りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2019シーズン 4月主要レース振り返り(前編)

マチューに始まり、マチューに終わる。

4月のロードレースシーンは、前半だけでもこの天才によって彩られた。

いや、この4月は他にも驚異的な若き天才の活躍が見られた。タデイ・ポガチャル、レムコ・エヴェネプール。 

 

もちろん、この4月の前半はより北のクラシックのクライマックスでもある。

ロンド・ファン・フラーンデレン、そしてパリ~ルーベ。

この2つの偉大なるレースにて、予測不可能なドラマが今年も生み出された。

 

ロードレースシーズンの大きな山場の1つである4月の前半戦を振り返っていく。

 

 

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ドワーズ・ドール・フラーンデレン(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ベルギー 開催日:4/3 

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昨年からロンド・ファン・フラーンデレン4日前という現在の日程に変更され、距離も短縮化、ロンド本戦の勝負所となる急坂も減らされた。

それでも直前の調整レースとして、とくにヘント〜ウェヴェルヘムに出場できなかった選手やレース数の少ない選手が集まって最後の仕上げに利用することとなった。

サガン、ファンアールト、ファンアーフェルマートなどは出場せず。

 

先日のヘント〜ウェヴェルヘムでワールドツアーデビューを果たした鬼才マチュー・ファンデルポールは、そのレースでライバルのワウトと共に常に積極的にレースを展開する動きを見せていた。

が、さすがに錚々たるメンバーの集まるヘントでは勝つことかなわず。そのときよりは層の薄くなる今レースはチャンスであった。

 

チーム力で戦おうとするとワールドツアーには敵わないマチューにとって、やるべきことは常に自ら前に出て闘うことであった。

ゴールまで残り65㎞地点の「クノクテベルク」にてアタックしたマチューは、追いついた逃げ集団すら切り離しながら黙々と前を行く。

途中、メイン集団からブリッジしたボブ・ユンゲルスやティシュ・ベノートといった優勝候補たちに追いつかれるものの、決してメイン集団には捕まえられないペースで逃げ切りを狙うマチュー。

最後の勝負所「ノケレベルグ」ではユンゲルスが抜け出しを図っていつもの必勝パターンに持ち込もうとするも、マチューは決してそれを許さなかった。

 

昨年もゴール前の飛び出しからの逃げ切りが決まった今レース。今年もラスト1㎞を切ってベノートが抜け出したが、ユンゲルスがしっかりとその後輪を捉えた。

そして勝負は5名による小集団スプリントに。

 

大金星を狙ってアントニー・テュルジが決死の先行スプリントを開始。しかしマチューはこれを軽々と対応し、逆に発射台として利用してそのまま他の追随を許さない圧倒的なスプリントを見せつけた。

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ワールドツアー2戦目にして鮮やかな初勝利。シクロクロス界の「怪物」は、ロードにおいても期待されている通りの強さを発揮してみせることとなった。

 

 

ツール・ド・ランカウイ(2.HC)

アジアツアー HCクラス 開催国:マレーシア 開催日:4/6~4/13 

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アジア最大のステージレースといっていい今大会。8日間という長い日程の大半がピュアスプリントステージで、プロコンチネンタルチームや「これから台頭する」スプリンターたちが凌ぎを削る、その道の人には堪らないレースである。

ランカウイ最強のスプリンターといえば、アンドレア・グアルディーニ(バルディアーニCSF)。イタリア人ながら、ランカウイに出場した7年間で24勝。今大会も多くのファンが彼の勝利に期待したことだろう。

しかし、蓋を開けてみれば1勝もできず。それも、2位と3位が1回ずつあったほかは、まったくダメ。山岳でも簡単に遅れ、最終日はチームカーもニュートラルカーもいない状況でパンクし、リタイアを選択。チームが招待されず出場していない2017年以外、出場するたびに勝利してきた彼の記録が途絶えることに。たまたまの不調なのか、それともこれからもこの状態が続いてしまうのか。

 

代わって強かったのが、昨年のコロラド・クラシックとツアー・オブ・ユタでも勝利しているマケイブ。1勝した以外にも繰り返し上位に入り込み、ポイント賞も獲得した。

昨年まではユナイテッドヘルスケアに所属していた彼は、チーム解散に伴い、元ツール・ド・フランス覇者(ドーピング違反により後に剥奪)フロイド・ランディスが今年結成した新チームに合流した。優勝した第3ステージはまさにこのフロイズチームがプロトンを支配した日で、圧倒的なチーム力で集団を抜け出した隊列から放たれたマケイブは余裕の勝利を飾った。

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勝利数という点ではIAMサイクリング→ボーラと転々としてきたペルッキ。ボーラ時代はアシストにならざるを得なかった彼が、母国イタリアのチームでのエースとして、今後も輝くことはできるか。

 

総合では、唯一の山頂フィニッシュである第4ステージ「ゲンティンハイランド(登坂距離20㎞超、平均勾配7.4%)」で勝ったダイボールがそのまま優勝。今年のツール・ド・栃木でもステージ1勝&総合3位の彼は、現オセアニアロード&個人TT王者。昨年のランカウイでも総合3位と好成績を残していた彼は、今年は地元マレーシアのコンチネンタルチームに移籍していた。

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昨年のアルチョーム・オヴェチキン(トレンガヌ・サイクリングチーム)に続く、地元コンチネンタルチームの総合連覇。この勢いで、マレーシア人選手が盛り上がっていくことを期待する。

 

浅田監督率いる日本ナショナルチームも活躍した大会だった。ブリヂストンサイクリングの窪木一茂がステージ3位と5位を1回ずつ。そしてゲンティンハイランドで宇都宮ブリッツェンの増田成幸が5位。総合でもそのまま5位となった。

合計で90ポイントものUCIポイントを日本にもたらした今大会は、大成功と言える出来事だったのではなかろうか。

 

 

ロンド・ファン・フラーンデレン(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ベルギー 開催日:4/7 

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今年も劇的な展開が演出された。残り100㎞のカペルミュールからプロトンの動きは常に活性化され、ドゥクーニンクが得意のレース支配を行う余裕を失っていた。ジルベールの不調も痛かった。

その一方で、一時はカペルミュールで遅れを見せていたセップ・ファンマルクが残り60㎞の2回目オウデクワレモントにて逃げを打つ。EFはこのとき、集団先頭に3人を入れていていつでも攻撃を仕掛けられる体制であった。

このファンマルクの逃げは残り27㎞のクルイスベルグで終了。しかしその後もチームメートたちのために集団を牽き続けた。そして3回目オウデクワレモントでのベッティオルの強烈なアタック。その後も、集団の中に留まったラングフェルドがローテーション妨害するなど、まさにピンクのウルフパックと言うべき走りを見せつけてくれた。

 

ドゥクーニンクはクルイスベルグ後のファンデルポールなどの積極的な動きに対応するために、ゼネク・スティバルも力を使い果たして脱落。残されたのはユンゲルスと、そしてアスグリーンだった。

いずれも、今年投入されたクイックステップの「新」北のクラシック要員。その2人が、このロンドでも見事な走りを見せてくれた。

とくにアスグリーンはファンマルクらの抜け出しにも反応して常に前で展開するクイックステップらしい動きを見せ、さらには最後のゴール前でも飛び出して、2位に入り込むことができた。クイックステップとして、表彰台は守りきった形だ。

 

 

ロンド・ファン・フラーンデレン女子(1.WWT)

ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:ベルギー 開催日:4/7 

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総距離160㎞と女子レースの中ではかなりの長距離に。今年は「ボーネンベルグ」ことターインベルグも追加され、オウデクワレモントやパテルベルグなどラスト40㎞は男子と完全に同一のルートを使用した、女子ロード最高峰のクラシックレース。

前年覇者アンナ・ファンデルブレッヘンの欠場、勝負所における女王マリアンヌ・フォスのパンクによる戦線離脱などトラブルを挟みつつ、残り30㎞のクルイスベルグからレースは本格的に動き始める。残り20㎞のオウデクワレモントでルドヴィグを攻撃するも捉えられ、続くパテルベルグにてストラーデビアンケ覇者ファンフルーテンがアタックした。

 

これに食らいついたのが今日最も積極的に動き続けていたルドヴィグと、ヨーロッパ王者かつ現ウィメンズ・ワールドツアー総合首位のバスティアネッリ。

この動きが決定的なものとなり、最後はこの3名によるスプリント勝負となった。

 

スプリント力で勝るバスティアネッリに対し、ファンフルーテンは得意の独走力を生かしたロングスプリントで挑む。しかし結局これは最後まで続かず、ベストなタイミングでスパートをかけたバスティアネッリが自身初のロンド制覇を果たした。

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元々このレースを今シーズン最大の目標の1つとしていたバスティアネッリ。

今年はすでにオンループ・ヘット・ハヘラントとロンド・ファン・ドレンテで勝利し、好調のまま来ている彼女の次の最大目標は、ヨークシャー世界選手権である。

 

 

イツリア・バスクカントリー(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スペイン 開催日:4/8~4/13 

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ブルターニュと並んで自転車熱の高いバスク地方を舞台にしたステージレース。ピュアスプリンターにはまったく優しくなく、ただの登りではない激坂も沢山盛り込まれた実にバスクらしい6日間。

その中で大ブレイクを果たしたのが、すでにカタルーニャにて調子の良さを見せていたシャフマン。ステージ3勝は実に見事。途中、登りで遅れる姿も見せたが、冷静なペース走行でしっかりと追いつき、最終的にも総合10位に入り込む実力を見せつけた。独走力を活かし、今後もアルガルヴェやカリフォルニアなどのTTの比率の高い1週間のステージレースなどでは、優勝を狙えそうな気もする。

 

第5ステージでシャフマンに代わり総合リーダージャージを着用したブッフマン。しかし、グランツールかと思うような豪華なメンバーを揃えてきたアスタナの容赦ない攻撃を前にして、ボーラは完全崩壊してしまう。しかしその後もなんとか追いついてきたシャフマンたちの献身的な牽きと、そしてブッフマンの執念により、最後はコースミスのアクシデントがありつつも救済され、ブッフマンは総合3位に。今年エースとして初挑戦する予定のツールに向けて、良い滑り出しとなった。

そして勝ったのはアスタナ、ヨン・イサギレ。2003年のイバン・マヨ以来、実に16年ぶりのバスク人による総合優勝であった。

彼の傍には常にフルサング(総合4位)の姿が。今年のアスタナは本当に強い。

 

もう1人、飛躍したのが総合6位・新人賞のポガチャル。アルガルヴェ総合優勝の時点ですでにすごいが、今回はワールドツアー。錚々たる面子の中で毎ステージ存在感を示しながらのこの結果は偉大としか言えない。

やはりラヴニール覇者って凄いんだな・・。

 

 

シュヘルデプライス(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:オランダ~ベルギー 開催日:4/10

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昨年からオランダスタートとなり、横風も重要な要素となったフランドル最古のレース。

昨年は踏切無視事件という重大なアクシデントにより混戦となったが、今回は比較的優勝候補がしっかりと残る展開に。

しかしその中でも落車は発生し、キッテルは脱落、アッカーマンも足を使いすぎて最後に失速。

ヤコブセンも巻き込まれたが、チームメートの助けによってしっかりと復帰し、最後はミケル・モルコフの見事なリードアウトによって勝利を掴んだ。

 

これでヤコブセンは今大会連覇。

オランダスタートからオランダ人が2年連続勝利というのは喜ばしいところ?

これまで同じようにネオプロの才能豊かなスプリンターという認識だったホッジとヤコブセンだが、よりピュアスプリント向きなホッジと、登りや石畳など荒れた展開に強いヤコブセンというような、特徴の違いがはっきりしてきたように思える。

 

 

そしていよいよ、「北の地獄」が開幕する。

 

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パリ~ルーベ(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス 開催日:4/14

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思ったよりもするっと、重要な選手を含んだ逃げが生まれてしまったという印象だった。

最初の動きは残り67.1km。補給地点にてアタックを仕掛けたポリッツが抜け出して、ここに遅れてジルベール、そしてボーラ・ハンスグローエのアシスト、リュディガー・ゼーリッヒがブリッジを仕掛けて、3名の逃げが形成された。

もう1つの動きが、残り55.5km。昨年と同じ「オルシー」後の舗装路にて、まずはルーク・ロウ(チーム・スカイ)、続いてイバン・ガルシア(バーレーン・メリダ)が立て続けにアタックし、これをきっかけに、サガンが動き出した。

 

このサガンの動きにはワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)やランパールト、ファンマルクなどが追随。

続く4つ星パヴェ区間でゼーリッヒは脱落するも、残り48kmの5つ星パヴェ「モンサン=ペヴェル」を超えて、ジルベール、ポリッツ、ランパールト、サガン、ファンアールト、ファンマルクという超強力な6名の逃げが完成することに。メイン集団とのタイム差は、この時点で40秒。

 

最初のアタックに反応できなかったのはまだ、仕方がない。

そのときそのときの位置取りの仕方でそうなることは十分にある。

 

だが、そのあとのリカバリーをチームとして成し得なければ、クラシックでの勝利を掴むことは難しい。オリバー・ナーセンも、グレッグ・ファンアーフェルマートも、単独では最強クラスの能力を持ったクラシックスペシャリストではあるが、その所属チームの総合力は、ドゥクーニンクやボーラには歯が立たない。

ファンデンベルフが先頭固定で牽く場面も長かったが、タイム差はまるで縮まらなかった。

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あとはもう、先頭6名の中での展開である。

 

残り23kmを切って、舗装路でジルベールがアタックすると、これに喰らいついたサガンとポリッツの3名と、ついていけなかったファンアールト、ファンマルク、そしてランパールトによる3名とに分断した。

一度様子見のアタックを繰り出してファンアールトの異変に気がついたランパールトは、残り21kmで再びアタック。

ここで、ここまで予想以上の走りを見せ続けてきていた天才ファンアールトが完全に脱落する。

 

アランベールでのメカトラブル、その後のケアレスミスによる落車、からの復帰。

そして重要な局面にてアタックに反応し先頭集団に潜り込めたところまでは完璧だった。

しかし復帰のために全力を尽くし、その間、エネルギーの補給を怠っていたことが、この最終盤でのハンガーノックという結果に結びついた。

 

足は完璧だった。最高の状態だった。

しかし度重なる不幸により冷静さを失った彼が、大きな失敗を経験することとなった。

全てを失って22位でゴールした後、彼はヴェロドロームにて倒れ込み、涙を流した。

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彼に最も必要だったのは実力でも戦略眼でもない。

彼を戦術的にも精神的にも支えるチームの存在だったように思う。

唯一絶対のエースとして君臨し、自由に走ることを許されたマチュー・ファンデルポールと、有力クラシックハンターが他にもいて、3月に合流したばかりのファンアールト。

戦前に予想されていた「チーム力の差」は、予想とは逆の方向で二人の間に差を生んでしまったのかもしれない。

 

 

最後の勝負所「カンファナン=ペヴェル」と「カルフール=ド=ラルブル」でジルベールが強烈なアタックを繰り出す中、サガンはつねにこれに喰らい続けてきた。

サガンはすこぶる調子が良く、このまま最後まで集団の中に留まり、最後は得意のスプリントでルーベ2勝を挙げてしまうのではないか。そんな風に感じられる走りであった。

 

しかし、カルフール=ド=ラルブルを終えた直後の舗装路でポリッツがアタックし、これにすかさずジルベールがブリッジした後、サガンが全く、反応できなかった。

それまでの強烈なジルベールの攻撃にひたすら反応し続けていた彼が、突然のストップ。

 

動きは良かった。

常に重要な局面で彼は最高の動きをし続けていた。その野生の勘というべき天才的な嗅覚に陰りはなかった。

それは、ミラノ〜サンレモでもそうだったし、ヘント〜ウェヴェルヘムでもそうだった。

 

彼は最高のレーサーであり続けていた。しかし、最後の最後で、彼の強さは突然の終焉を迎え、フィニッシュまで続かなくなる。

今年の彼の走りは、そんなものばかりだった。

強いのに、最後は崩れる。それが今年の彼の不調の在り方だった。

 

明らかに異常で、しかし原因不明。彼自身も何も語らない。

2010年代を彩り続けてきた天才は今、終わりを迎えようとしつつあるのか。

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一方で、今回のジルベールは最強すぎた。

ロンドでは早々に遅れ、直近のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも悪天候もあってか力を出し切れなかった彼が、このパリ〜ルーベにおいては間違いなく最強だった。

石畳のこなし方も、アタックやブリッジの鋭さも、最後のスプリントも群を抜いていた。

 

それこそ万全のサガンでなければ対抗しきれなかったであろう。

もちろん、ランパールトらチームの存在は大きな役割を果たしたのは間違いない。

だが、この日のジルベールの強さは、何か、ウルフパックだから、といったこととは離れた部分で感じられるものであった。

 

ゆえに、勝つべくして勝った。

アルデンヌの皇帝から、クラシックの帝王へ。

彼は紛れもなく歴史に刻まれる才能の持ち主で、そしてその才能を腐らせぬよう、常に挑戦し続けてきた男だったのだろう。

おめでとう、ジルベール。

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そしてもう1人の主役ともいうべき男がポリッツだ。

苦難を強いられ続けるカチューシャの中での希望の光。今回だけでなく、E3も、ロンドも常に集団先頭で積極的な走りを続けて来た男。ほぼ単身での頑張りであったが、その成果はリザルトにはっきりと記され、今年の北のクラシックで4番目にUCIポイントを稼いだ男となった。

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彼はこれからも北のクラシックライダーとして第一線で活躍し続けることだろう。

チームが為すべきことは、そんな才能溢れる彼のための完璧な舞台を用意することだ。今は才能が前のめりになりすぎて望外の成績を出し続けている彼も、近い将来に壁にぶつかるときがくる。早ければ来年早々に。

 

そのとき彼を支え、見事な勝利をもたらすのはチームの力である。

さもなければこの至宝は、カチューシャというチームを去る選択を取ることだろう(現在のチームとの契約は2020年まで)。

それは今、スプリントでも総合でも活路を見出せずにいるカチューシャにとってはあまりにも大きな損失だ。

チームとしての変革が強く望まれる。

 

 

最後に悲運の男、セップ・ファンマルク。

E3での落車で今年の北のクラシックを全て棒に振りかねなかった彼は、執念で参戦を決めたロンドにて完璧なチームのための走りを見せて、「もう1人の勝者」として真に讃えられる成果を残した。

 

そんな彼がまさかルーベにて、今度は彼自身の栄光を掴み取る大きなチャンスを迎えることになるとは思わなかった。

ファンアールトも崩れ、サガンも崩れ、十分にチャンスはあった。

ジルベールはあまりにも強かったけれども、戦うだけの準備は整っていた。

だからこそ、メカトラという最悪な形で、その勝負の機会すら奪われることは、彼にとってはあまりにも最悪すぎる結末だったであろう。

 

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「こんなことだったら、家のソファーで寝転んでいればよかった」

 

ゴール後に語られたその言葉は、あまりにも衝撃的で、それがゆえに真に迫った1人のトップクラスライダーの本音であった。

 

今年もパリ~ルーベは、そして北のクラシックは、数多くのドラマを生み出すこととなった。

 

 

ブラバンツペイル(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ベルギー 開催日:4/17

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フランダースクラシックス主催ながら、石畳も少しだけありつつも、基本は複数の登りをこなしていくアルデンヌ・クラシックの一種でアムステルゴールドレースの前哨戦。

残り30㎞から優勝候補の1人で今年ダウンアンダー2連覇を果たしていたダリル・インピーが抜け出す。残されたメイン集団からは、これまた優勝候補のアラフィリップ、マシューズ、ウェレンス、そしてマチュー・ファンデルポールが抜け出してインピーに合流。やがてインピーが脱落すると、今大会最強4名による逃げが決まった。

 

スプリントでは敵わないと踏んだウェレンスが先駆けするも失敗。

あとはアラフィリップとマシューズが最強レベルのスプリント力を持ってると思われていたが、マチューが放った強烈なスプリントを前にして、この2人もまったく歯が立たなかった。

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これはあくまでも前哨戦。

しかし、「天才」マチューは鮮烈な印象を残す勝利で、今年の彼のクラシック最終戦アムステルに向けての最終調整を終えた。

 

↓後編のレース振り返りはこちら↓

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