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獲得UCIポイントで見る 2019アルデンヌ系クラシック最強選手ランキング10位~1位

20位〜11位までを見てきた前回に続き、アルデンヌ「系」クラシックとして選んだ以下の6レースについて、獲得したUCIポイントの合計でランキングしてみた。

 

対象6レース

  1. ストラーデ・ビアンケ(3/9)
  2. アムステルゴールドレース(4/21)
  3. ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4/24)
  4. リエージュ~バストーニュ~リエージュ(4/28)
  5. クラシカ・サンセバスティアン(8/3)
  6. イル・ロンバルディア(10/12)

 

いわば「ワンデーに強いクライマー」を導き出すランキングであり、前回でも本文で少し触れていたが、来年の東京オリンピックの優勝候補を予想するうえでも参考になるかもしれない。

 

今年最強のアルデンヌ「系」マイスターは果たして誰か。

(年齢は全て2019/12/31時点ものとします)

 

 

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第10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、27歳)

ボーラ・ハンスグローエ所属 獲得UCIポイント:436

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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ最終日の逃げ切り勝利、オリンピックテストイベントでの2位、そしてこのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでの2位・・・彼は、今やステージレーサーというよりは、ワンデークラシックスペシャリストとしての才能を見せつつある。

同じ傾向を見せつつあるロマン・バルデが来年、東京オリンピックに焦点を合わせるとの噂もある。もしかしたらこのフォルモロも、そういう方向性はありえるかもしれない。

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第9位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、34歳)

CCCチーム所属 獲得UCIポイント:480

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北のクラシックスペシャリストと言いつつ、ファンアーフェルマートの脚質はパンチャーに近い。いわばジルベールと同じタイプで、だから彼もアルデンヌの皇帝になる資格はある。

もちろん、資格だけで、そこからなかなか勝ちきれないのがファンアーフェルマートらしいところ。クラシカ・サンセバスティアンは、まさかの19歳に逃げ切られる始末。

来年はマッテオ・トレンティンとのコンビネーションで、なんとかクラシックでの勝利を量産してほしい。

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第8位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、24歳)

コレンドンサーカス所属 獲得UCIポイント:500

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エヴェネプール同様に、1レースでの勝利だけでランクイン。

ただ、彼の場合は、あくまでもロードにはまだ本格参戦していないから、というのはありそう。少なくともストラーデ・ビアンケならば、十分に優勝は狙っていけそうだ。

ただ彼もエヴェネプール同様に、今後はよりマークが厳しくなっていく。アークティックレース・オブ・ノルウェーおよび世界選手権で見せた、寒さへの適性という弱点も克服していかなければならない。

引き続きロードレース界をかき回していけるか。ある意味「2年目」の来年は正念場だ。

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第7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)

モビスター・チーム所属 獲得UCIポイント:524

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齢39にして、まだまだ衰えとは無縁。秋のイタリアクラシック全体の安定感は半端なかった。

ただ、かつては無敵を誇ったフレーシュ・ワロンヌでも、いよいよ潮時といったところ。着実な引退の時は近づいてきている。

となれば、来年は最後の大きな花火を咲かせよう。すなわち、東京オリンピック制覇という、でっかい花火を。

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第6位 サイモン・クラーク(オーストラリア、33歳)

EFエデュケーション・ファースト所属 獲得UCIポイント:530

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アムステルゴールドレースでは、最後の最後でアラフィリップやフルサングを追い抜いていったマチュー・ファンデルポールのスリップストリームに身を置いて、漁夫の利のような形で2位を掴み取った。それで稼いで得たこの位置ではあるものの、こうしてみると比較的どのレースでも安定して少しずつ稼いでいることもよくわかる。

昨年のツール・ド・フランスでもステージ優勝を挙げているなど、地味だけど昔から抑えるべきところを抑えている選手。これからも大きな成果を残すことはちょっと難しいかもしれないけれど、丘陵ステージで逃げに乗ったときは、要注目な選手だ。

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第5位 マイケル・ウッズ(カナダ、33歳)

EFエデュケーション・ファースト所属 獲得UCIポイント:534

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彼も遅れてきた新人の1人だったりする。注目され始めたのは30歳になってからだった。

だから常に苦労人というイメージが絶えず、実際私生活においても困難を乗り越えてきている。だから彼の勝利は常にドラマチック。今回は、ミラノ〜トリノで積極的にレースを動かし続けた結果、見事な勝利を手に入れた。

1年に1回は、大きな成果を出してくれる信頼感のある男。来年は一体どんな勝利を手にしてくれることだろうか。

カナダ人としては、やはりカナダ2連戦での勝利は欲しいところ。モンレアルの方なら、可能性はありそう。

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第4位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、25歳)

ボーラ・ハンスグローエ所属 獲得UCIポイント:742

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この男も、今年大きく飛躍した男の1人だ。その端緒となったのは、イツリア・バスクカントリー。なんと立て続けに3勝を記録し、ジャージを失った後もエマヌエル・ブッフマンのためにアシストに徹し続けた。

その後、アルデンヌ・クラシックでは表の通り

の完璧な成果。正しく今年のアルデンヌ最強クラスの選手であった。惜しむらくは、ツール・ド・フランスでの落車。シーズン最後のレースであるツアー・オブ・グアンシーは彼に向いたレースかと思うので、ぜひ総合優勝を狙ってほしい。

そして来年はアルデンヌのどれかで勝利を掴み取れるか?

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第3位 バウケ・モレマ(オランダ、33歳)

トレック・セガフレード所属 獲得UCIポイント:880

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純粋なアルデンヌ・クラシックというよりは、どちらかというとクライマーズクラシック向けの脚質。その秘訣が単純な登坂力というよりは飛び出してからの独走力であることについては、以下の記事に少し書いている。

www.ringsride.work

 

チームには今度はヴィンツェンツォ・ニバリが入ってきて、いよいよ(またも?)グランツールのエースの座は危うい。

ただまあ、彼自身も自分がグランツールのエースとしてそこまで向いているとは思ってなさそうなので、来年はぜひ、クライマーズクラシックへの一点集中で臨んでほしいところ。

何しろ来年は、その最高峰たるオリンピックが待ち構えている。クライスヴァイクよりはワンデー向きだと思うし、5本の指に入る優勝候補ということはできそうだ。

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第2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、27歳)

ドゥクーニンク・クイックステップ所属 獲得UCIポイント:1005

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神に愛された男。表中以外にも今年ミラノ〜サンレモも制しており、手がつけられない強さを誇った。

しかし、強すぎたがゆえに失敗も。オーバードライブ過ぎたのだ。ツール・ド・フランスでは当初の想定以上に「走れすぎ」てしまい、結果、クラシカ・サンセバスティアンを含むその後のレーススケジュールすべてを無に帰してしまうほどに燃え尽きてしまった。昨年も、世界選手権での最後の最後の失速は、好調すぎたシーズンのツケが回っていたようにも見えた。

そして、その影響はアルデンヌ・クラシックにも及ぶ。その最高峰たるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで、そこまでの絶好調が幻であったかのように、最後のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・ファー・コンで崩れ落ちてしまった。

代わってこのとき彼を敗北せしめた男が、今年のアルデンヌ最強選手として君臨することに。

 

神に愛された男は、愛されすぎてしまい、その恩恵を扱いきれないままに2シーズンを過ごしてしまった。

来年はなんとか、それを完璧に制御して、より大きな成果を築き上げてほしいところ。彼ならば、ジルベールがやったようなアルデンヌ同年制覇も、十分に可能なはずだから。

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第1位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、34歳)

アスタナ・プロチーム所属 獲得UCIポイント:1670

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と、いうことで、今年の最強アルデンヌライダーは文句なしでこの男である。

獲得ポイントを見よ。圧倒的である。表中の出場レース全てで4位以内という完璧ぶり。2レースくらい欠けても1位は揺るぎない。大成功である。

 

とはいえ、彼にとって、今年が完璧なシーズンだったかと言えば、そうではないだろう。2度目のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ制覇の後、彼はこれまでで最もツール制覇に近い位置に辿り着くことができていた。

それが、2度にわたる無念の落車で灰燼に帰した。一時はチームを去る噂すら立った。

 

しかし、ロペスのアシストとして復帰したブエルタでは、見事な山岳アシストを案じつつ、ステージ1勝も遂げる。

そして、チーム残留も発表。

アスタナで過ごしたこの1年も、彼にとって決して悪くない1年だったと感じてくれたのだと勝手に思っている。

悔しい思いもあったけど、今年はたしかにフルサングの年でもあったのだ。

 

そして来年は、東京オリンピック。

3年前のリオでは、悔しい銀メダルだった。

今年の成績を見れば、このリベンジは十分に可能なようにも思える。

大いなる栄光を、母国とチームに持ち帰れるか。

期待しているぞ、ヤコブ。

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おまけ:アルデンヌ系クラシック・チームランキング 

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※は「北のクラシックランキング」での順位。

フルサングは圧倒的だったが、チームランキングではドゥクーニンク・クイックステップと接戦となったアスタナ・プロチーム。やはりクイックステップはクラシック最強チームである。なお、アスタナは北のクラシックランキングでは散々な成果であり、アルデンヌに偏っているということがよくわかる。

一方のディメンションデータは北のクラシックもアルデンヌ・クラシックもともに散々な結果に。今年はUCIチームランキング自体がワールドツアーとプロコンチネンタル混合でのランキングとなっているが、そこでは22位。すなわち、プロコンチネンタルチームに大量に抜かれているのだ。ガスパロット、クロイツィゲル、ヴァルグレンという、アルデンヌ巧者を3名も集中的に獲得したというのにこの体たらくは、控えめにいってもかなりやばい。

 

さらに、参考として、各チームのポイント獲得者上位3名を以下の通りまとめてみた。

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こうしてみるとたしかにディメンションデータはさっきの3名が頑張ってはいるようだが・・・。

 

これらのランキングを踏まえ、来年以降のアルデンヌ「系」クラシック、そして東京オリンピックの行方に、思いをはせてみよう。

 

 

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