500mは登り勾配。
縮小されたメイン集団の中から、パンチャーや総合系の中でもスプリント力に優れた選手が勝利を競い合うことになるか、もしくはラスト3㎞から抜け出したアタッカーによるギリギリの逃げ切り勝利と相成るか。
アラフィリップ、クウィアトコウスキーなどが最有力候補。ランブレヒト、ベッティオルが上位に入ってくる可能性も十分にあるだろう。スプリンターでもサム・ベネット、ダリル・インピーなどは十分勝てる脚質だ。
第3ステージ ル・ピュイ=アン=ヴレ〜リオン 177㎞(平坦)
2019年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、3日目にしてようやく、ピュアスプリンターたちが日の目を見ることに。それでも最初の50㎞は標高1000mを越える高地をしっかりと走るのだが、そのあとは下りを経て、残り70㎞を越えた直後に3連続で訪れる小さな登りを除いては、完全にフラットなスプリンター向けステージとなっている。
山岳賞狙いの選手たちもこの日ばかりは休息日。ほんのごく僅かのチャンスを目指して2、3人の逃げが形成され、あとはゆっくりと平穏な1日の時間が過ぎ去っていくことになるだろう。
そして、残り20㎞を切ってからはスプリンターズチームによる激しい位置取り合戦が繰り広げられる。昨年はパスカル・アッカーマンとダリル・インピーが制したドーフィネのスプリントバトル。
現時点ではサム・ベネットが最有力候補となりそうだ。ホッジ、ブアニがどこまで喰らいつけるか。雨が降ればソンニ・コルブレッリ。
第4ステージ ロアンヌ〜ロアンヌ 26.1㎞(個人TT)
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネがツール・ド・フランスの前哨戦と言われるゆえんは、その時期的なものだけでなく、同じ主催者であることを利用して、ツール本戦のまさに「予行練習」になるようなそっくりそのままのステージを用意してくることにある。
今大会のその「予行練習」ステージがこのロアンヌ個人タイムトライアルである。距離、地形ともに、ツール本戦の第13ステージのポーで行われる個人タイムトライアル(27㎞)と似通っている。総合優勝争いにも大きな影響を及ぼしうるTTステージだけに、ツール総合優勝を狙う選手たちはこのステージで現在の自分の足を試しておきたい。もちろん、ライバルの状況確認も含めて。
前半の11.5㎞で徐々に勾配を増していきながら登っていく。その山頂が中間計測ポイント。後半の14.6㎞は前半の鏡写しのようなレイアウトとなる。クウィアトコウスキーにとってはやや長い距離か? トム・デュムラン、クリス・フルーム、リッチー・ポートあたりが最有力候補に。ジュリアン・アラフィリップ、ジョー・ロスコフ、ネルソン・オリヴェイラあたりにも注目したい。
第5ステージ ボエン=シュル=リニョン〜ボアロン 201㎞(平坦)
今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで2回目のスプリンターズステージ。そして、最後のスプリンターズステージでもある。
レースの前半は4つの緩やかに登る4級山岳の連続。残り60㎞を切ったあたりからほぼフラットなレイアウトが続く。
残り10㎞を切るとダウンヒルが始まり、最後の3㎞は登り勾配。
結局のところ、ピュアスプリンター向けではないかもしれない。昨年は2つのスプリンターズステージのうち、1つはピュアスプリンターのアッカーマンが、もう1つはパンチャー寄りのインピーが勝利している。
サム・ベネットはツアー・オブ・ターキーやハンマー・スタヴァンゲルで登りスプリントへの高い適正も見せているため、ここでも有力候補になりそう。インピーやツアー・オブ・ノルウェーでも好調だったボアッソンハーゲン、あるいはコルトニールセンにとってもチャンスとなる日かもしれない。
第6ステージ サン=ヴルバ〜サン=ミッシェル=ド=モリエンヌ 229㎞(丘陵)
今大会最長ステージ。最後の150㎞に8つのカテゴリ山岳が待ち構える。
3年前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの開幕ステージは、今回のスタート地点であるサン=ヴルバをフィニッシュ地点に定め、ナセル・ブアニが勝利を飾った平坦ステージであった。今回はそのサン=ヴルバをスタートして80㎞ほどは平坦、そのあとは2級山岳コル・ド・ラ・シャンボット(登坂距離5㎞、平均勾配7.8%)を皮切りに、8つの山岳ポイントが立て続けに現れる。
残り16.5㎞で一度ゴール地点を通過したあと、最後の2級山岳コル・デ・ボーヌ(登坂距離8.1㎞、平均勾配6%)に突入する。
頂上からゴールまでは6.5㎞のハイスピードな下りと500mの平坦。
逃げ切りが決まるにせよ、メイン集団に吸収されるにせよ、最後はダウンヒルのテクニックが勝負の鍵になりそうだ。
第2ステージ同様にアラフィリップ、クウィアトコウスキーらに注目。こういうときに意外とアグレッシブなクリス・フルームには要注意だし、アダム・イェーツの積極性にも期待したい。ほかにもダン・マーティン、フルサングなど。
総合が動く可能性もあるステージだ。
第7ステージ サン=ジェニ=レ=ヴィラージュ〜レ・セプ・ロー=ピペ133㎞(山岳)
いよいよ本格的な総合争いが始まる。130㎞と短めなコースに、3つの1級山岳と超級山岳山頂フィニッシュ。実にシンプルな見た目だが、破壊力は凶悪。総獲得標高は4150mに達する。
およそ30㎞ごとに頂上を迎えるリズミカルな4連続登坂。それぞれのプロフィールは以下の通りである。
残り90㎞:1級レピヌ峠(登坂距離7.6㎞、平均勾配7.2%)
残り60.5㎞:1級ガルニエ峠(登坂距離12㎞、平均勾配5.8%)
残り32.5㎞:1級マルシュー峠(登坂距離10.4㎞、平均勾配6.1%)
ラスト:超級モンテ・デ・ピペ(登坂距離19㎞、平均勾配6.9%)
最後の超級山岳は距離こそ長いが、その勾配はかなり一定。2桁勾配の区間が存在しない。
よって、クリス・フルームやトム・デュムランのようなTTスペシャリスト型オールラウンダーに有利なレイアウトと言えそう。キリエンカ列車がこの日も威力を発揮するか。
逆に爆発力で勝負するバルデ、ポート、マーティンあたりはどう戦うか。マーティンあたりがTTでタイムを落としていてある程度自由な走りを許容されているのであれば、意外とそのまま勝利を奪えてしまうかも?
第8ステージ クリューズ〜シャンペリー 113.5㎞(山岳)
最近流行りの短距離山岳ステージで、2019年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネはクライマックスを迎える。スタート直後から登り始め、合計7つの峠を越えて、最後はスイスに入国。登りフィニッシュを迎える。短さも相まってジェットコースターのようなステージとなる。
スタート直後から大量の逃げが生まれることは間違いない。その中には総合逆転を狙うチームの前待ち要員も含まれるだろう。山岳賞ジャージを狙う者にとっては、せめて残り64.5㎞地点の1級コルビエ峠(登坂距離7.6㎞、平均勾配7.5%)までは逃げ延びたい。
このコル・ドゥ・コルビエ、ラスト600mの平均勾配は10.2%に達する。総合大逆転を狙う選手が、ここでの早めのアタックを仕掛けてくる可能性も十分にある。
そして長い下りを経た後の、残り20.5㎞から登り始めるのが1級山岳コート・デ・リヴ。登坂距離8.5㎞、平均勾配6.2%。この登りが、この日の実質的な最終勝負所となりそうだ。
頂上に到達した後は残り12㎞。3㎞の下りと、変則的な8.5㎞の登りでフィニッシュとなる。この区間の平均勾配は5.5%となる。
すべてを決めるにはやや難易度の低いラスト2つの登り。マイヨ・ジョーヌを守る側からすれば戦いやすい地形だが、そこを逆転しようとするライダーたちは早め早めの攻撃を仕掛けていく必要がある。
結局はそういうレイアウトの方が面白い展開を生みやすい。波乱、求ム。
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