Class:ワールドツアー
Country:オランダ〜ベルギー
Region:-
First edition:2005年
Editions:15回
Date:8/12(月)〜8/18(日)
2016年までは「エネコ・ツアー」の名で親しまれてきた、オランダ・ベルギーにまたがるステージレース。
原型は1948年から続く「ロンド・ファン・ネーデルラント」。2005年のプロツアー発足時に現在のような形となった。
北のクラシックでお馴染みの石畳、アルデンヌ・クラシックでお馴染みの丘陵地帯とが共に味わえる「クラシック全部盛り」ステージレースであり、過去の優勝者もボアッソンハーゲン、ボーム、スティバル、ウェレンス、テルプストラ、モホリッチなど名うてのクラシックハンターがその名を連ねている。
今年もアルデンヌの聖地ウッファリーズやフランドルの聖地ヘラーツベルヘンなどを訪れるが、昨年よりもやや平坦基調で、とくにアルデンヌ風味は薄れている印象がある。もしかしたら例年よりもよりフランドル系・スプリンター系の選手の活躍が期待されるかもしれない。
今回はその全7コースを解説。各ステージの注目すべき選手たちもピックアップしていく。
- 第1ステージ ベーフェレン〜フルスト 167.2㎞(平坦)
- 第2ステージ ブランケンベルヘ〜アルドーイェ 169.1㎞(平坦)
- 第3ステージ アールテル〜アールテル 166.9㎞(平坦)
- 第4ステージ ウッファリーズ〜ウッファリーズ 96.2㎞(丘陵)
- 第5ステージ リエムスト〜フェンラユ 191.4㎞
- 第6ステージ デン・ハーグ〜デン・ハーグ 8.4㎞(個人TT)
- 第7ステージ ルウ・サン・ピエール~ヘラーツベルヘン 178.1km(丘陵)
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第1ステージ ベーフェレン〜フルスト 167.2㎞(平坦)
今年のビンクバンクツアーの第1ステージは、ベルギー・東フランダース州、アントウェルペンに隣接した街ベーフェレンから、オランダ・ゼーラント州の南東部フルストまでを舞台とする。
この2つの街は、オランダ・ベルギー国境を挟んで隣接する街であり、両国にまたがるこのビンクバンクツアーを象徴するステージとなっている。
その全体のレイアウトは実にこの地域らしいオールフラット。途中わずかな石畳区間があるようだが、勝敗に影響を及ぼすものではないだろう。
ラスト1㎞を切った直後に直角左カーブが待ち構えているが、そのあとはラウンドアバウトもない純粋なストレート。各チームのトレイン力が試される、トップスプリンター&スプリンターズチームの激突の場となるだろう。
昨年の初日平坦ステージは、マルセル・キッテルやカレブ・ユアン、あるいは同国の先輩ディラン・フルーネウェーヘンらを打ち破り、クイックステップのファビオ・ヤコブセンが勝利を挙げた。6位に沈んだフルーネウェーヘンは、今年こそ母国でリベンジを果たせるか。
ほかにはボーラ・ハンスグローエのサム・ベネット、ドゥクーニンク・クイックステップのアルバロホセ・ホッジ、UAEチーム・エミレーツのジャスパー・フィリプセン、グルパマFDJのアルノー・デマールなどに注目したい。
第2ステージ ブランケンベルヘ〜アルドーイェ 169.1㎞(平坦)
ビンクバンクツアー第2ステージは、ブルージュの北西、西フランドル地域の海沿いの街ブランケンベルヘから南下し、内陸部のアルドーイェまで向かう、100%ベルギーの、しかし引き続きオールフラットなスプリンターズステージである。
ラスト1㎞直前にテクニカルなコーナーが連続するが、その先はひたすらまっすぐ。この日もガチンコな集団スプリントが演じられることだろう。
ただし、昨年のビンクバンクツアーは4ステージあったスプリントステージのうち、3つで逃げ切りが決まるという波乱の展開に。今年も同様の可能性がないとは言えないため、スプリンターズチームの支配力が重要となる。
第3ステージ アールテル〜アールテル 166.9㎞(平坦)
ベルギー・東フランドル、ブルージュとヘントとの間に位置する街アールテルを発着するこの日もピュア平坦ステージ。
ゴール前1㎞を過ぎた後にも、残り500mを過ぎたあたりで鋭角カーブが用意されているため、そこまでの位置取りが重要となる。
ここまでである程度各スプリンターたちの調子の良さが分かってくることだろう。その中でも若手のこれから台頭しうる才能たちの活躍にも注目をしておきたい。
たとえば今年トレック入りを果たしたネオプロのマッテオ・モスケッティ。アジアを中心に活躍を見せるアフガニスタン人のエフゲニー・ギディッチ(アスタナ)、もちろんすでに実績を重ねているイネオスのクリストファー・ハルヴォルセンやクリス・ローレス、バーレーン・メリダのフィル・バウハウスなどにも注目である。
第4ステージ ウッファリーズ〜ウッファリーズ 96.2㎞(丘陵)
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの「バストーニュ」の近くに位置し、中盤に必ず通過する激坂「コート・ド・サン・ロッシュ(ミュール・ド・サン・ロッシュ)」(登坂距離1.1㎞、平均勾配11.5%)。ワロン地方を代表する激坂として、ツール・ド・ワロニーのフィニッシュ地点に選ばれたこともある。
この激坂を擁する街ウッファリーズがこの日の舞台。ではいよいよアルデンヌ風味たっぷりのフィニッシュなのか、と思いきや、フィニッシュ地点はこのコート・ド・サン・ロッシュの直前に置かれている。たしかに1周30㎞の3周する周回コースの中には組み込まれているものの、肝心のフィニッシュが登りの直前。つまり最後のサン・ロシュの登りの頂上からゴールまでは、30㎞もあるということだ。
よって、前2ステージよりかはプロトンの足は削られていくだろうが、だからといって総合に影響を及ぼすステージとは言いづらいかもしれない。
ただ、コート・ド・サン・ロッシュの直前とはいえ、やや登り勾配でのフィニッシュにはなるため、パンチャーや登れるスプリンターならともかく、ピュアスプリンターには厳しいフィニッシュにはなりそうだ。
AG2Rのオリバー・ナーセン、CCCチームのグレッグ・ファンアーフェルマート、あるいはツアー・オブ・カリフォルニアの丘陵ステージで上位に食い込んでいた、チーム・サンウェブの若きシクロクロッサー、ヨリス・ニューウェンハイス。このあたりの活躍に、注目しておくべきだろう。
あとは、極端に短いコースであるということが、展開にどのような影響を及ぼすか・・・。
第5ステージ リエムスト〜フェンラユ 191.4㎞
「ベルギーの」リンブルフ州から「オランダの」リンブルフ州へ。まっすぐ北上する今大会4つ目のピュアスプリントステージ。
なお、ビンクバンクツアーの大きな特徴として、各ステージ終盤に「ゴールデンキロメトル」なる、「立て続けに3つ連続して置かれるボーナスタイムポイント」の存在が挙げられる。1つ3秒のボーナスタイムが与えられ、1人ですべて独占すると9秒と、ステージ優勝に匹敵するボーナスタイムを得られるため、とくに平坦ステージが多くタイム差がつきづらい今年のビンクバンクではかなり重要になりそうだ。
ステージ終盤に設置されていることも多く、この日もラスト10.5㎞と、ちょうど逃げ集団が自然と吸収されてしまいそうな位置にあり、その瞬間からのカウンターなど、イレギュラーな動きには注意しておきたいところ。
第6ステージ デン・ハーグ〜デン・ハーグ 8.4㎞(個人TT)
ホラント州の州都であり、オランダの実質的な首都である「平和と司法の街」デン・ハーグ。王宮や国会議事堂が立ち並ぶこの国の中心地で、短距離個人タイムトライアルが開催される。オールフラットで、ほぼ直線のみで構成されたシンプルなレイアウトだ。
昨年フェンラユで開催された個人TTも似たようなつくりで、そのときはシュテファン・キュング、ヴィクトール・カンペナールツ、セーアンクラーウ・アナスンあたりが上位に食い込んでいた。今年も彼らやヨス・ファンエムデン、ボブ・ユンゲルスなどのTTスペシャリストたちに期待したいところだが、12㎞あった昨年よりもさらに短いため、スプリンター寄りの選手たちの活躍もありそうなところだ。
平坦ステージの多い今年のビンクバンクでは、この距離のタイムトライアルでのタイム差もばかにならない。とくにクラシックにも強いキュング、ユンゲルスあたりがタイム差を稼げれば、次の日のステージと合わせ、総合優勝も狙っていけそうだ。
第7ステージ ルウ・サン・ピエール~ヘラーツベルヘン 178.1km(丘陵)
フランドル・クラシックの聖地を訪れる、大会最終日にして最大の盛り上がりを見せるであろうクイーンステージ。今年はアルデンヌ系ステージで大きなタイム差がつきそうにないため、総合でも最も重要なステージとなりそうだ。
勝負所は残り75.6㎞から始まる「カペルミュール」。この伝説の激坂とボスベルグのセットを3回繰り返し、最後のボスベルグの頂上から21㎞先にゴールが置かれている。
その間も平坦ではないため、生き残った少数のクラシックスペシャリストたちによって最後の戦いが繰り広げられることだろう。最後のボスベルグにはゴールデンキロメトルも用意されているようで、この時点で勝負を動かしたい運営の意図が透けて見える。
前日のタイムトライアルで稼いでいるであろうキュングやユンゲルスがここで耐え凌げば、十分に総合優勝が狙える。
逆にオリバー・ナーセンやファンアーフェルマート、マイク・テウニッセンなどはここで彼らをいかに突き放せるか。彼らはこれまでの平坦ステージやウッファリーズでボーナスタイムを稼ぐことができていそうなので、その結果次第で優勝候補は大きく変動しそうだ。もちろんジルベールも本命の1人。
また、ツールのカペルミュールやラ・プランシュ・デ・ベルフィーユで活躍したクサンドロ・ムーリッセの躍進にも期待したい。ワンティのゼッケンNo.1を背に乗せた彼は、チームからの大きな期待も背負っている。
平坦ステージが多めで、13㎞の個人TTと最終日フランドルステージが総合に大きな影響を及ぼしそう。また、1人で総取りすれば1ステージ9秒も稼げるゴールデンキロメトルの存在も相対的に増してくる。
平坦ステージと言っても昨年はそこで逃げ切りが頻発。今回も、思いがけぬ大逃げからのそのまま守り切って総合優勝、なんてパターンは十分に考えられる。
シンプルだが奥深い。何が起こるかわからない。それが「クラシックスペシャリストのためのステージレース」ビンクバンクの魅力だ。
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